情けないクラウド(FF7/R18)

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ドアをノックして、ひと呼吸してから扉を開ける。
クラウドは窓際に置かれたベッドの、ベッドヘッドに背を預け、地図と伝票を広げていた。
「まだ、お仕事中?」
「…いや、終わった所だ。」
手に持ったペンで地図の上に印を付け、広げていたものを片付け始めた。
ティファはクラウドがまとめた物を受け取ると、それを机の上に置く。
クラウドがベッドの奥に身体をずらせ、ティファのスペースを作ってやる。
ティファがそこに腰掛けると、クラウドは肩を抱いて彼女を引き寄せる。
おかしいくらいに、いつもの手順だ。
違う所があるとしたら、「お仕事中?」の返事が、「あと少しだ。」「残りは明日にする。」と、多少バリエーションがあるくらいで。
でも、それをクラウドに言ってはいけない。
手順が狂うと、少なからず彼が混乱するので、フォローが大変なのだ。
混乱した彼を見るのは、微笑ましくて好きなのだが、そんな手間を労するよりも、少しでも早く彼の腕に抱かれたい。
最初は決まって、強く抱きしめてくれる。
そのまま優しく髪を撫でてくれる。
それは、腕の中にちゃんとティファがいるか確認しているようだ。
そして、ティファも最初の抱擁で大切な場所に
帰って来たんだと心から満たされた気持ちになる。
お互いにここが自分の場所であることを確かめ合う為の儀式のようなものだ。
やがてクラウドがゆっくりと身体を離し、ティファの額に自分のを軽く合わせる。
ティファはここで漸く恋人の瞳を正面から見る事が出来るのだ。
緊張でクラウドの手に力がこもる。
ティファは目を閉じる。
すると、手の力が少し緩んで、クラウドの顔が近づいて来るのが分かる。
やがて、唇が塞がれる。
角度を変えて、ついばむ様に。
そして、額や、瞼(まぶた)にも。
灯りは消されているが、窓から月明かりが差し込む。
それに照らされ、目を閉じてなすがままになっているティファにクラウドはいつも胸が締め付けられる。
でも、今日は別の感情がこみ上げて来た。
初めての感情に戸惑ったが、それを悟られない様に、優しく彼女の頬を両手で包み込む。
ティファがぱっちりと瞳を開いて、見つめ返す。
その瞳が「どうしたの?」と問いかけてる様に思えた。
口元が軽く微笑むのに、自分の気持ちが見透かされた様な気がした。
クラウドは柔らかい唇に乱暴にキスをすると、シャツを脱ぎ、ティファのタンクトップを脱がせた。
ほっそりとした肩、豊かな胸が露になるが、すぐにティファは自分を抱きしめる様にして胸元を隠してしまう。
いつもなら微笑ましい仕草が、今日は何故か苛立つ。
手首を取って引き寄せると、荒々しく身体を押し倒した。
驚きに見開かれたティファの瞳に射抜かれた様に、身体が固まってしまう。
そして、いつもと違う手順に、自ら墓穴を掘ってしまった事に気付く。
「…クラウド?」
心配そうに問いかける声。
クラウドはなんだかいたたまれなくなる。
ベッドに誘うにしてもスマートに出来ない自分。
優しい言葉、甘い言葉一つ思い付かない。
(なのに、ティファはいつも余裕なんだ。)
逆恨みもいいところだが、『こんらん』中のクラウドは気付かない。
乱暴にティファの唇を塞ぎ、強引に舌をねじ込む。
「んっ…クラウ…ド…?」
ティファの声ごと、動きを封じ込める。
息苦しくて、顔を反らせようとするのを許さず、彼女の舌を絡めとる。
きゅっと閉じられた瞳の目尻に涙がにじんで、それがクラウドの理性を吹き飛ばした。
乱れた黒髪の間からのぞく耳たぶを噛み付く様にして口にふくみ、軽く歯を立てる。
それから首筋に、そして胸へと唇を移動させる。
「あ…っ」
微かに声が漏れる。
もう片方の胸の頂を指先でなぶる。
「…ぁあっ!」
小さく悲鳴を上げたティファが、右手で自分の口を塞ぐ。
「だって…マリンやデンゼルに聞かれちゃったら、大変でしょ?」
以前そう諭されて、でも、何故か釈然としない気持ちになったのを思い出した。
そして、その理由も今分かった。
(もっと…ティファの声が聴きたいんだ…)
そして、乱れ切った彼女の姿も。
クラウドは声を漏らすまいと必死なティファの右手をやすやすとはぎ取る。
驚いたティファが抗議するかの様に上げた左手も捕らえ、その両手をティファの頭上に括り付けるにして押さえ込んだ。
青白い月明かりの下で、ティファの身体がさっと桜色に染まる。
だが、今のクラウドにそれを愛でる余裕はない。
カットソー素材のパンツを下着ごと引きずり下ろしてしまう。
「やだ…っ!クラウド!」
一糸纏わぬ姿を晒され、ティファも混乱していた。
いつものクラウドは、良く言えば慈しむ様で、悪く言えば「おずおずと。」なのだが。
今日のクラウドはどうしてしまったのだろう?
こんな強引な彼は初めてだ。
窓を背にしているのでクラウドの表情を見る事は出来ない。
黙ったままだ自分の身体を見下ろしているのだろう。
「クラウド…私、こんなのは嫌よ。お願い、手を離して?」
努めて冷静に、なだめる様に言っても、一向に力が揺るむ気配はない。
むしろ、その口調がますますクラウドの苛立ちに拍車をかける。
クラウドは一気にその場所へと手を伸ばした。
「いや…っ!」
身体を捻って逃れようとしても、頭上で押さえ込まれた手のせいで思う様に動けない。
あっさりと足の間にクラウドの手が滑り込む。
ティファはきつく目を閉じた。
力ずくで押さえ込まれた時、その部分からじわりと愛液が滲んでいたのだ。
それを知られてしまうのがひどく悔しく思えたからだ。
クラウドの指がしっとりと濡れた割れ目を撫でる。
指先を充分湿らせると、中指の先でクリトリスを一撫でする。
「…んっ…」
噛み締めた唇から声が漏れる。
その声に背中を押される様にして、そこへの愛撫を続ける。
ティファはベッドに顔を押し付け、ひたすら声を押し殺す。
時折、こらえきれずにいやいやと頭を振る。
(…やだ…っ)
ティファは朦朧とする意識を途切れさせまいと、必死だった。
なのに、『あれ』が、いつもより早く来てしまいそうなのだ。
クラウドの触れている小さなそこが、ぷっくりと膨らみ、ひくひくと脈打っている。
きっと、彼にも『あれ』がもう、すぐにやって来るのが分かっているはずだ。
「ん…っ、い…いや、クラウド…」
否定の言葉ばかり口にするティファにクラウドの苛立ちは積もるばかりだ。
(こんなに…感じてるじゃないか…)
これ以上、「いや」という言葉を聞きたくない。
クラウドは乱暴にティファの唇を塞いだ。
「う…んっ……ん…!!」
ティファの身体が大きく跳ね上がるのを、自分の身体で押さえ込む。
彼女がもがけばもがくほど、自分の身体の中心に熱が集まる。
クラウドの指の動きに合わせて、ティファの身体が痙攣するように震える。
上気した頬、きゅっと寄せられた眉…
もうすぐだ。
唇を離しても、もう「いや」という言葉は出てこなかった。
濡れた唇から漏れてくるのは甘い吐息だけだ。
「ふっ……ああっ…………!」
ティファの身体が波打つ。
「あ……あっ……あーーーーー!!」
頭を大きくのけぞらせ、一際高い嬌声を上げると、ティファはぐったりと崩れ落ちた。
やっとほどかれた手を、ティファは無意識に伸ばしてクラウドを探した。
いつもなら達したあと、小刻みに震える身体を腕の中に包み込む様にして抱きしめてくれるのだ。
優しく髪を撫でられ、やがて少し困った様な、苦しそうな顔で、
「…いいか?」
と低い声で尋ねるのだ。
満たされた気持ちと、満たしてあげたい気持ちで、ティファにとって、胸が苦しくなるほど幸せな瞬間だ。
でも、今日はいつものクラウドとは違う。
もし、この腕をクラウドが受け止めてくれなかったら…
快楽のせいではない。不安で瞳が潤む。
「クラウド…クラウド…」
か細い声で、恋人の名前を呼ぶ。
一方、クラウドは、月明かりの下で白魚の様に跳ねるティファの身体を見て、かつてない感慨を味わっていた。
彼女の身体を押さえ込み、絶頂に導く。
まるで、彼女の全てを支配したかの様で。
今だって、ねだる様に、誘う様に腕を伸ばしてくる。
その動作がクラウドの機嫌をいとも簡単に直してしまった。
他にどう言えばいいのだろう?
ティファがかわいくて仕方がない。
(もっとだ…)
ティファの気持ちを知る由もなく、独りよがりな結論に達する。
宙をさまよっていたティファの腕が、クラウドの首に絡み付く。
「ティファ…」
ずっとだんまりだったクラウドがやっと口を開き、抱きしめてくれた事にティファはホッとした。
だが、それはすぐに裏切られる事になる。

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