その後の二人。【前編】(DDFF/R18)

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フリオニールはうろたえてていた。
この女性が自分を頼りにしているのは分かる。
「さっきは…その…」
正直、下心はあった。
今の状況はフリオニールにとって都合が良すぎる。
それがどうしても不公平に思えてこの男には受け入れられないのだ。
「君が…綺麗だったから……女将さんの言葉に乗っかってしまったんだ。でも、今は…」
フリオニールの胸にもたれかかったライトニングの微かな吐息がフリオニールの思考を妨げる。
「その、君と同じベッドで、とても正気では居られないと思う。今だって…」
ふと、ライトニングが顔を上げた。真っ直ぐにフリオニールを見つめる。
(頼むから、そんな切ない瞳で見つめないでくれ…)
もう言葉が続かなかった。
濡れた前髪が額にかかり、寂しげに潤んだ瞳、寒さで唇が微かに震えている。
ライトニングに対して誠実でありたいと思えば思うほど言葉は冗長になり、ライトニングを悲しませるのだ。
(だめだ…)
ゆっくりと顔を傾ける。
こんなのはダメだと理性が止める。自分は彼女の事を覚えていない。彼女の心細さにつけ込むのか。
ライトニングが目を閉じた。
もう止められなかった。
唇が重なっていく。触れ合ったそこは驚くほど柔らかくて、触れた先から溶けてしまうのではないかと思うほどだ。初めて女性と触れ合ったはずなのに、また既視感を覚えてフリオニールは混乱する。
唇が離れ、ライトニングがぽつりと呟いた。
「あの時は雨だった。」
「あの時…?」
「私は戦列からはぐれて…雨が降って…そうしたらお前が来た。」
一瞬、ライトニングが何を言っているのか分からなかった。おそらく、彼女と一緒に戦った時に自分たちははぐれ、ライトニングが雨で弱っている所を自分が助けたのだろう。
もちろん、フリオニールは覚えていない。
だが、彼女の言葉が嘘ではないと分かる。もちろん根拠は何もないが。
(俺がそう思いたいだけかもな。)
だが、その言葉でフリオニールは心を決めた。
彼女は自分を良く知っている。そして、自分を必要としているのだ。
フリオニールがライトニングを抱き上げると、彼女は大人しくその身を任せてくる。
雪の冷たさもいつの間にか忘れていた。
ただただ、腕の中の彼女のぬくもりが愛おしい。
元来た道を戻り、宿屋の中に戻る。中はしん、としている。誰にも見られていないことに安心し、階段を上り、部屋への扉を空ける。
暖炉の火が小さくなっていたが、中は暖かかった。
フリオニールはライトニングをベッドに座らせると、汗と雪でびしょ濡れになったローブを脱がせる。
薄明かりの下で裸体がほのかに光る。
一糸纏わぬ様なのに、ライトニングはどこも隠そうとはせず端然とフリオニールを見つめている。
華奢だがよく鍛えられているのが分かる身体つきだ。
唯一豊かな胸だけが彼女の身体で女性らしさを主張している。ふっくらと張りがあり、その突起は肌に溶けてしまいそうな淡い色をしている。
うっすらと筋肉がすけて見える腹は見事に平らで、太ももも無駄な肉が一切ついておらず、見事な脚線美はフリオニールに俊足の気高い獣を思い出させた。
「触れて…良いのかな。」
ライトニングの裸体はフリオニールに畏怖の念を起こさせるには充分過ぎた。
ライトニングが微かに眉を寄せる。
「違っ…その、君が綺麗すぎるから…!」
フリオニールはライトニングの不機嫌を一瞬で察して慌てて弁解する。
「君はっ!俺のことを良く知ってるかもしれないけど、俺は…!どうして君みたいにきれいな女性が俺なんかと…って思うんだ!仕方ないだろ!」
顔を赤くして力説するフリオニールにライトニングはとうとう吹き出してしまう。
そうして、両腕をゆっくりと優しくフリオニールの首に巻き付ける。
「やはり、お前はお前なのだな、フリオニール。」
「………ライトはずるいな。俺が覚えていないのを良い事に…」
そうやって拗ねてそっぽを向く様が正にライトニングお気に入りのフリオニールな訳で。
ライトニングはフリオニールのローブを脱がせると、硬直しているフリオニールをゆっくりと引き寄せた。
「お前は、信じないかもしれないが…」
ライトニングはゆっくりと語り出した。自分たちが調和の神コスモスに召喚された異世界で出会い、共に戦っていたこと。そこで恋人同士だったこと。
ライトニングに抱きしめられたまま、フリオニールはまたもや首を傾げる。
「…すぐには信じられないかもしれないが…」
「…そうだな。」
無理もない、とライトニングはフリオニールを抱く腕に力を込める。が、フリオニールの次の言葉でまたもや脱力してしまう。
「君みたいにきれいな女性が俺の恋人…」
「疑うのはそこなのか?」
呆れるライトニングに、フリオニールは突然身体を離すと、ライトニングの顔を正面から見据える。
「ライト、ここは俺が元々居た世界で、君の世界ではないと言ったよな?」
そこはライトニングが一番聞かれたくないことだ。ライトニング居心地悪げにフリオニールから目を背ける。
(お前は普段ニブい癖にどうしてこういう時だけ…)
「なのにどうして君は俺の世界に居るんだ?」
思った事が顔に出てしまったのか、フリオニールの声はうれしそうだ。
そうして、ライトニングを強く抱きしめ、そのままベッドにライトニングごと倒れこむ。
「…おい!」
「自惚れて良いのか…?」
そうして、うれしそうにライトニングに頬をすり寄せる。
一発殴って黙らせようかと思った矢先にこんな事を言うのだ。
赤くなった顔を見られまいと顔を背けようとすると、即座に両手で頬を覆われてそれも出来ない。
カオスとコスモスが居たあの世界で初めて気持ちを確かめ合った時と驚くくらいに同じ反応だ。
ライトニングはやれやれと瞳だけ動かして天井を仰ぎ見る。
「やはり、お前はお前なのだな、フリオニール。」
「そうなんだろうな。」
二人で目と目を見合わせて笑う。
フリオニールの緊張や力みが緩んだのが分かる。
「それで、いいのか?」
「何がだ?」
「君が俺の事を好きだって。」
「好きにしろ。」
「ライトは可愛いな。」
いい加減にしろと言いかけたら、額と額がコツンと音を立てて合わさった。フリオニールの顔が目の前にある。優しい眼差しに胸が高鳴った。
全く、こんな所まで同じだな、という言葉は唇で塞がれた。
そうして、自分も全く同じ受け答えをしている事を思い出した。
口づけはどんどん深くなる。ライトニングは泣き出しそうなほど安らいで目を閉じた。
そうだ、この恋人は自分が素直じゃなくて、不器用な事を良く分かっていてくれる。
唇が離れる。ライトニングがうっすらと目を開けると、そこには溢れる喜びを抑え切れない、といったフリオの笑顔があった。
ライトは人差し指でフリオニールの額をつん、と突く。
「笑い過ぎだ。」
「そうかもな。」
屈託なくフリオニールは答える。
「本当にうれしいから、かな。ライトはどうだ?」
文句を言いかけ、ふとあることを思い立ってライトニングは口を噤んだ。そうして、そっとフリオニールの手を取り、自分の胸骨の上の辺りに導いた。ちょうど乳房と乳房の間なので驚いて手を引こうとしたフリオニールの手をそのまま押さえる。
「…分かるか?」
フリオニールが小さく、あ、と声を上げた。手のひら越しにライトニングの鼓動をしっかりと感じたようだ。
「うん。」
フリオニールはゆっくりと手を当てた箇所に耳を当てる。
突然目の前に現れた女性は幻ではなく、しっかりとした鼓動を刻んでいて、生きた生身の女性なのだと改めて知る。
そうして、ライトニングなりに喜びを伝えようとしてくれるのがうれしい。
フリオニールはゆっくりと耳を離すと、ライトニングの身体にゆっくりと口づけた。戦いの傷跡を一つ一つなぞるように。
くすぐったくてライトニングが身体を竦ませる。
「…くすぐったいか?」
ライトニングは黙って首を横に振る。すっと細められた瞳に誘われる様にフリオニールはまた唇を合わせた。もっと深く貪られたくて、ライトニングは誘う様にフリオニールの唇を舌でなぞる、とフリオニールも同じ様にライトニングの唇をなぞり、そのまま舌がゆっくりと口内に忍び込む。それだけで身体の芯が熱くなる。
優しく、慈しむ様な優しい愛撫。
本当に、自分が良く知っている愛しい恋人だ、ライトニングはその時までそう思っていた。
が、徐々に深くなる口付けにライトニングはふと違和感を覚える。
息苦しさを覚えて顔を少し背けると、フリオニールが後を追うようにしてまた唇を塞ぐ。それだけでなくライトニングの柔らかな舌を掬い上げ、絡め、離そうとしないのだ。
たまらず顔を背けると今度は両手のひらで顔をしっかりと固定され、すぐにまた唇が塞がれる。
「ん…フリ、オ……苦し……」
唇が離れる合間の僅かな隙に抗議しても耳に届いている様子はない。
ライトニングは慌てた。
さっきまでのフリオニールとは別人のようだ。抱きしめる腕の力も強く、それだけで息が詰まりそうだ。
気がつけばフリオニールの左手が乳房の上にあった。右手はライトニングの後頭部にあり、口づけから逃すのを許さない。そして手のひら全体では荒々しく乳房を揉みしだき、指先で器用に先端を愛撫する。
「んっ、ぁ……っ」
くぐもった声が漏れる。
その声に後押しされたかの様に胸への愛撫が激しくなる。息苦しさと痺れるような快感に目が回りそうになった所で漸く唇が開放された。
大きく息をついた所で、フリオニールの唇がライトニングの淡い色の乳首をふくむ。舌先でそこをなぶられ、ライトニングは嬌声を上げる。
「あっ、や、……フリオ……!」
いきなり敏感な部分を同時に愛撫され、ライトニングは堪らずフリオニールの身体の下から身をよじって抜けだそうとするが、すぐに身体で押さえつけられた。
「あ、あ、ああっ…ん!」
ライトニングの嬌声がフリオニールの愛撫に拍車をかける。
こんなのは違う、とライトニングはかき回される意識の下で思う。
今のフリオニールはまるで獰猛な獣のようだ。まるで鋭い牙で食いちぎられているかのようだ。
それでも時折見せる仔犬の様にライトニングに甘える仕草がなければライトニングは全力でベッドから逃げ出していただろう。
覚えてない、と言っている割にはフリオニールの行為は躊躇いがない。女性の、と言うより、ライトニングの身体をよく知っているかのようだ。
(だったらどうして…)
耳たぶに噛み付かれて、ライトニングは悲鳴を上げる。与えられる激しい愛撫と、違和感と疑問で目が眩む。
(ここには…敵が居ないから…か?)
いつ敵が襲ってくるか分からない状況で情動をセーブしていたのだろうか?だが、こんなにも挙動が一変するものだろうか?
「フ…リオ…ニール……!」
とにかく、一度落ち着かせなければと名前を呼ぶ。そうすると、フリオニールは必ずライトニングの瞳を覗きこむ。
(そういう所は同じなのに…)
何か言ってやろうとフリオニールの瞳を睨み返した所で、ライトニングは息を飲んだ。

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