野暮な告知(DDFF/R18)

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「あの…さ、ライト……」
フリオニールがおずおずと切り出す。声色からどこか申し訳そうな感じがしたので、ライトニングは自分の肩まで引き上げられていたシーツをたくし上げ、フリオニールの顔の汗を拭いてやる。ここのとことなかなか時間がとれなかったが、久しぶりに2人きりの時間を過ごせることができた。しかも、宿屋だ。背の高い2人にはいささか窮屈なベッドではあるが、それでも存分に互いを貪り、愛し合うことができた。ライトニングはすっかり満足しており、たくましいフリオニールの胸に顔を埋め、荒い息を整えていたところだ。
それなのに、ためらいがちなフリオニールの言い方だ。ライトニングは優しい笑顔を浮かべ、フリオニールの前髪をはらい、己の額をそこにぴたりとくっつけた。
「どうした?またお前は大したこともないのに、何か失態をしたと思いこんでるんだろう?」
「いや……そうじゃなくて……」
フリオニールが顔をそらせようとするのを、ライトニングはその両頬を優しく手で包み込んだ。
「それとも、私が何かお前の気にさわるようなことをしたのか……?」
「そんなことはない!」
フリオニールは驚いて、それこそ目をむいて全否定をする。
「ライトは…いつだって、きれいで、それで……」
「わかった、わかった!それで!何が言いたいんだ?」
このまま放っておくと、フリオニールはいかにライトニングが色っぽかったとかきれいだったとかを乏しい語彙力を駆使して延々と語るのが目に見えていたので、ライトニングはそれを遮った。
「うん……じゃあ、言う。」
「ああ。」
フリオニールは心の準備をするために、小さく息を吸って吐き、それから未だに上気している恋人の顔を正面から見つめると、
「あの…さ、その……」
言いかけて、またモジモジと顔を赤らめて横を向きかけたのだが、ライトニングの眉がキリキリと音を立ててつり上がるのが視界の端にチラリと映り、慌ててまた正面を向き直し、
「……その、ライトは、その時はいちいち俺に教えてくれなくて大丈夫だ。」
「…………?教える?何をだ?」
「だから、“その時”だ。」
「…………?“その時”…………?」
フリオニールが何を言おうとしているのかさっぱりわからず、ライトニングは訝しげに言われたことを繰り返す。
「いくら俺が鈍くても、ちゃんとわかるから。ライトは、俺に気を遣わなくて大丈夫だ。」
(さっぱりわからない……)
だが、ここで自分がプレッシャーを与えると、フリオニールがますます支離滅裂になるので、口を挟まず黙って話を聞くことにする。フリオニールは一言目を切り出すと、勢いがついたのか、1人で一心にライトニングに語りかける。
「ほら……ライトは……“その時”になったら、俺の腕をつかんでる力がますます強くなるんだ。」
「背中だと、かきむしられる時もある。」
「あと、最初は足の、ももがびくびくって跳ねるんだ。」
「それから、体も跳ねて。」
と、不意に顔を赤らめ、
「それに……その、すごく絞まるんだ……“ぎゅっ”って……」
フリオニールが何を言っているか理解が追いつかず、ただただ言葉だけを追っていたライトニングだが最後のひと言でようやく合点がいった。
(それって、つまり……)
たくさん愛し愛されたおかげで穏やかな波長を描いていた脳はがピーッ!とけたたましいブザー音と共に一気に一本線になったようだった。そんな時にこの愛おしくも愚かしい恋人はそれはそれはうれしそうに、
「だから、“その時”はわざわざ俺に“イク”って教えてくれなくっていいんだ!」
そう言われてライトニングは思わずフリオニールの髪の、尻尾のように長い部分を乱暴にグイと引っ張った。
「おい。」
「な、なんだ?」
「つまり、お前は私が……“その時”はわざわざお前に“イク”って教えてやってる、そう言いたいのか?」
「そうだ、だから、俺はちゃんとわかってるから……」
「聞かれたことに答えろ。私はいつもお前にそう言ってるのか?」
「ああ、そうだ。」
こともなげにフリオニールは答える。
「でも…その時のライトは本当に色っぽくてかわいいんだ……俺に甘えてるみたいで……顔が真っ赤で、ぎゅってしがみつきながら一生懸命そう言ってくれて……途切れ途切れでも、俺に知らせようとしてくれて……」
フリオニールはライトニングが怒っていることに気付いていないようだ。ライトニングの性的な歓びの極みがいかに素晴らしいかと、とうとうと語り、最後に、
「いつも俺が鈍いって言ってるだろ?だけど、そこまでひどくないから安心してくれ。」
「“そこまでひどくない”……か……。」
ライトニングは言葉にできない感情が頭に充填されていくのを感じた。見当違いも甚だしいが、気を遣ってくれているのだ。だが、どうして私がいちいち気持ちよくなって、なり過ぎてもうダメということをお前に報告しなくてはならないんだ、という憤りの気持ちの方が強い。もっとも性愛が深まり、一方でとても原始的で動物的な瞬間だ。それをいちいち口にし、伝えるなんてライトニングに出来ようはずもない。お互いの愛情と快楽がもっとも極まる瞬間に我を忘れて口に出たのを、私の恋人は、そんな風に捉えていたのか。
愛おしくも腹立たしく、無垢でかわいいと思うが情けない。
ライトニングは両腕を思い切り突っ張って、ついでに足も使ってフリオニールをベッドから押し出す。
「ら、ライト……!?」
フリオニールが驚いて身構えた時はもう遅くて、狭いベッドから見事に転がり落ちていた。
「ライト…!?どうして……」
「知るか。」
そして、フリオニールに思い切りしかめっ面をして見せると、
「怒っているのか……?」
「そうだ。」
「ご、ごめん……俺、何かライトを怒らせるようなことを言ったか?」
「それがわかるまで、そこで考えてろ!」
さっぱりわかっていないフリオニールはお情けでもらったバスタオル(シャワーを浴びてすぐベッドに入ったので床に放り出してあったものだ)を腰に巻き、的はずれな解答をいくつも答えたあとで漸くベッドに戻ることを許されたのだった。
おわり。


本日(2017年12月17日)はFF2とFF13発売日でフリライの日ということで、短いけど、何か書いてお祝いしたかったので大急ぎで書きました。