だから嫌なんだ。(DDFF/R18)

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ライトニングは座位があまり好きではない。以前ひどい目にあったからだ。

なのにフリオニールは行為が極まってくると、ライトニングには良くわからない、なんらしかのもどかしさを感じるらしく、細い腰をたくましい腕で巻きつけると、腕の中のライトニングごと体を起こして激しくその欲望を叩きつけるのだ。

ひどい目に合ったというのは、その時ライトニングはフリオニールの膝の上でゆさゆさと揺さぶられる中、背に手を回し、落とされないようにと必死で大きな背中にしがみついていた。だが、筋肉がゴツゴツとした背中は岩肌のようで掴みにくく、おまけに激しい行為で汗だくで。

手を滑らせたライトニングは体が沈み込み、まさにそのタイミングでぐい、と突き上げがフリオニールの雄が一番敏感な部分をぐっと押し上げ、そこにライトニング自身の体重もかかったため、いつもよりより深いそこをパンパンに膨らんだ肉茎に力任せに突かれたものだからたまったものではない。

脳天を電撃が貫き、視界が真っ白になった。

さっきまで耳元で聞こえていたフリオニールの忙しない息遣いや、ぐちゅぐちゅ耳障りな性器の擦れ合う音とか、張り上げていた嬌声とか、寝室に満ちていた淫らな音がサッとかき消された。

体を貫いた強い強い快感がピリピリと全身をめぐり、それは勢いが衰えることがなく体に満ちたかと思うと、不意に何もない空間に放り出されたような浮遊感があった。どこまでも落ちていくような、体の輪郭が溶けていくような心地良さと、自分が自分でなくなるような頼りなさが僅かに残った意識を支配した。

つまるところ、その時ライトニングは失神してしまったのだ。絶頂とか快感と呼ぶには強すぎる感覚と意識を失う心細さに「あんなワケのわからない状態は二度とゴメンだ。」と思ったのだ。

二度とゴメンと思った理由はもう一つある。その事後も大変だったのだ。

(腰が抜けてまともに立てなかった。)

立ち上がることすらままならないライトニングにフリオニールは驚き、必死になって介抱してくれた。

(それはいい、それは。)

着替えすらままならない自分をいたわりつつも、無理をさせたのか、何が起ったのかとしつこく聞いてきたのだ。

しつこく、というのはあくまでもライトニングの主観だ。
フリオニール側からすると、行為中(しかもお互いにあとちょっと、というタイミングでだ)恋人が自分の動きに合わせるかのように腰を落としたかと思うと、いつもよりひときわ大きな嬌声を張り上げ、そこから全ての力が抜け、崩れ落ちた。

達した後に脱力するのはいつものことだがその時は違った。

意思のない人形のようにがくん、と大きくのけぞったかと思うと、そのまま後向きに倒れてしまいそうっだったのを慌てて支えたのだ。抱きとめた恋人は気を失ってぐったりしていて、何が起こったか想像もつかないフリオニールからすると心配するのは当たり前のことだった。いつもと別段違うことをした覚えはないのでなおさらだ。

「心配ない」「大したことない」「気にするな」と何度言い聞かせてもしつこく(あくまでライトニング主観で)尋ねて来るのでだんだんと誤魔化しきれなくなって、

「ちょっとばかり…気が遠くなっただけだ。」

それを聞いた時のフリオニールの、

(あの顔!)

最初は“パチクリ”と音がしそうなくらい目を開き何やら一生懸命考えてる顔をし、しばしの間のあと、

「あ。」

と呟いてひとりで赤くなって口の中でゴニョゴニョ「ごめん」とか「そんなつもりは」とか「でもうれしい」とかなんとか。

(いつもは察しが悪いくせに、どうしてこういう時だけ…)

「ライト?」

物思いに耽っていたライトニングが我に返って顔を上げると、フリオニールが心配げに顔を覗き込んでいた。

「どうしたんだ?なんだか気が乗らないようだが…」
「いや…なんでもない…」

(本当にどうしてこういう時だけ察しがいいんだ…)

ここでうまく「どうしたんだ」攻撃をいなさないと、

(また根掘り葉掘り聞かれるに決まってる…)

ではどう言えば良いかとうまい言い訳がこんな状況で思い浮かぶはずもなく。
ライトニングは早々に堪忍すると、

「……………この格好は……」

決心して口を開いたものの、言いにくいことだし、恥ずかしいし、そもそも何故こんなことを言わなくてはならないのだと腹が立ったり。
ライトニングの気持ちを知る由もなく、フリオニールはまだ肩で息をしたまま、じっとライトニングの瞳を見つめ、大人しく次の言葉を待ってる。

ちょっと困った表情で、息を飲んでライトニングの言葉を待っているフリオニールに対峙した時の感情を言い表すことはとても難しい。察しの悪さにイライラしたり、思いもよらないことを言い出すのでものすごい脱力感に襲われたり、なぜか親と離れた雛チョコボを思い出したり、一生懸命自分のことを考えている様が健気に思えたり、それが少しばかりうれしかったり。

奇妙な間があってから、フリオニールがおもむろに口を開いた。

「ライト…」

しまった!と思った時にはもう遅かった。
フリオニールが自分なりの結論−−−それはライトニングにすればいつも身悶えするほど気恥ずかしいことなのだが−−−にたどり着いた時のうれしそうな顔をしているのだ。

「ま、待て、フリオニール…!」
「いいんだ、ライト」
「そうじゃない、だから余計なことを…」

言うな、と言い切るのを遮るようにフリオニールは首を折り曲げ、ライトニングの白い額に自分のを重ね合わせると、

「気がつかなくてごめん。」

フリオニールはライトニングを抱えたまま優しく横たえ、その瞳を真上から覗き込み、

「でも、こうやって言ってくれると助かる。俺、鈍いから。」

そう言ってうれしそうにライトニングの顔中にキスをする。
ライトニングはライトニングで、一体フリオニールが何を言い出すのか全く想像ができず、どんな言葉が飛び出して来るのだろうかとハラハラしながら待つことしかできない。

「恥ずかしかったんだな、ライトは。ごめん、俺、気が付かなくって。」

違う、なんで今さらこれくらいで恥ずかしがらなくてはならないのだ、と言いかけて、ライトニングはそのセリフを飲み込んだ。
わかっていたではないか、フリオニールが何を言っても結果は同じ。地団駄を踏むほど気恥ずかしくて、なんでそうなるのだと胸ぐらをつかんで問い詰めたくなって、それでいてフワフワと心が浮き立つような気持ちになるのだ。

「…わかったなら、それ以上言うな。」

唇を尖らせ、ライトニングはそっぽを向く。心なしか拗ねたように頬を膨らませているようにフリオニールには見えた。

「ライトはかわいいな。」

そう言おうとしてフリオニールは言わずにおいた。
それを言うと大切な恋人が機嫌を損ねてしまうことをちゃんと覚えていたからだ。

(それに、それ以上言うなって言ってたし。)

そっぽを向いている美しい女神の心中などわかるはずもないフリオニールは、ほっそりとした白い首筋を優しく吸い上げ、ぴくんと肩が跳ね上がったのに気をよくし、ライトニングの体を強く抱きしめた。

おわり。