異世界の恋人。(DDFF/R18)

この記事を読むのに必要な時間は約 5 分です。

不思議な異世界に連れて来られて出会った恋人はフリオニールといった。
背が高くて、一人でいくつも武器を持ち歩いていて、鋭い目つきで。
そんな容貌とは裏腹に口から出る言葉が妙に子供っぽくて。
もしやと思ったらやはり年下だった。
彼はたくさんの装身具を付けていた。
色とりどりの石で出来たそれらは、ライトニングの世界ではとうに居なくなってしまった、自然と共に生きたと言われる古い戦士の一族を思わせた。
敵の目を盗み味方の目を盗み、岩陰で慌ただしく肌を重ねたあと、ライトニングは恋人の耳たぶから垂れる石を指先で撫でながらそんな事を考えた。
石から視線を恋人の顔に向けると、愛おしそうに自分を見下ろしている。
フリオニールはライトニングを膝に乗せ、髪を撫でている。
ライトニングは耳飾りから手を離し、その頬に触れた。
と、フリオニールは眼を細めてライトニングに口づけた。
随分慣れてきたな、とライトニングは思う。
フリオニールは女性に慣れていない、と言うか経験がなかったらしく、ガチガチに緊張して大変だったのだ。
ライトニングが触れただけで身体を竦ませていたし、逆にライトニングに触れる手や話す声が震えていた。
そのくせいざ行為に及ぶとなると、やれ服が汚れるだろうとか、背中が痛いだろうとかものすごく気を使うのだ。
確かに、野外でこんな大柄な男にのしかかられては服はたちまち破れてしまい、背中が傷だらけになるだろうが。
そういった理由で二人のセックスは自然と座ってする形になる。
フリオニールがライトニングを膝に乗せているのその為だ。
戦いに明け暮れる日々に不満はないが、こういう時は個室と柔らかいベッドが懐かしい。
だが、大柄なフリオニールの身体にこうやって包まれるのは悪くない。
唇が離れて、大きな手のひらがライトニングの両頬を包み込む。
フリオニールはよくこの仕草をする。そうして、じっとライトニングの瞳を覗き込む。
「…触れていたいんだ。」
じっと見つめられて照れたのだろうか、不意にフリオニールが呟いた。
ライトニングは頷いた。それはライトニングにとっても同じ思いだったからだ。
本当なら邪魔な衣服は全て脱ぎさって、広くて逞しい背中にしがみついて思う存分彼の名を呼びたい。
だが、それは叶わない願いだ。
「最初は…辛かったんだ。」
何が?とライトニングは瞳で尋ねる。
「俺が…戦いで倒れたら、とか…この戦いが終わったら…とか。ライトに会えなくなる事を考えた。」
言葉の続きを、ライトニングはフリオニールから眼を反らさずにじっと待つ。
「それならいっそ…こんな気持ちを持たない方が良かった…と思った。でも…この前、俺が偵察に行って別行動になった事があっただろう?」
「ああ…そうだな。」
「その時…ライトの事ばかり考えていた。そして分かったんだ。ずっと…一緒に居たいけど、一緒に居られないのは辛い。だが、会えない方がもっと辛い。」
腕の中のライトニングが小さく笑った。
「…おかしいか?」
「いや…そうじゃない。続けてくれ。」
おそらく、フリオニールの居た世界というのは素朴でシンプルな社会なのだろう。
それとも元々が前向きで生真面目なせいなのかもしれない。
時折こんな感じの事を言って、ライトニングを喜ばせるのだ。
「それに気付いたら…辛さより、幸せだと思えるようになった。」
純真と言おうか、いじらしいと言うべきか。
本当は少し気恥ずかしいのだ。青臭いな、と思う。
だが、恋人の素直な言動は、ライトニングを優しい気持ちにする。
「フリオニール。」
声まで優しくなる。
「私も…お前と同じ様に考えるようにする。」
フリオニールがうれしそうに頷いた。
その穏やかな笑顔を見て、
(前は…もっと笑顔もぎこちなかった…)
不意に、フリオニールはライトニングの肩を抱き、空いている手でライトニングの顎を軽く持ち上げてキスをした。
想いが躊躇う事なく流れ込んで来る。
啄む様な口づけは徐々に激しい物になり、唇がライトニングの首筋に移る。
「夜が明けるまで、まだ時間はある。」
ライトニングの言葉に、二人は額と額を合わせて笑う。
フリオニールはライトニングのふくよかな唇を存分に味わう。
ライトニングはそれに応えながら、フリオニールの広く逞しい背中に腕を回し、強く抱きしめた。

1 2 3 4