ヴェイン✕ヴェーネス(擬人化)

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  • ねつ造激しく注意
  • FF12ネタバレ激しく注意
  • ポルノはありませんが、それを匂わせる雰囲気です。

フォロワさんが描かれたヴェインとヴェネ子(擬人化して女性化したヴェーネス)が素敵だったので、そこに至るシーンをねつ造して書いてみました。


寝所に戻ったらヴェーネスの気配がした。
神出鬼没の彼女だが、それでも姿を現すときは先駆けて、なにか信号のようなものを心に送ってくるのだ。
ヴェインは自分の部屋を見回した。だが、どこにも彼女の姿はない。
「ヴェーネス。」
空に向かって呼びかけてみるが、姿を現す気配は一向にない。気のせいだったかと、服を脱ぎ、湯を浴びる。身の回りのことは全て自分でやる。もともとそのように教育を受けていたし、誰かにヴェーネスと会話をしているところを見られては困るから部屋に人を入れられないからだ。
髪を拭きながら鏡に映った自分の顔を見る。いつもと同じだ、何も変わりない、そう思う。父は納得して毒杯をあおったのだ。全てはソリドールのため、全てはラーサーのため。父はその2つの、彼が最も愛すべき存在のために最善の選択をしたのだ。むしろ羨ましいくらいだ。
薄い寝間着を羽織り、髪を拭く。身体にあれを埋め込んで以来、自分の身体は変わったと思う。食は細くなり、睡眠もあまり必要としない。だが、ヴェインはそれらの人としての営みを止めようとはせず、ヴェーネスはいつもそれを不思議だと言っていた。
華美な装飾を好まないのでベッドは白いオーク材にベッドヘッドのシンプルな、がっしりとしたデザインのものだ。ただ広い部屋にあるので一応天蓋はつけ、これも飾りのないシンプルなオーガンジーの白いカーテンでプライバシーが守られている。必要はないのでは、と異種族のヴェーネスに言われても、それでも寝屋の中で少しの間まどろむ時間は確かに自分に英気を与えてくれると思う。
ベッドのカーテンをまくり上げて横たわろうとすると、そこには女が居た。
ヴェインは眉をひそめてその女を見つめた。誰だ、と聞くのはとても愚かしいことに思えた。この部屋には誰も入ることが出来ない。入室を許しているのはシドとヴェーネスだけだ。シドは今ここには居ない。だとしたら残るはあと一人だ。
「こんな所で何をしている、ヴェーネス。」
ヴェーネス、と呼ばれた女はじっとヴェインを見つめ返している。
「こういうとき、人間は慰めが必要なのだろう?」
その容姿に比べると、声は存外かわいらしかった。まるで声が変わるまえの少年のようだとヴェインは思った。
「人間に化けるのはいいが、人間はまばたきをするものだ。それでは完全な変身とは言えんな。」
これはごまかしだ、とヴェインは思った。少なからず動揺していたからだ。その原因を確かめねばと、ヴェインはベッドに腰掛け、女の顔に自らのを近づけ、正面からじっと見つめた。理由はすぐにわかった。ヴェーネスがこの顔を、この声を選んだことに自分の歪み、執着を見透かされた気がした。いや、もともとそれを隠したつもりもない。だが、こうもあけすけにラーサーに似せてこられると、正直、どう反応して良いのか分からなかった。
まばたきの事を言われ、ヴェーネスは何度か目を瞬かせた。何度か繰り返す内に、それは幾分か自然なものに見えてきた。
すっと通った鼻筋は自分と同じだ、とすぐに分かった。額で斜めに分けられた黒いつややかな髪はラーサーのもの、眉の形も自分に似ているな、と見ていると兄弟の顔の違いを検分しているようで、思いがけずおもしろく思えてくる。利発そうな瞳、心持ち顎をひき、微笑みながら自分を見上げるラーサーを可愛らしいと思っていることを、自分はこの種の異なる友人に話したことがあっただろうか。
「気持ちはうれしいが、私は弟の顔をした女と同衾する趣味はない。」
ヴェインはヴェーネスを反対側に押しやると、そのまま仰向けに横たわった。目を閉じても、ヴェーネスがじっと自分の顔を見つめている視線を感じた。
「君は良き友だ。」
寝所での男と女の会話とは思えないことをヴェーネスは言う。
「君の身体の心拍数、脈拍、体温、いつもとは違う。人間は、身体に異常を感じた際に自覚症状が起こる。だが、君にはそれがない。生命として生物として不自然だ。だから助けが必要だと思った。」
「考えた結果が夜伽とは恐れ入る……」
ヴェインはヴェーネスの手を引き、引き寄せた。不意をつかれたヴェーネスは気がつけばヴェインの腕の中に抱きすくめられていた。少しからかうつもりだった。いくら冷徹と言われても、父を亡くしがその夜に、弟の顔をした女を抱くなどとても気分ではない。だが、そうすることで、ヴェーネスがどういう反応をするのか見てみたかったのだ。
抱きとめた身体は華奢で、細い肩が少し震えていた。まさか怖いのか、とヴェインは鼻で笑う。
「……違うのだ。」
ヴェーネスが答えた。
「君に腕を引かれ、肌を合わせると、まるで身体が浮き上がり、すぐに落下したような感覚がした。」
ヴェインは驚いて、眉を少し跳ね上げた。
「心拍が上がっている。」
そう言われて、ヴェインは笑うことしか出来なかった。
「安静時の心拍数は通常65回から80回だ。」
「今はどれくらいあるのだ?」
ヴェーネスは少しだまり、おもむろに口を開いた。
「通常の1.5倍だ。」
「それは興味深いな。」
「これはなんなのだ?」
「……私にもわからん、な。」
笑い出しそうだった。ああ、確かに慰められたな、そう思ってヴェインは身体を起こし、ヴェーネスの身体を組み敷き、美しく整った口唇を塞いだ。
おわり。