異世界の恋人。(DDFF/R18)

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行為の後乱れた衣服を整えてから、さぁどう説教してやるかとフリオニールを見据えた所で、その破廉恥な傷跡が目に飛び込んで来てライトニングは目眩を覚えた。
それも一カ所ではない。
あちこちに自分が噛み付いた跡が残っている。
「…?どうしたんだ…?」
ついさっきの自分の乱れた様が生々しく思い出されて直視出来ない。
それをまたどういう風に勘違いしたのか、フリオは優しくライトニングの背中を撫でながら、
「これくらい大した事はない。」
予想通りライトニングの気がとがめているのだろうと好意的に解釈してくれて、爽やかに言ってのけるのだ。
それがまたいたたまれない。
恥ずかしさと怒りとで視界がぐるぐると回り、言うべき言葉が見つからないライトニングをフリオニールは優しく抱きしめ、
「それより、さっきは無理をさせてしまった…すまん…」
謝られたところでこの怒りは収まらない。
いや怒りよりも、あんな風に乱されたのが恥ずかしくてたまらないのだ。
それを見せつけ、嘲笑しているかの様なあの傷跡。
「でも、不思議だ…この世界に来てライトと出会って…色んな欲が出て来た。」
またぞろ何かを言い出したフリオニールに、ライトニングの怒りが一瞬そがれる。
「野ばらの咲く世界…じゃないのか?」
「もちろん、それは変わらない。野ばらの咲く世界…仲間の無事と…それさえ叶えば良いと思っていた。」
フリオニールは素直に認める。
「でも、ライトと一緒に居ると、朝まで一緒に居たいととか、もっと…その…色々……」
口ごもって顔を真っ赤にし、最後には口をへの字に結んでそっぽを向いてしまった。
その様にライトニングの怒りはあっさりと失速し、それよりも「フリオニールのしたいこと」に興味が湧いてくる。
「例えばどんな事だ?」
「その……怒らないか?」
「いいから、言ってみろ。」
ちょっと語気を強めると、フリオニールはさんざん思い悩んだ末、
「ライトの……裸が見てみたい…」
いつも敵の目を盗み味方の目を盗み、岩陰や物陰で衣服をくつろげて慌ただしく肌を重ねるだけなのだ。
ライトニングの戦場をしなやかに跳躍する足とか、まだ見た事がない秘められた場所を見てみたいと思うのは当然の事だった。
「なんだ、そんな事か。」
「ここは戦場だ。」「何を考えている。」等々、どんなキビシイお言葉が返って来るのかと戦々兢々だったフリオニール、予想に反して淡白な返事に却って慌てふためいてしまう。
「俺にとってはそんな事じゃ……ライト?」
ライトニングはそんなフリオニールに構う事なく立ち上がると、彼のマントの留め金を外して自らの肩に掛けた。
そうして、フリオニールに背を向けると、マントの中でもぞもぞと身体をくねらせる。
何をしているのかと呆気にとられていると、ガチャリ、と音がして肩甲が地面に落ちた。
手袋、ベルト、武器を収めているホルダーがその後に続く。
フリオニールは慌てて立ち上がり、ライトニングの肩を掴んだ。
「ライト…!一体何をしてるんだ?」
「お前が見たいと言ったからだ。」
話している間に、今度は袖のない白いジャケットが脱ぎ捨てられて地面に落ちた。
「でも…っ!誰かに見られたら!てっ…敵に!」
しどろもどろになりつつ、なんとか阻止しようとライトニングをこちらを向かせる。
すると、既にインナーのニットが脱ぎ捨てられた後だった様で、覆われたマントの隙間から鎖骨と胸の谷間が覗いている。
一瞬にしてフリオニールの全身が凍り付いた。
「敵ならお前が追い払えば良いだろう。それとも、いつも“守る”と言っているのは口だけか?」
「そ…っ…そうだなっ!」
すっかり取り乱してしまったフリオニールはライトニングの言う通り、背中を向けると律儀に剣を抜いてあちこちに視線をやる。
しかし、後ろで金具が擦れる音や衣擦れの音がして、とても冷静では居られない。
頭がのぼせて倒れそうになる身体を、恋人のヌードが見たいがために必死で踏ん張る。
1秒が100秒に感じられた。
「フリオニール。」
呼ばれて、恐る恐る振り返ると、すぐ後ろにライトニングの顔があった。
いつもと変わらないその表情に、さっきのは夢だったのか、それとも冗談だったのかとライトニングの後ろに目をやると、脱ぎ捨てられた服や装備が足下に纏められていた。
「ラ、ラ、ラ、ラ、ライト!」
「どうした、何を狼狽えている?」
「お…俺、やっぱり…無理だ。その…そんな、何をしでかすか…」
「落ち着け!」
凛とした声に、フリオは漸く我に返る。
見ると、ライトニングの唇が震えている。
その様子に、フリオニールは胸を衝かれた。
「…すまない…。」
必死で強がってはいるが、ライトニングは相当無理をしているようだ。
俯いてしまったライトニングを優しく引き寄せ、額と額を合わせてその頬を両手で包む。
ライトニングはきゅっと唇を噛み締めると、ゆっくりとマントの前をはだけ、地面に落とした。
フリオニールは息を飲んだ。
半歩だけ下がって、その美しい身体を余す事無く眺める。
どこもかしこも、柔らかい色と曲線で構成された身体だった。
ほっそりとした首と肩、少し下がった所にある乳房は見事に真上を向いており、その頂にある淡い色の突起が艶かしい。
ウエストは見事にくびれており、バストラインとのコントラストがくっきりとしたラインを浮かび上がらせている。
腰には無駄な肉は一切ついておらず、腹はふんわりとした脂肪に覆われ、中央には可愛らしく窪んだ臍がある。
そして、その下には柔らかそうな体毛があり、フリオニールの好きなすらりとした足、可憐なかたちをした膝小僧、足の指はきゅっと纏まり…
造形の美しさだけでなく、肌も透き通る様に美しかった。
暗がりの中で、ふうわりと光る。
ところどころ傷跡があったが、それすらもフリオニールにとっては飾りでしかない。
「もう…戻らないと。」
ライトニングの声にフリオニールは静かに頷いて、落ちていたマントを広いってライトニングを包んでやる。
彼女の裸に欲情してしまったらどうしよう、などと思い悩んだが、徒労に終わった。
それ以上に深い感動に突き動かされ、ライトニングの事をますます愛おしく思うようになった。
そうして、今まで以上に彼女を離したくないと強く思った。
(ずっと一緒に居られたら…)
胸が締め付けられた。
だが、ここで悲観的な考えに捕われてはいけないと、自分を叱咤し、衣服を身に着けているライトニングの背中に声を掛けた。
「ライト。」
ライトニングが振り返る。
「ありがとう。」
ライトニングはふっと笑みを浮かべると、何も言わずに落ちていたジャケットを羽織った。
フリオニールはまた辺りを警戒し、ライトニングの着替えが終わるのを待った。
「もう良いぞ。」
ライトニングはフリオニールにマントを手渡した。
フリオニールはそれを受け取って身に着けると、ライトニングの肩を抱いた。
二人は黙ったまま味方の居る陣屋に向かって歩き出した。
お互いを想う気持ちが何も言わなくても通じ合って、言葉は必要ないと思えた。
いつまで一緒に居られるかは分からないが、その間は変わらず想い続けようと強く誓う。
美しい恋人も同じ事を感じていたのか、フリオニールを見上げるとそっと腰に手を回し、甘える様にその胸に身体を預けた。

おわり。

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