その後の二人。【前編】(DDFF/R18)

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フリオニールの言葉通り、雪嵐の日が続いた。
二人はずっと部屋に閉じこもりお互いを貪り合うばかりの時間を過ごしていた。
時折フリオニールが食事を取りに部屋を出たり、彼なりに何か考えがあるらしく、そのついでになんらしかの情報を手に入れて部屋に戻る。ライトニングが他の客や女将の好奇の目に晒されないように気遣いのためか、人目のある時間に彼女を部屋の外に出そうとはしなかった。
今はずっとベッドでフリオニールとのセックスにおぼれていたいライトニングにとってそれはやぶさかではなく、二人は時間が止まったかの様な部屋の中で飽きる事なく情事に耽った。
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暗闇でもくっきりと浮かび上がる白い背中を後ろから貫きながら、この白いなまめかしい身体にどれほど自分は魅入られているのだろう、とフリオニールは思う。
どれだけ貪り、放っても飽きることも萎えることもない。
無駄な贅肉が一切ついてないほっそりとした肩と背中に肩甲骨がまろやかに浮かび上がり、背中のラインはウエストに向けてぎゅっと細くなる。腰を打ち付ける度に豊かな胸が柔らかくふる、と揺れている。
フリオニールは誘われるかのようにその胸をぎゅっと掴む。空いた方の手を下腹部にすべらせ、柔らかい陰毛をかきわけて中指でクリトリスを優しく擦ってやる。
「あ…っ、フリオ……!」
ライトニングが小さく叫んで振り返る。紅く染まった頬、細められた目、目尻には悦楽の涙が浮かんでいる。息を荒げ、フリオニールを見上げるその表情はいっそうの情欲を焚きつける。
ライトニングの胎内がぐっとフリオニールの男根を圧迫する。それが絶頂へのサインであることをフリオニールはとっくに学んでいた。
胸を掴んでいた手をほっそりとしたアンダーバストに巻きつけ、上半身を起こしてやり、そのまま息が上がって苦しげにあえいでいる唇に噛み付くようにして塞いでやる。
お互いの荒い息と激しい動きのせいで二人の口の中を舌と唾液がめちゃくちゃに入り混じる。
「ん……っ!ぁ…ん、フリオニール……っ!」
苦しい息のわずかな隙をぬって自分の名前を呼んでくれるライトニングが愛おしい。
「ライト……」
フリオニールはライトニングの首筋に唇を這わせる。それだけでライトニングの身体がびくんと跳ね、繋がっているそこはますますフリオニールをきゅうと絞り上げ、奥へ奥へと導く。中から溢れる暖かな愛液がフリオニール自身に絡みつき、いやらしい音を立てる。目で見える痴態と耳から聞こえる卑猥な音、包み込まえれた自身で感じるライトニングの熱と柔らかさ、全てがフリオニールを急き立て、駆り立て、追い立てる。
その瞬間、頭の中で真っ白な風景が浮かぶ。
いや、それは浮かぶなどという生易しいものではなく、フリオニールの脳を焼きつくすかのようだ。
それは歓喜の瞬間ではなく、もっともどかしくて歯がゆい不快さだ。
その苛立ちのあまり、フリオニールは思わずライトニングの細い喉に歯を立てそうになるのを必死でこらえる。そしてその得体の知れない閉塞感を振り払おうと更に激しく腰を打ち付ける。
「あぁっ!」
激しく揺さぶられ、ライトニングはフリオニールに掴まっていられなくなり、ベッドに崩れ落ちた。フリオニールはそこに覆いかぶさり、ライトニングを逃がさない。
「…あっ…フリ…オ…っ!…もうっ……あ、お願いっ!」
もう一度唇を塞ぐ。イク時にキスしたまま果てるのがライトニングのお気に入りだというのをフリオニールはよく知っているのだ。
果ててしまいそうなめくるめく快楽と、ライトニングの舌を噛みちぎってしまいたくなるような焦燥感で頭が煮えたぎるような錯乱が同時にフリオニールを襲う。
瞬間、ふっと何かの風景が浮かび、フリオニールは突然その焦燥感から放り出される。
「んんんっ!」
同時にライトニングが身体を震わせて果て、その蠕動にさそい込まれ、フリオニールもライトニングの中で果てた。
フリオニールは優しくライトニングをシーツで包み、そっと抱き寄せた。
二人の荒い息だけが室内に響き渡る。
フリオニールは汗で頬にはりついた髪の毛をそっと耳にかけてやる。ライトニングがじっと瞳を見つめてくる。
「ライトは…本当にきれいだな。」
いつもここで何か気の利いた事を言いたいのだが、口について出て来るのはいつも同じ言葉だ。
ライトニングはもぞもぞとフリオニールの胸の中に身体を移動させ、その胸に顔を埋める。フリオニールはライトニングの背中に腕を回してその背をそっと撫でてやる。
「…何か思い出したのか?」
ライトニングは行為の最中にフリオニールが別の情動を無理に抑えこんでいる瞬間があるのにとっくに気づいていた。
「…やっぱり、分かってしまうのか…」
フリオニールは正直なところその事に触れられたくはなかった。愛する女性を抱いている途中で彼女を傷つけたくなるなんて、人の善いこの男にとっては罪の意識を感じてしまうようだ。
「いや、なんとなく…だ。」
ライトニングはそんなフリオニールが後ろめたく思う気持ちをよく理解していたので曖昧さを装ってやる。
「…戦う目的はなんだ、と誰かに聞かれた…と思う。」
「話してみろ。」
ライトニングの頭の上でフリオニールが小さく嘆息したのが分かった。
「ずいぶん…子供っぽい奴だった。子供っぽいと言っても悪い意味じゃない。陽気で…あけっぴろげで。」
「うん。」
答えながら誰だろう、とライトニングは頭を巡らせる。
フリオニールが思い出す記憶の断片はライトニングが知らないことばかりだった。おそらくフリオニールは13番目の戦いの記憶を思い出しているのだろう。
「何人かそんな奴らがいたからな…もっと何か思い出していないか?」
「そう言えば…親父さんと何か確執を抱えていたと思う…親父さんがカオスの戦士で…」
「ティーダだ。」
「そうだ…!そんな名前だった…」
ライトニングは13番目の戦いでの出来事は分からないが、風景や人物など自分で分かる範囲でフリオニールに教えてやる。
「だが、12番目の戦いではティーダがカオス、ジェクトがコスモス側だった。」
「そうなのか?」
「私は実際にジェクトと行動を共にしたことがある。髭面で…ごつい感じの豪胆な男だ。」
「ジェクト……」
フリオニールは口の中で「ティーダとジェクトか…」と呟く。
「…これ以上は思い出せそうにないな…」
「焦らなくてもいい。」
「そうだな…俺がそう言ったんだな。」
フリオニールはライトニングの顔を覗きこんで笑う。と、唇にいたずらのようにチュッと音を立ててキスをする。フリオニールがふざけているのかと思っていたのが、気が付けば手が胸に触れている。
「…おい!」
「思い出すために協力してくれるんだろう?」
「…お前は…!」
女性の身体を知ったばかりの若い性のためか、それともここ何日か閉じこもりっぱなしのせいか、フリオニールは「お盛ん」である。行為はライトニングが半ば気を失うまで続くのだ。
「すまん。冗談だ。」
「少しくらい休ませろ。」
「でも、俺にはライトが嫌がってるようには思えないんだ。」
結局いつも受け入れてしまうが故か、そんな自惚れた台詞がさらりと出てくるのがなんだか悔しい。
「…甘やかし過ぎた。」
「なあライト、風が弱まってるだろ?」
言われてみると、風が窓を叩く音が止んでいる。
「明日の朝、出発する。」
つまり、当分こうやって抱き合う事は出来ないという意味らしい。それはライトニングにとっても切ない。
「…ほどほどにしろよ。」
いつものことだが、フリオニールはライトニングの強がりをちゃんと理解してくれる。ライトニングは安心しきって、フリオニールにその身体を預けた。

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