パンネロの笑顔(FF12)

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翌朝。
引き続き、パンネロはバルフレアに銃を教わっている。フランとアーシェは野営地の後片付けをしていて、待っていたヴァンとバッシュも剣の稽古を始めたようだ。
「ヴァン、トリッキーな動きはいいが、モンスター相手にフェイントは通じない。」
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
「足の運びと、姿勢を崩さないことだ。相手によって使い分けるのがいいだろう。」
そんな会話が聞こえてくる。
「何だ、ヴァンは。ヤキモチ卒業か。面白かったのに。」
バルフレアは首を伸ばし、背後で元気にバッシュと稽古をしているヴァンを見てぼやく。
「今度はバルフレアが小父さまにヤキモチ?」
バルフレアは肩をすくめ、パンネロに銃を構えるようにと的を指差す。だが、パンネロは楽しそうにバルフレアを見上げたままだ。
「あのね、昨日、ヴァンに聞かれたの。私がバルフレアのこと、好きなのかって。」
「ヴァンにか?」
「そうよ。」
バルフレアは舌打ちをし、手を腰にあて、パンネロを見下ろす。だが、少女のおしゃべりを止めるために、わざと顔を近づけて雰囲気たっぷりに聞いてみる。
「そりゃ、答えが気になるところだな。」
「ヴァンはね、私にバルフレアを取られて嫌なのか、バルフレアに私を取られて嫌なのかわかんないんですって。」
自分の質問には答えず、言いたいことだけを言ってクスクスと笑うパンネロに、さすがのバルフレアも言葉が出ない。同時にヴァンの精神年齢の幼さに呆れてしまう。
「一応、私のこと、心配してくれたみたい。」
「お嬢ちゃんに悪い虫が付かないようにってか?」
「でもヴァンはバルフレアが助けに来てるってわかってたみたい。」
コロコロと話が変わる。
「確かにヴァンは勘が良い。だが、俺の方でもモンスターの吠える声やお前たちの動きを呼んだだが。」
「でも、来てくれたでしょ?」
そう言われて、バルフレアは言葉に詰まる。
「小父さまでもなく、アーシェやフランでもなくって、バルフレアが来るってヴァンはわかってた。」
「お前たちが俺のせいで飛び出したんだって、総スカン喰らったせいなんだが?」
素直に認めたくなくて、そんな憎まれ口を叩いてみるが、パンネロには通用しない。
「戦闘の息ぴったりで、私の方がヤキモチ妬いちゃいそう。」
バルフレアは少し驚きつつも、これはさっきの意趣返しに丁度よい、と、
「じゃあ、お嬢ちゃんのヤキモチは、俺にヴァンを取られてなのか、ヴァンに俺を取られてなのか、どっちなんだ?」
パンネロは驚いてバルフレア見上げ、パチパチと目を瞬かせた。そうして、その小さな顔いっぱいにあどけない笑みを浮かべ、
「バルフレアが思っているのと、逆かもしれないよ?」
咄嗟にパンネロが口にした言葉の意味がわからず、バルフレアは面食らったような顔をし、そのまま表情が固まってしまう。当然ヴァンだと思って軽い気持ちで口にした意地悪が、思いがけない形で返ってきたからだ。
バルフレアの反応を見て、パンネロが白い歯を見せて笑う。からかうつもりのバルフレアにしてやったりと得意そうだ。
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「お嬢ちゃんには、敵わないな。」
からかったつもりが逆にやられてしまい、バルフレアは素直に認める。気付けばパンネロの笑顔につられ、自分も笑っていた。そして、ああ、そうだ、と気付く。面倒に巻き込まれて、目当てのお宝はなかなか手に入らない。おまけに、捨ててきあはずの過去と向き合わなくてはならない、そんな重苦しいはずの旅なのに、ヴァンのあどけなさやパンネロの笑顔に救われてきたのだ。
(まったく、賑やかで騒々しい……)
でもこんな旅も悪くない、バルフレアはそう思うのだった。
おわり。


ラストがどうしても浮かばなくて、このページはほとんどがサンクロンさんのアイディアです。素敵なラストシーンをありがとうござました!難しい企画でしたが、とても楽しかったです。またやりたいです。
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