一緒にいる理由とひかれあう理由。(FF12/R18)

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パンネロはその後姿を見送ってから、クスリと笑うと、
「あんなこと、言っちゃった…」
抱いて、だって、と小さく口の中で呟くと、踊るようなステップでベッドに飛び乗る。ベッドの縁に腰掛けて、足をぶらぶらさせながら待つ。あんな風に言ってみたあと、恥ずかしさでいっぱいになってしまったけど、
(バルフレアが喜んでくれたから…)
さっきパンネロの弓矢を調べていた時の真剣な眼差しや気取った仕草、矢を放ったときの低い声を思い出し、バルフレアにこらえ切れないほどの愛おしさを感じた。身体が熱を持ち、胸がきゅんと熱くなった。バルフレアがバスルームから出て来るのが待ち遠しい、いや、もう待てない。
パンネロはベッドから飛び降りると、バスルームへと向かう。中からは水音がしない。そっとドアを開けてみると、背中を向けて身体を拭いているバルフレアの姿が目に飛び込んだ。背中から腰にかけ、皮膚に透けた筋肉がいくつも盛り上がっているのに、パンネロはコクンと息を飲み込んだ。ベッドではいつもバルフレアに翻弄されているのだ。たまには驚かせてみよう、と「わ!」と大声を上げてバルフレアの腰にしがみついた。バルフレアは驚いてしがみついているパンネロを見下ろし、
「もう3分経ったのか?」
「わかんないよ。でも、待てなかったの。」
バルフレアが顔をほころばせる。
「ね、早くベッドに連れてって。」
バルフレアは手早くバスタオルを腰に巻くと、パンネロを抱き上げた。いつもなら恥ずかしがるのに、今日はそれが鳴りを潜めているのも可愛らし過ぎて口元がゆるむ。そのくせじっと見つめると、すぐに頬を朱に染めて顔を伏せてしまうのはいつも通りだ。ベッドの上にそっと下ろされると、パンネロはシーツを捲ってその中に滑り込んだ。自分の傍らのバルフレアが入れるスペースのシーツを持ち上げる。横たわると、すぐにパンネロが腕を伸ばしてしがみついてきた。
触れ合ったところからお互いの温もりを感じる。どちらともなく背中を撫で合った。
「バルフレア…」
肩口に顔を埋めていたパンネロが耳元でそっと囁いた。
「大好き。」
パンネロが囁く愛の言葉はバルフレアにとって暖かな光だ。優しいが、身体の奥深くにある親指の爪ほどしかないような小さな器官にまで届くようで、じんわりとおだやかな愛情を全身で感じる。
「バルフレアは?」
「うん。」
「ちゃんと言って。」
バルフレアは少し身体を起こし、パンネロの顔を真上から見つめる。
「愛してる。」
思った通り、照れくさいのか最初は目を泳がせていたパンネロだが、すぐさまいたずらな表情を浮かべた。
「そんな風に、言うと思った。」
「じゃあパンネロの好きな”どれくらい好き”か教えてやろうか?」
「うん。教えて?」
バルフレアは突然パンネロに覆いかぶさると、首筋に歯を立てた。驚いて悲鳴を上げ、身体を捻って逃げ出そうとするパンネロに、声を上げて笑う。
「もう!またからかう!」
「違うだろ?」
「”噛み付くくらい好き”ってこと?」
「はずれ。」
「”食べたいくらい”…?」
「”じっとしてられないくらい好き”ってことだ。」
最後の台詞は耳に甘く掠れて声でささやかれ、パンネロはびくん、と身体を跳ねさせた。そのまま耳たぶにキスをされた。口唇が触れる度にくすぐったくて身体が跳ねる。耳へのキスはやがて頬に移った。そこから今にも溢れだしそうなほど涙を溜めた目元へ。潤んだ瞳はバルフレアへの恋心を痛々しいほどうったえかけていて、切なさで胸が痛くなるほどだ。今度はまぶたにキスをした。微かに瞬いたまぶたが溢れそうになっていた涙を頬へと押し流した。それも口唇で拭ってやる。
パンネロが早く、と言わんばかりにそっと口唇を尖らせた。触れるとすぐにパンネロはうすく口を開いた。誘われたままに舌を差し入れると、待ちかねていたパンネロの舌が迎える。
「……ふ、……」
パンネロが小さな声を漏らした。口唇の柔らかい感触を楽しみながら舌を絡ませ合う。時折舌と口蓋の間の空間を舌でかき回す。
「……ぁ、……んっ、……」
下肢にどんどん熱が集まって、もうとろとろと蜜を溢れさせていた。その熱はパンネロの性感を高め、口内で暴れるバルフレアの舌を押しとどめるようにして自ら絡めていく。もう何も考えられず、恋人同士は興奮のまま互いの舌を貪りあった。
最初に音を上げたのはパンネロだった。息苦しさ口唇を離して息を継ごうとする。
「……はぁ!あ、ぁ……っ」
その隙にバルフレアの口唇は首筋に移ったのだ。舌を上下に這わされただけでパンネロはうっとりと声を漏らした。くすぐったさにも似た刺激にパンネロは肩を跳ねさせる。名前を呼ばれ、舌先で耳たぶを嬲られると触れられてもいない胸の先端が凝り固く尖っていく。バルフレアはパンネロの胸をまさぐり、指先で乳首をきゅっと中に押し込んだ。
「あ、ん…!」
そのまま指先で淡い色の突起と転がしてやる。
「あ…あ、バル…フレア……」
もっと欲しいと想いをこめて呼ぶと、すぐさま反対側を口に含まれた。いくら舌先で転がしても、それはすぐにむくりと勃ち上がりる。それを楽しむようにバルフレアは執拗にそこをなぶった。
「あぁん!あ…あっ!」
パンネロがひときわ甲高い声を上げた。指先と舌先で同時に左右のみずみずしい果実のような乳首を愛撫しながら、バルフレアは掴んだ乳房も絞るように揉み上げる。
「んっ……んっ…、…ふ、あぁっ…!」
じんじんと甘い痺れにパンネロは腰を跳ねさせ、慌てて太ももをぎゅっと閉じた。パンネロの蜜壺からは愛液が止めどなく流れていた。もし足を緩めてしまったら、
(そのまま……シーツに滴り落ちてしまいそう……で…)
だが、パンネロは一度閉じた足を緩めた。
(だって…私から言ったんだもん…)
確かに昼間のハントの時、バルフレアは声だけでパンネロに淫らな感覚を呼び起こされたが、それだけではない。昨夜うなされていたこと、パンネロの言葉で見せた無防備な表情。
「ね…ぇ、…バル…フレア……」
ねだると、すぐにパンネロのワガママは叶えられた。口唇が塞がれ、舌が絡んでくる。胸への愛撫はそのままで、背筋を甘い痺れが駆け上がった。バルフレアがさらに顔を押し付けるようにして口づけを深くする。
「んんっ!…ぁ、あ、……」
夢中で口づけに応えながら、パンネロはまだ右側の胸を愛撫しているバルフレアの幅の広い手の甲に自分の小さな手を重ね、そっと下腹の方へ導いた。バルフレアはふっくらと柔らかい腹を辿り、柔らかい茂みのその下にある秘められた場所を手のひらで覆ってやる。それだけでバルフレアの手のひらはパンネロが流した愛液でびっしょりと濡れそぼった。
焦らすように秘裂にそって指を上下させると、パンネロがぷぅ、と膨れて上目遣いに睨んでくる。バルフレアは了解した、という代わりに鼻の頭にチュッと音を立てて口付け、早く触れて欲しいとひくつきながら蜜を溢れさせる淫唇を2本の指で左右に開いた。
「や…ぁっ、ん……っ!」
にちゃ、という音を立て、柔らかい肉でぴっちりと閉じられていたそこが開かれた。バルフレアはその隙間に中指をゆっくりと沈めた。
「っあ、あっ、ぁ……!」
中指を挿し入れた隙間から溢れる愛液に親指を浸すと、自ら包皮を押し上げ、ぷつんと勃ち上がる花芯をぐっと押し込んだ。
「きゃ!あ!あんっ!」
パンネロは悲鳴を上げ、腰をがくがくと跳ねさせた。パンネロの反応にバルフレアも興奮したのか、荒い息のままパンネロの口唇を塞ぐ。
「んんっ!」
くぐもった声を漏らしながらも健気に応えてくるパンネロの舌を受け止め、舌で舌の表面をぞわりと舐める。パンネロは喉を仰け反らせ、悦楽の涙を零しながらバルフレアの背中に爪を立てた。腰がびくびくと痙攣するほどの強い快感と刺激に襲われた状態で、口も塞がれ、呼吸も、快感も逃げ場を失くして身体にどんどん溜まってふくらんでいく。もう弾けてしまう、そんなタイミングで口唇だけが解放された。
「あああっ――!」
普段のパンネロからは想像もつかないような妖艶な声を張り上げ、がっちりとした腕にきつく抱きしめられたままパンネロは身体を仰け反らせ、達した。
「パンネロ…!」
バルフレアも、もう我慢ができないとばかりにパンネロの腿を持ち上げ、その間に身体を割りこませると自らの欲望をまだ絶頂の余韻にひくつく蜜壺に押し入れた。
「あぁっ!あぁっ!バルフレア…!」
その重量にパンネロはバルフレアの身体を押し返さんばかりに、それでも繋がった腰をバルフレアに押し付けるようにして身体を仰け反らせた。その腰をバルフレアの大きな手がむんずと掴み、その熱情のまま強く打ち付けた。
「あっ!いや、ぁぁ、あっ!」
「…いや、か…?」
バルフレアの声も上ずっている。
「あ、ちがっ…う、の…、あぁっ!」
嫌なはずがない。ただ、あまりにも強すぎる快楽に身体が驚いてしまい、思わず「いや」という言葉が飛び出してしまうだけだ。
「バル…フレア…、知ってる…のに、い…じわる……」
「今日は、大人だな、パンネロ。」
行為の最中のちょっとした意地悪な言葉にも、いつも涙目になっていたことを思うと大した進歩だ、とバルフレアはほくそ笑む。
「パンネロ…、もっと…だ…」
首にしがみついていたパンネロが頷いたのが分かった。バルフレアの肩を掴むと、自ら腰を持ち上げ、バルフレアの律動に合わせて腰を揺らす。途端に敏感な肉がバルフレア自身に巻きつき、もっと、とねだってうごめき始めた。迫り上がる快楽に、2人してどんどん溺れていく。バルフレアの逞しいい手がパンネロの細い腰を掴み、引き寄せる。バルフレアの男根が最奥に届くと腰が蕩けるほどの悦楽がそこから湧き上がり、もっと欲しいとパンネロは自ら腰を引き、それをまたバルフレアが惹き寄せる。
「……っあ、バルフレアっ、もう、イッちゃうの…ああ……、あんっ!」
「パンネロ…っ!」
パンネロの柔らかな秘部はバルフレアを優しく包み、絞り上げるようにうねる。パンネロの声と乱れる様がバルフレアを頂上まで押し上げるような流れに拍車をかける。ずん、と重いもどかしい感覚が下半身に集まり、それがどんどん膨らんでいった。
「あ、ちょう…だい…、ね、もう…!」
パンネロのねだる言葉に鳥肌が立った。飛空艇がエア・ポケットに入りこんだ時のような、下腹にしゅっと何かが走った感じがして、バルフレアは身体を大きく震わせ、むき出しの欲望をパンネロの奥に放った。
「あぁ、……っ、……んっ……!」
パンネロはそれを受け止め、つま先までをぴん、と反り返らせ絶頂に達し、何度も小さな身体を痙攣させ、気が遠くなるような陶酔の果てに、ぐったりとベッドに身体を投げ出した。魂までもが溶けるような性交だった。バルフレアはまだ最高の瞬間の余韻に身体を震わせているパンネロを引き寄せ、しっかりと抱きしめた。
そのまま半ば夢を見ているようなぼんやりした感じでパンネロの髪を撫でていると、遠くから歌が聴こえてきた。どこかで聴いたような歌だった。歌に耳を傾けている内に徐々に意識がはっきりとしてきて、それは昨夜夢の中で自分が歌った弔いの歌だと気付いて跳ね起きた。
「…バルフレア?」
パンネロが驚いて目をパチパチとさせ、バルフレアを見上げている。が、すぐに腕をバルフレアの背に回し、自分の方に引き寄せた。
「心配しないで。寝言じゃないよ。私が歌ってたの。」
「…パンネロが?」
「うん。」
友よ、君が逝く道を我が剣で照らそう、パンネロがそう歌うのを、バルフレアは驚きの表情で見つめている。パンネロはそんなバルフレアを見て、バルフレアが心惹かれてやまない、ゆったりと優しい笑顔を見せると、
「それにね、私、簡単に死んじゃったりしないから大丈夫。」
驚きのあまり目を見張るバルフレアに、パンネロはクスクスと笑う。バルフレアを驚かせることができて、それがうれしかったようだ。
「これは帝国のお弔いの歌でしょう?私、知ってるよ。」
「だが…どうして…」
歌のことは知っていたとして、どうして夢の中で死に行くパンネロにその歌を歌ったのが分かったのかが不思議でならない。
「バルフレア、”友よ”って歌うところを”恋人よ”って歌ってたでしょ?」
バルフレアは居心地悪気に口唇の端を歪める。
「…そう…だったか?」
「うん。でもね…びっくりしたけど…怒らないでね?うれしかったの。」
「うれしい?」
「…私のこと、それだけ大切に思ってくれてるんだって。」
その通りなのだが、なんとなくすっきりしない。どちらかというと情けない所を見られたような、例えて言うと裸を見つめられているような居心地の悪さだ。
「お願い、そんな顔をしないで。」
「…すまん…ごめんな。そうだな…パンネロのせいじゃない。」
真実を言い当ててバルフレアを驚かせるつもりが失敗してしまい、しょんぼりしてしまったので、バルフレアは慌ててパンネロに謝る。
「それにしても…古い歌だ。よく知っていたな?」
しかも、決して一般的に知られている歌とは言えない。階級社会であるアルケイディア帝国の中でも上位に属する者しか知らない歌だ。話の流れを変えようとしてそんな話題を振ってみたのだが、それを思い出して嫌な予感がした。
「あのね、この歌、ラーサー様に教えていただいたの。」
その名を聞いた途端、胸の中で噴煙のように嫉妬心が吹き出した。
「ラーサーだと?」
「ヤキモチ妬かないの。」
先手を制され、バルフレアはぐっと言葉に詰まる。
「心配しないで。、何百回でも言ってあげる。バルフレアだけなの。私、知ってるよ。バルフレアが一番私を大切にしてくれることも、私と一緒に私の家族を悼んでくれてることも。」
小さな子供のようにふくれっ面をしているバルフレアに、まるで子供に言い聞かせるように諭す。バルフレアはやれやれ、とため息を吐いた。自分はバルフレアの恋人とファムランの恋人だとパンネロは言っていた。確かにその通りで、恋人として甘えたかと思うと、年上のバルフレアにもまるで母親の様に振る舞う。
「パンネロ。」
バルフレアはパンネロの額に自分のを合わせ、その瞳を覗きこむ。
「何百回言ってもらうより、キスの方が分かりやすいんだが。」
バルフレアが意外にもあっさりと機嫌を直したのに、パンネロは少し驚いたようだが、
「うん…でも、何百回もキスしたら、口が腫れちゃうかも。」
そう答えて、自分で言ったことが自分でおかしかったのか、ふふっと笑い、うれしそうにバルフレアに頬をすり寄せる。パンネロがたまに見せる子供っぽい甘え方はまるで父親に甘える幼子のようだ。パンネロ風に言うなら、バルフレアはパンネロの恋人であり、同時に兄や父親の役目も担っているのだと思う。父との確執を思い出すにつれ、パンネロが自分に父性を求めるのに複雑な気持ちになったりもしたのだが。
(だが…もういい…)
父親に背き、離れた過去は消えない。だが、パンネロを甘やかすにつれ、幸せだった頃を思い出すようにもなって。そんな風な過去との折り合いかたもあるのだなとバルフレアは思ったのだ。
(それが、一緒に居る理由か…)
パンネロにまた何かを教わった気持ちになる。この少女はいったいいくつの隠された部屋を持っているのだろう。その部屋の扉が開く度、バルフレアは癒され、救われた気持ちになるのだ。黙りこんでしまったバルフレアをパンネロが不安げに見つめている。バルフレアはパンネロの鼻をきゅっと摘んで、
「腹が減ったな。」
小さなライバルのことを気にかけるのはもう止そうと思う。
(…少なくとも、皇帝陛下にパパや兄貴は無理だろう…)
自分の考えが我ながらおかしくて笑ってしまう。
「レストランに行くなら、もう一度シャワー浴びないと。」
「姫君をバスルームへ歩いては行かせないさ。」
芝居がかかった言い方に、パンネロはまるで花が咲いたように笑うと、バルフレアの頬にキスをした。
おわり。


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シーフ姿のパンネロが出てきますが、どんな衣装かなあとサンクロンさんにご相談したところ、とっても素敵なシーフ・パンネロのイラストをいただいて、しかも掲載許可をいただきました。サンクロンさん、ありがとうございました!


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