ウィンク。(バルフレア✕パンネロ)

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可愛い仕草の嫁と旦那の反応を頑張って文章にしたら絵に描いてもらえるなら頑張る!より ボンヤスーさんのリクエストでバルフレア✕パンネロでウィンク。


バルフレアはヴァンやパンネロとパーティを組むときはどちらかにリーダーをさせる。リーダーにさせて、経験の浅い2人に戦い方を実地で学ばせようとしているのだ。どうしてこんな気持ちをこの2人に持ってしまったのかと我ながら不思議だし、フランからは「子ども好きとは以外ね。」と言われた。だが、旅をするにつれ、年下の2人が可愛く思えてきたのだ。
(ヴァンとはくされ縁だが、お嬢ちゃんには借りがある。)
そんな風に言い聞かせても、教えたことに熱心に耳を傾け、一生懸命に戦う2人はやはり教えがいがあるし、
(2人とも、筋がいい。)
空賊としてはどうかは分からないが、2人ともメキメキと腕を上げている。戦いが終ったら口々に成果を言いに駆けてくる姿を見ると、らしくもないのだが、思わず顔がほころんでしまうのだ。
その日はフランとパンネロでチームを組んだ。無事にモンスターの群れを一掃し、進路を確保できたのあとで、パンネロが嬉しげに駆け寄ってくる。
「バルフレア、さっきはありがとう!」
息を弾ませ、頬を紅潮させている。
「お嬢ちゃんを何か喜ばせるようなことをしたかな?」
そう言うと、パンネロはクスクスと笑う。
「さっき“ブレイブ”をかけてくれたでしょう?疲れてもう剣が持ち上がらないと思ったけど、おかげで最後まで頑張れたの。」
頑張り屋さんのパンネロだが、やはり体力はバルフレアやヴィエラの生え抜きの戦士であるフランには太刀打ちできない。それを見ていたバルフレアが、疲れて、腕が上がらなくなっているパンネロに、補助魔法をかけてやったのだ。
「頑張ったご褒美だ。」
バルフレアはさっきのモンスターが落としたきれいな鳥の羽根をパンネロに手渡した。
「わ、きれい!」
「売っても大したカネにはならないが、な。」
バルフレアはそう言って片目をつぶってみせる。小さな身体で頑張る少女がいたいけなのと、
(……お嬢ちゃんには借りがあるからな。)
自分のせいでならず者たちに拐かされ、怖い思いをさせた。だからこれくらいの贔屓は構わないだろう、そう思ってのことだ。
だが、パンネロは両手で羽根を握りしめ、じっとバルフレアを見上げている。と、思いきや、いきなりぎゅっと両目を閉じ、またぱっちりと開いて見せた。パンネロの意図がわからず、眉を顰め、パンネロを見下ろすバルフレアに、パンネロは不満そうに首をかしげる。
「あ〜ん…やっぱりできない……」
なんのことだ?と、訝しんでいたバルフレアだが、すぐに腑に落ちたようで、
「こいつのことか?」
と、ウィンクをしてみせる。
「そう!バルフレアみたいに、スマートにお礼を言うときに、そんな風にしてみたいんだけど。」
バルフレアは吹き出してしまう。が、ふと真面目な表情になると、
「いいか、お嬢ちゃん。たとえ覚えても、むやみやたらとそれを使うもんじゃない。」
バルフレアはパンネロの武器を持ってやると、先に立って歩き始めた。フランがその横に静かに寄り添う。パンネロは背の高い2人に遅れまいと、時おりちょこちょこと早足になる。バルフレアはそれに気付くと、すぐにパンネロに歩調を合わせた。
「どうして?さっきバルフレアがウィンクした時、チャーミングだったわ。大人っぽくて、余裕な感じ。」
フランが無言でバルフレアの顔を見る。バルフレアは気まずげに咳払いを1つし、
「女がそれをするときは、相手を誘っている時だ。」
パンネロは驚いてフランを見上げる。
「マナー違反、というとわけではないけど、誤解を受けそうね。」
そう言われて、パンネロは手に持った羽根をくるくると回しながら、そっかぁ…と口の中で呟いた。
「でも、ずるいな。男の人はいいの?」
フランがまたもや、ちらりとバルフレアを見た。あなたの責任よ、ちゃんと説明してあげて、言葉にせずともそう思っていることがわかった。軽い気持ちでのウィンクが、少し面倒なことになってしまい、バルフレアはどう説明したものかと宙をにらむ。
「あ!わかった!」
と、その時パンネロが声を上げた。
「バルフレア、私を口説いてたの?」
バルフレアは絶句してしまい、フランがくすりと笑う。
「ごめんなさい、冗談なの!」
パンネロは羽根を持ったまま、何が楽しいのかくるくると踊るようにまわると、バルフレアとフランをうれしそうに見上げる。
「バルフレアのはね、“良くやったな”ってそういう意味でしょ?」
「話が早くて助かる。」
だが、何故そんなにはしゃいでいるのだろう?
「あのね、ミゲロさんのお店を手伝ってるときに、よくウィンクされたの。私、モテてたのかな?」
「そうかもしれないわね。」
「まぁ、かわいがられただろうさ、パンネロならな。」
その時のことを思い出すのか、パンネロはうれしそうにフフッと笑う。
「でもね、ウィンクするお客さんって、年配の人が多かったの!」
バルフレアはパンネロが何を言ってるのかわからず、思わず足を止め、パンネロの顔をまじまじと見つけ、やがて何を言っているのかをようやく理解し、
「こら!パンネロ!」
パンネロはきゃあ!と声を上げて駈け出し、バルフレアはそれを追いかける。フランはそんな2人をながめ、けっこう楽しそうじゃないの、と微笑ましく見守っていたのだった。
おわり。
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ボンヤスキーさん(@synabon_123 )はもうイラストを描いていただいてます!
https://twitter.com/synabon_123/status/701652536105668612/photo/1