その後の二人。【前編】(DDFF/R18)

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理性がコントロール出来なくなっているフリオニールはライトニングの顔中にキスをし、唇を合わせたかと思うとめちゃくちゃに舌を差し入れてきて、ライトニングに抗う暇さえ与えない。咄嗟にフリオニールを押し返そうとして逆に身体を押され、壁に身体ごと押さえつけられた。肘にシャワーの栓が当たり、頭上から湯が降り注いだが、二人は構わず飽きることなく唇を貪り合った。
フリオニールは執拗に舌を絡めてきて、その合間に吐き出される吐息までもがまるで強いアルコールの様にライトニングを酔わせ、ぼうっとさせる。そうして、今自分を蹂躙している目の前の逞しい肉体のことしか考えられなくなってしまう。
ライトニングはいつの間にかフリオニールの背中に両腕を回ししがみついていた。二人を隔てている布が邪魔になり、フリオニールの服の裾をたくしあげ、そこにせわしなく手を這わせる。それに促され、フリオニールが片腕でライトニングを抱きしめたまま袖を抜き、今度は腕を入れ替えて同じ様にして反対側のもを抜く。首のあたりでまるまったシャツを片手で引っ張りあげて脱ぎ捨てると、ライトニングの手はもうフリオニールのズボンのウエストの紐を解いていた。フリオニールはそれをももどかし気に脱ぎ捨てると、改めてライトニングを強く抱きしめた。
「…からかい過ぎだ…」
ぽつりとフリオニールが漏らす。急に照れたのだろう、視線を合わせられないようだ。かわいい、とライトニングは思う。
「おまえが煮え切らないからだ。」
平然と言い返すライトニングにフリオニールは返す言葉が見つからない。
「図星だろ?」
「…”今夜は同じベッドで寝られるのかな”なんて考えてた。」
「ほら見ろ。」
「ちゃんと他のことも考えてたぞ。」
「何を考えていた?」
フリオニールは腕の中のライトニングを見下ろす。自分をからかっていると思っていたライトニングは優しい笑みをたたえ、じっとフリオニールを見上げている。そのどこまでも透明な青い瞳に吸い込まれそうだ。細い首、肩にかけていくつもの水滴が滑り落ちていく。
「……忘れた。」
ライトニングはその答えに声を上げて笑い、フリオニールも釣られてに笑い、顕になった白い首筋にキスをする。
「どのみち、ライトのことに間違いない。」
「他のことだったらどうしようかと思った。」
「そんなはず、あるわけないだろ。もうライトのこと以外は…考えられない…」
フリオニールはライトニングの唇を愛おしげについばみ、手のひらで優しくライトニングの胸を包む。ライトニングが、あ…と小さな声を漏らす。
「…お前の…服…」
「どうせ洗おうと思っていた。」
耳に直接囁かれてくすぐったくて首を竦める。
そのまま耳の中を舌でなぶられ、胸を揉みしだかれる。吐息が漏れる唇の隙間から湯が流れ込んできて余計に息苦しい。だが、熱情的なフリオニールの愛撫にシャワーの栓を捻ることも、ベッドに促すことも出来ない。
(構うものか…)
ライトニングだって、ずっと欲しくてしかたがなかったのだから。
ライトニングは二人の間を隔てる様にしているフリオニールの熱い塊を右手で優しく握ってやった。フリオニールはそれだけで腰が溶けそうになり、崩れ落ちそうにる。ライトニングの手で包まれたそこは蕩けそうに痺れ、堪らずライトニングの首元に顔を埋めた。ライトニングがそのままフリオニール自身を優しくしごいてやると、まるで駄々をこねるかの様にライトニングの肩に顔を押し当てて頭を振る。
「ん……っ、ライト…っ」
熱っぽい声で耳元で囁かれて、ライトニングはこの男は今どれほど自分を欲していて、今どれほど自分に焦がれているのだろうかと思う。膨れ上がっ欲念が声で、吐息で伝わってきて、ライトニングの全身にぞくりと甘い痺れが走る。
フリオニールの性器はもう先端からぬるぬるとした液を滴らせている。このままだと達してしまうのはあっという間だろう。だが、この熱をただそのまま放ってしまうのは惜しい。
「フリオ…」
シャワーの湯のせいかか、それともフリオニールの熱が伝染したのか、ライトニングの声も熱っぽく上ずる。
「早く………」
フリオニールは返事をする余裕もないのだろう、それでもライトニングの秘裂をそっとなぞり、湯ではなくそこが既に愛液で充分潤っているのを知ると、指を差し入れようとする。
「…っ…ばか…」
フリオニールの手が止まり、驚いたようにライトニングを見つめる。
(余裕がないのは私も同じだ…)
最後の冷静さは自分を見つめるフリオニールの視線で消し飛んだ。ライトニングは片足を少しだけ浮かし、両手でフリオニール自身を自らの秘められた所へ誘う。
「…もう、指なんかで足りるか…」
フリオニールがふっ、と笑う。ひょっとしたらフリオニールの方が冷静なのかもしれない、とライトニングは頭の片隅でチラリと考える。
フリオニールがライトニングの腿の下に腕を通し、ぐっと持ち上げる。恥ずかしい場所を晒されて、ライトニングは思わず顔を伏せた。フリオニールが小さく、
「可愛いな、ライト。」
と、囁いたのが聞こえて身体の熱がますます上がった気がした。
フリオニールはライトニングの背中が壁に当たらないようにライトニングの頭を自分の肩に載せ、体重をフリオニールが支えてやる。そうして、ずっしりと滾った熱い塊がじわじわと胎内を押し入ってライトニングは身体を小さく震わせながら受け入れた。
「ぅん……っ…」
バスルームにはもうもうと湯気が立ち込めている。それだけでもう息苦しいのに、充分に潤っているとはいえ、まだ少しもほぐされていないそこを無理矢理押し開かれていく息苦しさにライトニングは大きく息を吐いた。
「あ、フリオ……あぁっ……!」
呑み込んだものはまだ最奥にたどり着かない。
一気にそこに辿り着きたいフリオニールは首を縮め、彼が好きな花と同じ色をしたライトニングの胸の頂をくちゅ、と食んだ。
「んん……っ」
途端にライトニングの身体からくたりと力が抜け、待ち望んでいた長大なそれを一息に飲み込んだ。
「あぁっ……ふぁ……ぁ……っ…!」
フリオニールはもう欲望を抑えきれず、肉の楔をライトニングに打ち付ける。
「フリオ…っ、あ、奥、…ま…で……あぁーっ……!」
「……ライト…っ…止まらない……」
狭いバスルームに二人の喘ぎ声と、シャワーが降り注ぐ音が響く。湯気と熱と汗で喉がカラカラだ。
ライトニングはフリオニールの背中に張り付いていた髪をぐい、と引っぱっる。引っ張られた勢いで顔ごと引き寄せられ、フリオニールはそのままライトニングに噛み付く様に口づけた。こんな風に後ろの髪の長い部分を引っ張るのはライトニングなりの「キスのおねだり」なのだ。
「……う……ん……」
ライトニングが満足気に舌を絡めてきた。それに応え、首筋を抑え、角度を変えてもっと深くまで舌を差し入れてやる。まるでフリオニールの唾液をむさぼるような勢いの濃厚な口づけに、フリオニールの頭もクラクラする。だが、繋がった下半身だけは二人とは別の意思を持っているかのようで、動きが止まることはない。
「んっ……んんっ…フリ…オ…!」
さすがに息が出来なくなって唇が離れると、フリオニールはライトニングの紅い乳首を口に含み、そこを傷つけないようにそっと歯を立てる。
「ぁ……あっ……ああ――っ!」
バスルームの中の全ての熱がライトニングの身体に取り込まれ、奔流となって駆け抜けた。その熱いうねりに翻弄され、フリオニールは野獣の様に吠え、快感に身体を震わせながらライトニングの中で果てた。
そのあと、二人はしばらく動けなかったが、フリオニールが身体を引いて、ほぼ自分が抱えていたライトニングを下ろした。繋がっていたところから幾重にも体液が流れ落ちるのを、慌てて湯をかけて清めてやると、漸くシャワーの栓をひねり、湯を止めた。
ドアを開けると、篭っていた熱と湯気が一気に外に流れだし、入れ替わりに乾いた空気がバスルームに流れ込んで来た。
フリオニールは腕を伸ばし、掛けてあったタオルを取ると、ライトニングをそれで包んで抱え上げた。
激しい行為と、熱気でぐったりしていたライトニングは素直にされるがままだ。
フリオニールはライトニングをベッドに座らせ、慌てて自らの腰回りにもタオルを巻き、水差しとコップを持ってくる。ライトニングがフラフラしていたので、その隣に腰掛けて身体を支えてやる。
水を淹れたコップを手渡すと、ライトニングはコクコクと喉を鳴らして一気にそれを飲み干した。飲んだあと、コップをフリオニールに渡すと、何も言わずそのままフリオニールに身体をもたれかけた。
フリオニールは受け取ったコップに自分の分の水を淹れ、同じように一気に飲み干した。
なんとなく照れくさくて、お互い何も言い出せずに居た。どうしたものかと、フリオニールは悶々としていたら、隣からライトニングの寝息が聞こえてきた。小さな頭をフリオニールの肩に乗せ、
(なんだか…小さな女の子みたいだ…)
フリオニールはライトニングの身体を軽く吹いてやり、シーツを捲ってそこに横たえた。それからさらにもう少しだけシーツを捲り、ライトニングの足の爪先を見た。
(あそこに…キスしたかったのに、忘れてたな…)
さっきの激しい行為を思い出し、一人照れ笑いをする。まったく、なんて声を出してたんだろう、自分も、ライトニングも。あれでは外に筒抜けではないだろうか?
(宿のボイラーの湯を使い切ったんじゃないのか…?)
苦笑いしつつ、自分もライトニングの隣に横になる。
(しかも、立ったままなんて…)
このまま眠ろうとして目を閉じたところで、不意に頭を殴られたかの様な衝撃を感じ、カッと目を見開いた。いつも戦いの中や、ライトニングとのセックスの時に顕れるあの嫌な感じだ。
(……初めてじゃ、ない……)
あんな風に慌しく、立ったままの行為は。思い返すと、ライトニングは立ったままの行為に慣れていた様にも思えてきて。
跳ね起きて隣に眠るライトニングを見るが、すうすうと穏やかな寝息をたてていて、とてもじゃないが起こして問い質すなんて出来ない。
(また…この感じか…)
思い出せそうで思い出せない、あの嫌な感じ。そして今回のがいつもよりも、もっと生々しい感じがした。
フリオニールは水をもう一杯飲み、改めてライトニングを見つめた。
あんなに激しく愛しあったのに、不意にライトニングを遠くに感じた。彼女のことを思い出せない自分、彼女の小さな嘘、原因不明の既視感。
フリオニールはライトニングの隣に身体を横たえた。混乱し、困惑して、とても同じベッドで眠れそうにはないのだが、明日の朝ライトニングが目を覚ました時に、
(隣に…俺がいなかったら…ライトはきっと寂しがる…)
理由は分からないけど、ライトニングに対して後ろめたい心持ちになって、背中を向けて目を閉じた。
(明日、ちゃんとライトニングの顔が見れるかな…)
その時、鼻孔の先をふわりと良い香りが漂った。ライトニングがフリオニールの方に寝返りを打ったのだ。フリオニールはクンクン、と匂いを嗅ぎ、それがライトニングのものだと気付いた。
そうして石鹸も香料も何も使っている気配もないのに、
(どうしていつも良い匂いがするんだろう…)
気になって、そっと髪の匂いをかいでみる。ああ、あの花の香りだ、とすぐに気付いた。ほんのすこし前まで遠くに感じていた恋人が現実に自分の腕に戻って来た感じがする。そうして、ライトニングに誘われる前に”誰かを愛するのは楽ではない”などと考えていたことを思い出す。
(ああ、楽じゃない…)
フリオニールは眠るライトニングをそっと引き寄せ、抱きしめた。
(…ライトは…きれいなだけじゃなくて、良い匂いなんだな…)
もうまともに考えられなくなり、フリオニールはライトニングの香りに包まれて眠りに落ちた。

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