初めての旅行(FF12/R18)

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再びきつく抱きしめられ、唇吸われ、パンネロは陶然となる。いつもは触れるだけのキスだったので最初は驚いたのだが、回を重ねる毎に、
「あのね、もっと、欲しくなるの。」
息を継ぐ合間に唐突に言われ、バルフレアは目を丸くするが、パンネロが可愛らしく唇を突き出してきたので、すぐに応えてやる。
「これのことか?」
「……うん」
再びお互い唇を貪り合う音が響く。合間にパンネロが短く吐息を漏らす。
唇が少しでも離れると、きゅっと閉じられていた瞳が開き、バルフレアの瞳をじっと見つめて、もっと、と口づけをねだるのだ。
(可愛い過ぎるな…)
どれだけ貪っても、足りないくらいだ。バルフレアは細い首筋に唇を移動させた。パンネロの身体が小さく跳ねた。
昨夜触れられた時、背中を駆け上がっていった感覚がただただ恐ろしかったのだが、今は違う。
(くすぐったくて、優しくて…)
パンネロも抱きしめる様にしてバルフレアの背中に腕を回した。バルフレアはゆっくりと肌を啄む。柔らかくて、甘い香りすらしてきそうだ。
バルフレアの唇が首筋から、鎖骨へと移動する。わずかに生まれた隙間に掌が滑り込んで来た。
形の良い胸を、大きな手が覆う。
胸全体を優しく掬い上げる様に撫でながら、やっと手に入れた宝物に証を残したくて、鎖骨の上の柔らかく窪んだ部分を吸い上げる。
「あ……」
バルフレアは鎖骨から首筋へと跡を残しながら、小さな突起を探り当てた。
「きゃっ……」
骨ばった指が優しく先端を転がす。
そこに集まるくすぐったい様なもどかしい様な甘い痺れに、パンネロは小さく悲鳴を上げた。
「…やぁ…っ…」
「どうした?」
バルフレアの唇はいつの間にか耳たぶまで来ており、パンネロの耳元に低い声で囁きかける。その声がまたパンネロの身体を震わせる。
「あ…、なんだか…ヘン……なの……」
「何がだ?」
「わ……た…し……。」
いつの間にか呼吸がどんどん早くなって、まともに話す事が出来なくなっていた。
「身体が…熱くて……」
「それで?」
「やんっ……!」
バルフレアが答えながら耳たぶを甘噛みするので、パンネロはまたもや声を上げてしまう。
「…やっ…意地…悪…しないで………」
「難しいな。」
それでもバルフレアはパンネロの願い通り、手を休めてやる。
「言っておくが、止めるのはこの1回だけだぞ。」
「どうして?」
「この先、途中で止められる自信がない。」
きょとん、として首を傾げるパンネロに、バルフレアは苦笑いを浮かべ、
「おまえが、可愛い過ぎる。」
言ってからバルフレアは“しまった”と慌てた。恥ずかしがりのパンネロの事だ。またシーツにでも潜り込まれたら…
が。
パンネロはじっとバルフレアを見つめ、何度かぱちぱちと瞬きをし…そして、茶色の瞳から唐突に涙をぽろぽろと溢れさせたのだ。パンネロは驚いて何かを言おうとするバルフレアを制して、
「違うの。びっくりさせてごめんなさい…うれしいの。…私、今分かったの。バルフレア、私のこと“欲しい”って思ってたんだって。」
バルフレアはますます混乱してしまう。そもそも口説いたのは自分の方からなのだが。
しかも、口説き文句は悉く論破され、最後に言った“パンネロが好きだ”という言葉までどれだけの時間と言葉を費やしたことか。
それからだって、パンネロの事は大事に、大事にしてきたはずだ。
パンネロを怯えさせないように早くに帰らせたり、キス一つだって、触れるだけの子供騙しみたいなキスで。
ここまで考えて、バルフレアは漸く気が付いた。
「そうか…」
パンネロの涙を指でそっと掬ってやる。確かにその先にある見知らぬ何かにパンネロは怯えていた。だが、決して拒んでいたわけではない。
バルフレアがそこから目を反らせようとすればするほど、恋人として、女として見られていないのではないかとパンネロの不安を煽っていたのだ。
「…身体が熱くなるのは…」
パンネロが何?と瞳で尋ねる。
「俺に触れられて、感じているからだ。」
パンネロはバルフレアを見上げ、言葉の続きを待っている。
「分からせてやるさ。」
パンネロが微笑んだ。手を伸ばし、バルフレアの頬に触れる。
バルフレアはパンネロの小さな手の上に自分のを重ねると、にやりと笑ってみせる。
「泣いて喚いても、知らねぇぞ。」
パンネロの瞳がうれしそうに輝いた。そのままバルフレアの首に両腕を回して、ぎゅっと抱きしめた。
再び動き出した指にパンネロは息を飲み、それからバルフレアに聞こえない様に小さく、小さく息を漏らした。
胸の柔らかさ、押し殺された吐息がバルフレアの理性を飛ばしそうになるが、パンネロが自分の名前を呼ぶ小さな声で我に返る。
パンネロはこれから起こる事がまだ怖いのだろう、バルフレアにしがみついている。そんな不安など感じさせないくらい、乱れさせたい。
バルフレアはパンネロの胸に顔をうずめると、突起の先端を優しく口で含んだ。
「やぁっ……!」
指とは違ったぬめる舌の感触が甘く焦れったい快感を生み出す。バルフレアの指が、もう片方の乳首を撫でる。
「ん…っや…、ぁあっ」
吐息が、か細い声に変わっていく。時折そっと歯を立ててやると、背中を大きくのけ反らせる。
「バルフレア、…っ、あ、それ……だめ…」
パンネロは堪りかねて自分で自分を抱える様にしてバルフレアに背を向ける。心の準備が出来た様でいて、未知の感覚に気持ちがまだついていかないようだ。
バルフレアはパンネロの肩を掴み、自分の身体の下に引き戻す。細い両手首を掴み、シーツに押しつけ、ベッドの上に縫い付ける。
「逃げるな。」
「…あ……」
「泣いて喚いても止めないって言っただろ?」
言い訳を許さず再開された愛撫に、パンネロは首をのけ反らせる。
「だって…身体が…熱くて…くすぐったくて……」
途切れ途切れの反論が可愛らしく、バルフレアは耳を傾ける。
「目が…回る……の。」
「それで?」
耳元で囁くと、パンネロはきゅっと首を竦める。
「それで……切ないみたいな…ヘン…な感じ…」
「本当だ。」
「え?」
上気した頬、潤んだ瞳で見上げるパンネロ。その表情は正しく、
「切なそうな顔をしている。」
バルフレアを見上げていたパンネロの顔がますます赤くなる。なんとか“切なそうな顔”を見られまいともがくが、両手をベッドに押し付けられたままで逃げられない。
少し意地悪が過ぎたかと手を緩め、泣き出しそうな目蓋にキスをする。
バルフレアがパンネロを引き寄せると、パンネロは慌てて厚い胸板に顔を押し付けて来る。
「そんなに恥ずかしいのか?」
優しく背中を撫でられ、それだけなのに背中を駆け上がるぞくぞくとした感覚に身体を震わせながらパンネロが頷く。
バルフレアはパンネロの瞳を覗き込んだ。
「恥ずかしがらなくていい。」
「でも…」
「俺にしか見せないだろ?」
バルフレアの言わんとしている事が分からず、パンネロは首を傾げた。
「ベッドの中で、恋人にだけ見せる顔だ。だから良いんだ。」
パンネロはまだ理解出来ず、何か言いたげにバルフレアを見上げている。そんなパンネロの初々しい反応にバルフレアは目を細め、
「おまえが切なそうな顔をすると、俺が興奮する。」
パンネロはますます混乱する。
「ドキドキするの?」
「ものすごく。」
あまりにもきっぱいと言い切るのに、パンネロはなんだかうれしくなるが、
「興奮して、もっとそんな顔にさせたくなるな。」
という言葉に、慌ててバルフレアの身体の下から逃げ出そうとすると、背中から覆い被さる様にして抱き閉められた。
「逃がさないって言っただろ?」
華奢な身体を片腕一本で抱えてしまうと、パンネロはそれでもう身動きすら出来ない。バルフレアは空いた手でパンネロの胸の突起をきゅっと摘み上げた。またもや胸の先に集まる切ない痺れに、パンネロは堪え切れずに声を漏らす。
「あ…ぁあっ!」
バルフレアが自分を拘束の力は今はそんなに強くはない。なのにパンネロはバルフレアを振りほどけないでいた。
パンネロは肩越しにバルフレアを振り返ると、つんと唇を突き出す。すぐに唇が塞がれた。
緩く唇を開きそれを受け止めると、バルフレアの舌が忍び込んで来た。

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