続・自信のないバルフレア(FF12/R18)

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パンネロは今まで待ち合わせの時間に遅れて来たことはない。
待ち合わせたホテルのロビーに、今回はたまたま1時間前に着いてしまったバルフレア。所在なげにソファでパンネロを待っていたが、どうせなら先にチェックインでもしておくかと席を立った。戻ってみると、パンネロは既に来ていた。
(おいおい、30分前だぜ…?)
待ち合わせの場所のドレスコードにに合わせたのか、バルフレアが贈った赤いベロアのミニドレスを着ていた。ビスチェの裾にレースが施されているだけのシンプルなデザインだが、腰に辛うじて引っかかているスカート部分はふんわりと広がり、その下から同色のボリュームのあるオーガンジーのスカートが更に広がり、その裾には淡いピンクの豪奢なレースが縁取っている。同じレースで作られた首飾りをし、その首飾りがよく見える様に髪を緩く結い上げている。
バルフレアは自分の見立てが良かったと自画自賛しながらその姿に見入って悦に入る。ちょっと背伸びをしている感じが溜まらない。ビスチェとスカート間からちらりと覗く腰が色っぽくもある。
大きな柱にもたれ、パンネロは入り口の方をじっと見つめるている。
時折、少し不安そうに首飾りをいじったり、ドレスと同じ色のエナメルの靴が窮屈なのか、足下に目を落としたり、かと思うと急に澄まし顔を作ってみたり。
その様が微笑ましくて、バルフレアはそんなパンネロの様子を暫く眺めていた。
パンネロはいつも入り口が一番良く見える場所でバルフレアを待っている。バルフレアの姿を見つけると、すぐにうれしそうに駆け寄って、ぎゅっとしがみついて、“会えてうれしいの”を全身で表していた。そこがまたい可愛らしくて、自分はなんて愛らしい恋人を持ったのだとしみじみと幸福を噛み締めていたのだ。
ちょっと驚かせてやろう、と背後からそっと歩み寄り、後ろから声を掛けた。
「パンネロ。」
パンネロは驚いたのか、“きゃっ”と小さく叫んで肩をすくめ、おそるおそる振り返る。後ろに立つバルフレアを見て、一瞬で輝く様な笑顔を見せる。
「バルフレア…?もう!びっくりした…あっちから来ると思ってたのに。」
バルフレアは細い腰を抱き寄せ、パンネロの顔を覗き込む。
「たまたま早く着いちまったんだ。席を外して、戻って来たらパンネロが居た。」
パンネロはぎゅっとバルフレアにしがみつく。
「そうなの?まだ30分も待たなきゃと思ってたの。だから早く会えてうれしいな。」
何故こんな一言が俺様を有頂天にさせるんだとバルフレアは心の中で拳を握りしめつつ、さり気なく足をエレベーターに向ける。
「随分心配そうに入り口を眺めてたな。俺が来ないか、心配だったのか?」
「え?見てたの?」
パンネロは顔を赤くする。
降りて来たエレベーターには誰も乗っていない。バルフレアに促されて、エレベータに乗り込むと、パンネロは頬を両手で覆ってしまう。
「やだ…ソワソワしてる所、見られちゃった…」
そして、ぷぅと頬を膨らませ、
「バルフレアの意地悪…どうしてすぐ声掛けてくれなかったの?」
「別に意地悪じゃない。」
そうして身体を屈めて、頬を覆うパンネロの手の甲に唇を寄せ、
「可愛いから見とれてただけさ。」
歯の浮く台詞にも素直に頬を染め、項や肩までうっすらと赤く染まるパンネロを、さて今日はどうやっていただこうかとほくそ笑みながら、エレベーターを降りる。
それでもパンネロがきっと上目遣いに睨むのを、
「からかったわけじゃないさ。本当の事だろ?」
と、軽く撃沈させて、部屋の鍵を開ける。
「わ…素敵!」
扉を開けると、まずゆったりとしたソファに扉に見事な彫刻が施された重厚なクロゼットが配されたリビングルーム、奥のベッドルームにはキングサイズのベッドが二つ並んでいる。
「ふふっ…絨毯もふかふか…」
パンネロは踊る様にくるくると回りながら窓際に駆け寄る。
「きれい!帝都が一望出来るのね!」
見晴らしの良い窓の下には一幅の絵のような帝都の街が広がっている。その景色を見てパンネロははしゃいでいたのだが、ふと表情を曇らせて、
「でも、大丈夫なの?」
「何が?」
「…だって、バルフレア、賞金首のお尋ね者でしょ?こんな所に泊まったりして、見つかっちゃったりしない?」
「空賊で、踊り子のお嬢ちゃん程有名じゃないさ。」
またふざけて…とパンネロが怒ろうとした所で、ベッドルームで電話のベルの音が響いた。
バルフレアが出ると、電話はフロントからで、パスポートの事で聞きたい事があるそうだ。パスポートはもちろん偽造なのだが、見つかる様なヘマはしていない。
「ちょっと行って来る。」
バルフレアは鍵を手に取ると、何か言いたげなパンネロの頬を人差し指でちょん、と突く。
「もう!また子供扱い…」
「大人なら、大人しく待っててくれよ。」
そう言うと、バルフレアはもう一度柔らかなパンネロの頬を突いて部屋を出た。
******************
呼び出されたのはパスポートの番号の印字が少し擦れていたからだけだったが、わざわざそれだけで呼び出されるとは、
(さすが“皇帝陛下”のお膝元、厳しいな…)
このホテルをパンネロは気に入ったようだが、今度からは使えそうにないな…などと考えながら部屋に戻ると、当のパンネロが居なくなっていた。
「…パンネロ?」
ベッドルームにもバスルームにもパンネロは居なかった。リビングに戻ると、テーブルの上に小さな紙切れが置いてあった。
「探さないで。」
と、一言だけ書かれていた。
文字を読んだ途端、心臓を直接鷲掴みされたかのように息苦しくなった。
(つまりこれは…)
思いが結論に辿り着いた途端、身体のありとあらゆる機能が凍り付いた。もう何も考えられないし、指一本動かす事すら出来ない。薄っぺらなメモ用紙一枚すら持っていられないくて、ひらひらと床に落ちた。
メモ用紙どころか、自分の身体すら支えていられなかった。
気が付くと膝を付き、ただ正面をぼんやりと見つめていた。いや、見つめていると言っても、何も目には入っていなかった。
パンネロが居なくなった。
しかも、自分の意志でバルフレアから離れて行ったという事実が、バルフレアを一瞬にして魂のない抜け殻にしてしまったのだ。
(どうして…)
思考がぐるぐると回って、考えがまとめられない。確かに少しからかい過ぎたかもしれない。しかし、パンネロが出ていく程ひどい言葉を自分は投げかけたのだろうか?
すぐに追いかければまだ間に合うかもしれないのに、これ以上の拒絶が怖くて立ち上がる事すら出来ない。
その時、背後で扉の開く音がした。
バルフレアはのろのろと振り返る。しかし、扉は閉ざされたままだ。
パンネロに戻って来て欲しいと思ったが故の幻聴かと自分で自分に呆れてしまったが、それでも扉から目を離す事が出来ない。
「あの…バルフレア…?」
小さな声が部屋の反対側からする。
バルフレアはゆっくりと声のする方に顔を向けた。
すると、何故かクローゼットの中からパンネロがおずおずと顔を出していた。パンネロはクローゼットの中から慌てて出て来ると、バルフレアに駆け寄り、
「ご…ごめんなさい!あの、ちょっと…ふざけただけだったの…バルフレアを驚かせようと思って…」
バルフレアはゆっくりと瞬きをした。
膝をついているので、いつもは下の方にあるはずのパンネロの顔が正面にある。
出て行ったはずのパンネロが何故目の前で必死に謝っているのか、なかなか理解出来ず、バルフレアはぼんやりとパンネロの顔を見つめている。
「あの…ね!驚かせようと思って…ちょっと隠れてただけなの。ごめんなさい、ごめんなさい!こんなにびっくりするとは思わなくって…」
なんだ、ふざけただけだったのか、パンネロはちゃんとここに居るのだ。漸く理解出来た瞬間、バルフレアは目の前のパンネロを強く抱きしめた。
「きゃ…っ!バルフレア?」
パンネロが驚いて小さく叫んだが、構わず腕に力を込める。抱きしめると言うより、しがみついているようだった。パンネロを離したくない。どこにも行かせたくない。
そう思った瞬間、身体が勝手に動いた。
パンネロを肩に担ぎ上げると、乱暴にベッドまで運び、組み敷いた。
「…んっ!」
あっという間に唇を塞がれ、バルフレアの舌が強引にパンネロの口の中に侵入してきた。顔を背け、バルフレア、と呼ぼうとするが、顎を捕えられ、なすがままに口内を陵辱される。小さな唇が覆われ、呼吸すらままならない。頭の芯がぼうっとして、身体がどんどん熱を帯びる。
バルフレアのキスは乱暴で、まるで脅える子供がしがみついてくるみたいだ。行為の際、強引な時は何度かあったが、それとも違う。
子供扱いに対する軽いいたずらのつもりだったのが、バルフレアの弱い部分を突いてしまったようだ。
(私が…居なくなるのが怖いの…?)
プライドの塊みたいな男に膝を付かせてしまうほどに?と、パンネロは俄に信じられない。
漸く唇が解放されると、バルフレアはじっとパンネロの瞳を見つめる。
「このバルフレア様に膝を付かせたんだ、覚悟は出来てるな?」
不安で、不安で仕方がなかったのだろう。まるで子供の強がりだ。それでも、不敵に笑ってみせるバルフレアのそういう所がパンネロは愛おしくて仕方がない。
パンネロはバルフレアの背中に腕を回し、ベストの留め金を外す。
「うん…分からせて…いっぱい……」
こんなバルフレアを知っているのは自分だけだ…再開された愛撫は乱暴なものだったが、パンネロはうっとりと目を閉じてその身を委ねた。
******************
息苦しくて、ぐつぐつと煮えたぎった熱が身体中を駆け回りが頭が沸騰しそうだ。
熱はうねりとなってパンネロを何度も押し上げ、不意に放り投げたかと思うと、また高い波に飲み込まれる。
たまらずにシーツに爪を立てて掴むと、その手を大きな手のひらが覆う。
手首がくるりと返されて、指と指をしっかりと絡められた。肩越しに、背中に覆いかぶさる様にしてパンネロを抱え、貫いているバルフレアと目が合う。
大きな波に翻弄されていても、この視線だけは逸らせてはいけないと、緑色の瞳をじっと見つめ返す。
すぐに唇が塞がれた。
溜まっていた熱はますます行き場を無くし、パンネロは瞳から涙を零し、悶えた。
繋いでいない方の手がパンネロの身体の下に潜り込んで、バルフレアの骨張ったが指が繋がった部分に触れる。そこから溢れている愛液をすくうと、その上にある肉芽にたっぷりと擦りつけ、ゆるゆると上下させる。
「んっ……ぅんっ…!!!」
後ろから突かれていただけではどうしても達する事が出来ず、燻っていた快感が一気に弾けそうになるが、唇で閉ざされた声は行き場をなくし、くぐもった声が漏れるだけだ。
小さな身体は完全にバルフレアの大きな胸板に縫い付けられてしまった。今のパンネロに、自分の意思で自由に出来る箇所はどこにもない。
それなのにパンネロは多幸感に酔いしれていた。
漸く、唇だけが解放される。
「あぁっ…!バルフレア…!!」
名前を呼ばれ、バルフレア自身は更に大きく膨張し、動きが加速する。
刺激はますます強くなり、それが快感なのか苦痛なのか、パンネロにはもう分からなくなっていた。ただ、バルフレアの動きを受け入れようと自らも腰を動かす。
繋がった秘所からは生々しい音が響き、耳を塞ぎたくなるが、もうそれに構う余裕などなかった。
「あぁっ!あぁっ!」
身体を揺さぶられる度、嬌声と涙がこぼれ落ちる。
「あっ…!バルフレア…バルフレア…」
繋いだ手に力が篭り、シーツに押し付けられた。
パンネロの柔らかな髪は乱れ、汗と涙で頬に張り付いている。形の良い胸は身体とベッドに挟まれて押しつぶされ、まろやかで豊かな尻だけが高々と上げられ、バルフレアに捧げられている。
清楚で幼い恋人からは想像できない程、いやらしい光景だ。
だが、バルフレアにもそれを愛でる余裕はなかった。それよりも、力を込めた手をパンネロが握り返してくれた事の方がうれしい。
きっかけはほんのささいな事だった。バカバカし過ぎて、とても人には言えない話だ。だが、そんなプライドなんてどうでも良くなる程今はパンネロが自分の腕の中に居る事実にバルフレアも酔っていた。
「あ…っ、バルフレア……あの…ね…」
快楽の最中に居ながら、パンネロはこれだけは伝えなければと荒い息の合間に言葉を紡ぐ。バルフレアは少しだけ腰の動きを緩め、恋人の口元に耳を寄せた。
「わた…し、どこにも…行かな…い…から……ごめん…ね。」
苦しい息の下で可愛らしい事を言って、バルフレアを有頂天にさせる。
愛おしさがこみ上げ、バルフレアはパンネロを強く抱きしめ、また動きを加速させる。愛らしい言葉と裏腹な淫らなぬめりがバルフレアを促す。
「やん……!あっ……激し…っあぁっ……!」
激しい律動にパンネロはバルフレアの手の甲に爪を立てた。
ゾクゾクとした感覚が二人の身体を同時に駆け抜け、関を切ったように快感が一気に破裂した。
バルフレアはパンネロの上に崩れ落ち、パンネロは快楽の余韻に震えながら優しくその身体を抱きとめた。
指一本動かす事が出来ない。呼吸もままならず、頭が真っ白になって何も考えられないのに、お互いの温もりだけが確かだ。
漸く落ち着いた所で、バルフレアはパンネロに優しく口づけた。
この騒ぎのきっかけはパンネロの子供らしいいたずらだ。それにここまで翻弄され、それが起爆剤となって、今まで達した事の無い様な圧倒的な快楽に引き込まれていた。
これでも「女たらし」で通って来たバルフレアだが、ここまで無我夢中になった事があっただろうかと思い返す。
(それも…“お嬢ちゃん”相手に…か…)
それだけこの少女の白い魔性に捕われているという事なのなだろう。しかもパンネロ自身は何も知らず、ただただバルフレアを慕っているだけで、バルフレアが勝手に振り回されているだけなのだ。
(これが惚れた弱みか…)
バルフレアはパンネロのいたずらが現実にならなくて良かったと心の底から思い、一方パンネロはバルフレアの胸中を知るはずもなく、自分は思っているより恋人に愛されていたのだとうれしくなり、
「バルフレア、大好き。」
そう言って、ふんわりと微笑んで見せたのだった。
おわり


しりお様が作中のホテルのロビーでバルフレアを待つパンネロを描いて下さいました!(クリックでイラストのページへ)
バルフレアが来るであろう方をじっと見つめている、紅いドレスを来たパンネロです。なんだかいじらしくて”キュンっ”となるパンネロです。(パンネロのページは6ページめ)
※リンク先にはR18のイラストも掲載されてます。
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