パンネロのお留守番(FF12/R18)

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

10日が経ち、予定通りバルフレアが戻って来た。
約束通り耳飾りをポケットに忍ばせ、ダラマスカの街でヴァンを捕まえる。
「パンネロがおかしい…?」
ヴァンが言うには部屋に閉じこもりがちで、具合が悪いなら医者に行くように勧めたが、
頑として行こうとしないらしい。
「あれはさ、我慢のし過ぎなんだよ。パンネロの悪い癖なんだ。無理しちゃってさ。」
女心はからきしでも、さすがに幼なじみの気持ちは分かるのだなと、バルフレアは感心する。
が、暗に“あんたより付き合い長いからな”とも言われてる様で(もちろん考え過ぎなのだが)ちょっと引っかかりもする。
理不尽な理屈で生意気な弟子をどう言って懲らしめてやるかと考えていると、
「パンネロが待ってるから早く行ってやれよ。」
とヴァンに促され、バルフレアは素直にパンネロの居る宿屋に向かう事にした。
やはり寂しい思いをさせてしまったのかという自責の念と、やっぱり俺が居ないと寂しいんだな…などとお手軽に舞い上がりつつ。
10日間もお預けを喰ったのだ。
幸いベッドもある事だし、たっぷり可愛がってやろう…などと暢気に考えながらドアをノックする。
「パンネロ…?」
返事が無い。
寝ているのかと思ってもう一度ノックする。
「…………バルフレアなの?」
やっと返って来た返事が弱々しい。
「あぁ、今帰った。約束通り、あっちの女の子はいいコにしてきたぜ。」
パンネロがまたもや黙り込む。
「どうした?顔を見せてくれないのか?」
“女のコ”という言い方が悪かったのかとバルフレアは首を傾る。
やがて、扉が開いた。
漸く顔を出したパンネロを見て、バルフレアは眉を顰めた。
泣いていたのだろう、目が赤い。
頬に涙の跡が残っていて、そこに後れ毛が張り付いていて、痛々しい。
あまりにも様子がおかしいのでバルフレアは驚いてその顔を覗き込む。
「一体どうした?どこか具合でも悪いのか?」
柔らかい頬を両手で包み込み、涙の跡を指で拭ってやる。
「……ううん…どこも悪くないの。」
悪くないと言うにはあまりにも憔悴し切っている。
言ってる先から瞳が瞬く間に涙で潤んでくる。
バルフレアは慌ててパンネロを部屋に入れると、ベッドに座らせ、一体どうしたのかと根気強く尋ねた。
俯いて、時折目尻に浮かんだ涙をそっと拭いながら、パンネロがやっと口を開いた。
「……私………悪い子なの。ごめんなさい…」
消え入りそうな、小さな声だった。
一瞬バルフレアはパンネロが浮気でもしたのかと思ったが、さすがにそれは…と嫌な考えを押しやる。
生真面目なパンネロは相手の過失でも自分を責める事がある。
(…こりゃ…どうも、そのパターンだな。)
バルフレアはパンネロの頭に手を置き、よしよしと撫でてやる。
「大丈夫だ。パンネロが悪いんじゃない。」
パンネロが、はっ…と顔を上げる。
が、またすぐ目を伏せてしまう。
バルフレアはパンネロの隣に腰掛けると、パンネロの腰と膝の裏に手を入れて自分の膝の上に抱き上げる。
肩を抱き、額と額を合わせ、その瞳を覗き込む。
「何が悪いか、ちゃんと言ってみるんだ。どぉーせ大した事じゃない。」
「でも…」
「そうだな…話を聞いて俺がパンネロが悪いと思ったら…
何かペナルティ…ってのでどうだ?」
「……どんな?」
「う〜ん…俺の頼みを、何でも一つ聞くってのでどうだ?」
考え過ぎのパンネロの気持ちを軽くするため、わざとふざけた答えをする。
「ちっちゃい子同士の約束みたいだよ?」
「悪くないだろ?」
パンネロの表情が少し明るくなる。
「………私のこと、嫌いにならない?」
「誓って。」
パンネロはバルフレアの膝の上で居心地が悪そうにもじもじとしていたが、やがて意を決して、
「………………………ごめんなさい…しちゃったの…一人で。」
「………………は?」
バルフレア、鳩が豆鉄砲を喰らった顔になる。
パンネロはそれをバルフレアが怒っていると思ったらしい。
「ごめんなさい!ごめんなさい!……だって、眠れなくて…そうしたら…バルフレアが帰って来て…それは夢なんだけど…夢の中だけど!バルフレアが…その…キスしたり、抱きしめて…くれたりして…。」
「……?…それで?」
パンネロは顔を真っ赤にして、両手で顔を覆ってしまう。
支離滅裂なパンネロの話を聞いていく内に、バルフレアは漸くパンネロの言わんとする事を理解した。
それはつまり。
「…一人って…そういう事か…?」
女だって自慰をする事くらい知らっている。
だが、パンネロが…と思うとやはり驚きだ。
(こんなにちっちゃくても、ちゃんと女なんだな…)
と、妙な感慨を抱いたり。
しかし、自分が居なくて寂しくて…となると、まぁ悪い気はしない。
折角なので、ちょっと利用させて貰ってからかってみる事にする。
今までの不安が一気に爆発して泣きじゃくるパンネロの背中を優しく撫でてやる。
「そうだな……」
胸を痛めているパンネロを見ているとさすがに罪悪感がもたげて来るが、その勘違いっぷりがあまりにも見事なのと、困っているパンネロを見ると、
(もっと困らせてみたくなるのが性分でね。)
このイタズラは、出かける前に“寂しい”と甘えてもらえなかったモヤモヤ感を埋めるのに充当する。
全く意味はないが、最初に心の中で誠心誠意で詫びておいから、
「それは…パンネロが思っている程、悪い事じゃないさ。」
パンネロがおずおずと顔を見せる。
「………本当?」
泣き出しそうな顔で上目遣い。
(最強だな。)
不埒な考えをおくびにも出さず、バルフレア、深く頷く。
「だが、褒められた事じゃないのも確かだな。」
パンネロの顔が瞬く間に曇る。
(ゾクゾクするな…)
「だけど、心配しなくていい。…今、約束したろ?」
パンネロ、バルフレアの真意が分からず、じっと見つめている。
「パンネロが俺の言う事を一つ聞けばいいって言ったろ?
まぁ、罰ゲームだな。」
「………本当?」
「あぁ。その方がパンネロもいいだろ?」
確かに、このまま罪悪感に苛まれ続けるなら、ペナルティだろうが罰ゲームだろうが、それで償えるのなら、
(その方が…いい…わよね…?)
話の流れがおかしい事にまだ気付かず、パンネロは考え込んでしまう。
「どうする?」
「言う事を聞いたら…いいの…?」
「ああ、そうだ。」
バルフレアは笑いを堪え、わざと真面目な表情で答える。
「じゃあ……そうする。私…どうすればいいの…?」
「そうだな…」
わざとらしく考えるふりをしてから、パンネロの耳元に口を寄せて、
「見てみたいな。」
「…?…何を…?」
「パンネロが、一人でしている所だ。」
パンネロは慌てて身体を離すと、
「いや…!そんなこと…ねぇ、お願い、バルフレア…」
「さっき約束したよなぁ?」
「でも………!」
「見せてくれたら…もうこの事はもちろん口にもしないし、忘れる。」
自慰行為を忘れる為にそれを見せるなどと矛盾もいい所だが、パンネロは相当動揺しているようで気付きもしない。
「約束したろ?」
パンネロはためらいつつも、それでもなかなか素直に頷けなかったが、
「本当……に?忘れてくれる……?もう怒らない?」
バルフレアは優しくパンネロを引き寄せる。
「頼む…一度だけだ。…な?」
と、低い声で囁いてみる。
すると、パンネロは頬を赤らめつつも、コクンと頷いたのだった。

1 2 3 4 5 6 7