その後の二人。【エピローグ】(DDFF/R18)

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フリオニール×ライトニングの「その後の二人。」のエピローグです。
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暖かいベッドの中で、まるで重なりあったスプーンのように、フリオニールとライトニングの身体はわずかな隙間もなく、ぴったりとくっついていた。部屋のあかりは暖炉の、半ば消えかけた炎だけだ。
ベッドの周りにはフリオニールが脱ぎ散らかした衣服や装備が転がっている。何度も愛し合ったあとの心地よい疲労で、ゆっくりと眠りに落ちようとしているのだが、なんだか眠るのがもったいなくて。
もっとこの幸せな時間を味わっていたい。そんなことをつらつらと考える。腕の中のライトニングも同じことを考えていたのだろうか、肩越しに振り返り、フリオニールの顔を見上げてほほえむ。フリオニールはそれに応えるようにライトニングの額に口づけた。
まるでライトニングこの世界に来たばかりの時のようだ、とフリオニールは思った。
(いや、違う……)
あの時と、2人の間の心の距離がまるで違う。あの時は見知らぬ戦士が突然現れ、その美しさに心を奪われたが、どういう風に振る舞ってよいのかわからなくて、ひたすらうろたえていたっけ。
だが今は違う。思い出すことができた。腕の中にいるのは、大切な約束を交わし、そのために次元を飛び越えて会いに来てくれた、愛おしい愛おしい恋人だ。
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山頂の近くにある湖から街へと下りてくる道すがら、まるで花びらが散るかのように、ライトニングの身体から薄い薄いクリスタルの膜がどんどんと剥がれていった。
慌てて湖に引き返し、ライトニングは湖の沖へと泳ぎだした。肩までつかるほどの深さのところまでくると、おそるおそる腕を手のひらでそっと擦ってみた。すると、まるで薄皮が剥がれるように、身体から鉱石が剥がれ、湖に流れていったのだ。試しに水の中に潜り、軽く頭を振ると、髪から剥がれ落ちた薄紅色のクリスタルのかけらがキラキラと水の中で踊る。
頭を出し、手で水をすくって顔を洗う。指先でおそるおそる触れてみると、柔らかくしなやかな肌の感触だった。
(……暖かい……)
フリオニールは息をのんでその様を見守っていた。まるで美しい羽根をもつを小さな虫の変態を見ているようだった。ライトニングは思わず岸辺にいるフリオニールを見た。うれしさに瞳を輝かせ、喜びで顔がくしゃくしゃになる。もう待てない、と、水をかくようにして岸に向かう。フリオニールも自身が濡れるのも構わず、ライトニングに向かって駈け出していた。
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(あれから、宿に着くまでが大変だったけど……)
とにかく、早く2人きりになりたかったのだ。誰にも邪魔をされず、ライトニングと愛し合いたい、そのことで頭がいっぱいになって、かなり突っ走ってしまった、と思う。ライトニングがあきれていたようだったなと、今更思い出す。
(でも……)
愛おしさが胸の深いところからこみ上げてきれ、フリオニールはライトニングの頭に鼻を押し付けた。
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宿にたどり着いて、部屋のドアを閉じた瞬間に、2人はもう口唇と口唇を合わせていた。まるで吸い寄せられるようだった。衣服がなく、マントと帆布だけを身に着けていたライトニングは容易くその肌を露わにした。フリオニールは右腕でライトニング抱きしめ、息を継ぐほんの一瞬も惜しいと言わんばかりにひたすらにライトニングの口唇をむさぼった。同時に左手でターバンを乱暴につかんで外し、床に投げつけ、次の手で肩甲を外す。
ライトニングも少しでも早く肌と肌を触れ合いさせたいと、フリオニールのベルトを外した。ベルトのホルダーに収められていた杖や短剣がガチャガチャとやかましい音を立てて床に落ちた。
武器を大切に扱うフリオニールがお構いなしに背中に背負っていた弓矢と槍を外して床に落とす。腕の盾を外そうとしてうまくいかず、もどかしげに腕に固定するためのベルトの部分を引っ張ていると、ライトニングが手を伸ばしてそれを助けた。
フリオニールの衣服や装備を、お互いの片手のみで不器用に外し、脱がせながらもつれ合うようにしてベッドに倒れ込んだ。お互いが口づける音と、忙しない吐息だけが部屋に響き、言葉はない。言葉を口に出すほんのわずかな瞬間すら惜しいとまたキスを交わす。まだ腰や足に残ったすね当てを、反対側の手はライトニングを抱いたまま、半ばベッドに腰掛けるようにして長い足を持ち上げ、腕を伸ばして外す。
ようやく全てを取り去ったあと、ライトニングはフリオニールの上にのしかかり、そのまま首に腕を回してしっかりとフリオニールを抱きしめた。フリオニールもライトニングの背に手を回し、強く抱き返した。お互いにこの瞬間をどれほど夢見ただろうと、呼吸で上下する胸、暖かい肌を味わうのに全ての神経を集中させる。
ライトニングは逞しいフリオニールの胸に頬を当て、うっとりと瞳を閉じていた。やがて上体を起こし、伸び上がるようにしてフリオニールに口づけた。口唇を合わせると、その弾力押し返される。なので、もっと強く押し付ける。そうしてキスがどんどん深くなってくると、フリオニールがライトニングを組み敷こうとしたところで初めてライトニングが「待て。」と声を上げた。
フリオニールは聞いちゃいない、とばかりにそのまま強引に身体を入れ替えようとするのを、ライトニングは腕を突っ張って押しとどめた。
「頼む、待ってくれ。」
そんな風に言われると、フリオニールも止めざるをえない。息で肩を弾ませながら、不満げにライトニングを見上げる。
「そのまま、じっとしていてくれ。」
「ライト……」
「そうしたいと、思ってたんだ。ずっと。もし、また、こうして抱き合えたら…と。」
ひと言ごとに区切って口にされた言葉は、有無を言わせない重みがあった。あの暗い部屋でライトニングがずっとそんな風に思っていたのだと思うと、痛ましさと愛おしさで切なくなる。
「…うん、わかった。」
「私が、いいと言うまで、じっとしていてくれるか?」
ライトニングの表情は思いつめたものだった。フリオニールはふと不安になったが、そこまで言うならとうなずいてみせる。きゅっと口唇を閉じ、じっとフリオニールを見つめるライトニングの表情はたまらなく蠱惑的だ。
(我慢できるか……?)
2人の身体に挟まれたフリオニール自身はもうガチガチに固く勃ちあがっていて、どろどろとした先走りの液を零している。それがライトニングの下腹辺りをぬらしているのに少し気まずい思いをしているのに。だが、ずっと自分を想い続けていてくれたライトニングのためだと、何度か大きく息を吐いて荒ぶる情欲をなんとか落ち着かせる。
フリオニールがうなずいたので、ライトニングはほっとしたのか、長いまつげを何度か瞬かせ、口元に笑みを浮かべた。そして、そわそわと落ち着かない表情のフリオニールの頬を両手で包むと、眉と眉の間にそっと口唇を押し付けた。ライトニングはしばらくそこに口づけたままなかなか動こうとしなかった。口唇同士が触れたわけではないのに、そこからライトニングの魂が身体の中へと流れ込んでくるようで。ひたむきな想いにフリオニールの感情はすぐに恋人のそれと同調し、愛おしさで胸がいっぱいになって、目尻に涙まで浮かんでくる。と、ライトニングの口唇が優しく鼻の付け根から目頭に移動してきて、フリオニールの涙をそっと吸い上げた。
魂ごと慰撫されているような心地よさだった。フリオニールは大きく息を吐いた。フリオニールの肌が逆に傷つけてしまうのではないかと思えるほどライトニングの口唇は柔らかくて、それがまるで川魚が水草に卵を産み付けるかのように、慈愛をこめて自分の顔に印をつけていく。みっともないと思いつつも、あふれる涙を止めることができなかった。ようやく会えた命よりも大切な恋人、それまでの長い道のり、仲間との再会と別れ、それまで起こった全てのことが次々と思い出された。
「会えなかったらって……ずっと……」
涙をこらえているせいで、声が詰まってうまく言えない。ライトニングはフリオニールの額に自分のを合わせた。いつもの仕草だ。
「私もだ……」
ライトニングの瞳からも涙があふれる。それは長い下まつげに溜まってから、スッと通った鼻筋の横を、まるで真珠が転がるように落ちていった。フリオニールは泣きながら笑っていて、それはライトニングも同じだった。2人してしゃくりを上げて鼻をすん、とすするのに、頬の筋肉も口角もきゅっと上がっている。
「笑ってるライトの顔が好きだ……」
「前も、そう言った。」
「覚えててくれたんだ。」
ライトニングはもう返事をせず、口唇にチュッと音を立てて口付けると、口唇から喉仏に向かって線を描くように口唇のスタンプを押していく。あごから喉の境界の辺りで一度軽く吸い上げると、それだけでフリオニールは身体を跳ねさせた。そこで抑えていたライトニングへの欲望が再び頭をもたげてきた。自分の、ちょうどあごの真下の辺りで熱心に首筋にキスをしているライトニングの髪がホワホワと跳ねるのが堪らなくかわいらしく思え、強く抱きしめたくてしかたがない。だが、「じっとしていてくれるか?」と頼んだ時のライトニングの表情を思い出して必死に堪える。
首筋にいくつかの跡を残し、ライトニングの口唇は鎖骨の辺りに到達した。フリオニールはここまでの時間がとてつもなく長く思え、そしてどうやらライトニングは自分の全身を確かめ、印をつけようとしているのだとわかると、ここからの長い時間を思って気が遠くなりかけた。
「うわっ!」
突然フリオニールが叫んだ。それを察したのかライトニングが鎖骨に噛み付いたのだ。ごく軽い力だったが、フリオニールを驚かせ、声を上げさせるのには充分だった。口唇を少しとがらせ、とがめるような瞳のライトニングに、フリオニールは素直に「ごめん。」と伝えると、ライトニングは満足気にうなずいた。
そうしてライトニングの儀式は再開された。だが、さすがにフリオニールが堪え切れるか怪しいと思ったのか、少しだがペースが上がる。チュッチュッとリズミカルにフリオニールの胸の辺りにキスをしていたのが、たくましく筋肉がぐっと盛り上がった胸板の上でプツンと立ち上がっている小さな突起に気付き、そこをいきなり、ザラリ、となめ上げた。
「……っ、ら、ライト……!」
フリオニールの反応に気を良くしたライトニングは、さらにそこを舌全体でなめ上げる。真っ赤で小さな舌を一心に這わせ、立ち上がったその側面を舌先で小刻みに突く。フリオニールは天井を仰ぎみて、はっはっと短く息をし、快感を逃そうとする。ライトニングは反対側の突起を指の腹で優しく転がす。
「……っ、う、っは……ぁ……!」
フリオニールは堪え切れず、ライトニングの腹と自分の身体に挟まっていた男根を擦り付ける。ライトニングはそれをとがめず、執拗にフリオニールの両の突起をぴちゃぴちゃとなめ、指で押し込み、転がす。
「……っ、あ、っ……ぁ、ライト……っ!」
フリオニールは身体をガクガクと大きく跳ねさせた。それに合わせ、こらえ切れずにどろりとした精液が吐き出され、2人の身体をぬらした。
だが、ライトニングはそれに構うことなく、腹の辺りに口唇を移動させる。胸骨の下のあたりから、見事に腹に浮き出た腹筋を指でたどりながら下へ、下へと。まだ「動いて良し」の許可をもらえず、フリオニールは達したあとの、とろん、とした目でライトニングの行為を眺めている。きっと止めても聞かないのだろう。それがわかっているので、おとなしくされるがままになっておく。
ライトニング射精したばかりのフリオニールの男根を手に取り、それをまじまじと眺める。ライトニングを想って、それこそ毎晩のように自分でその欲望を処理していたのだが、それにもかかわらず吐き出された量は多く、フリオニールとライトニングの下肢の両方をべったりとこびり付いているからだ。
(今……口でされるのは……)
だが、フリオニールが予想した通り、ライトニングはフリオニールの足の方へ身体をずらし、その足の間に身体を割りこませた。そのせいでライトニングの豊かな胸の辺りにも精液がべったりと付いた。
それでも、ライトニングに止めるように声をかけることはできなかった。ライトニングがあまりにも真剣だったからだ。くったりと萎えてしまったそれを手に取り、優しく量の手のひらで包んでみたり、先端のなめらかな部分を親指の腹で擦り、そのつるりとした感触を感じたり。
「……っ、ライト……っ!」
達したあと、性器が敏感になるのは女性だけではない。ライトニングがそこへの探求のために手の中で弄ると、フリオニール自身を射精にも似たぴりぴりと強烈な刺激が襲うのだ。フリオニールは身体を小刻みに震えさせ、身体をねじり、悶えさせた。

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