カリスマ恋愛占い師フランと開運アドバイザー・リノア(FFRK)

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  • メインはフリオニール✕ライトニングです。
  • ヴァンネロ、クラティ、ほんのちょっとジタガネ
  • その他の登場人物は今のところフラン、リノア、リュックです。
  • リノアは次回の更新で登場します。

ティファとライトニングが、ダンジョンから戻ってくると、女性陣がキャッキャと何やら騒がしい。
「なんだ?」
さぁ、とティファも首をかしげる。泣きはらして赤くなった目をこすりながら、どこか晴れ晴れとしている者や、頬を赤く染め、興奮した口調でおしゃべりをしている者たちもいる。
「…カオスだな。」
ティファが1番近くにいたリュックを捕まえるて聞いてみる。
「ねぇ、いったいみんな何をそわそわしているの?」
「すっごいんだ!フランとね、リノア!」
言われてみると、騒ぎの中心にいるのはフランとリノアである。
「すごいって何が?」
「占いだよ!」
「占い…?」
「もうね、フランスとリノア!すっごいんだよ!なんでもいい当てちゃう!」
リュックが言っていることが意味がわからず、ティファとライトニングは顔を見合わせた。
「例えばさ、ガーネットがジタン。ほら、お姫様だから、いろいろ大変でしょ?それをちょっと、まぁ愚痴っていうかさ、ちょっと悩んでるの、みたいに言ったらさ、フランがちょっと話しかけて。そしたら、ガーネット、途中から泣き出しちゃって。」
「泣き出した?」
「どうして?」
さあ?と、リュックは肩をすくめる。
「こういうの、あんまり聞かないほうがいいでしょ?だから、アタシは何を話したかまでは聞いてないんだ。」
「でも、泣いちゃうのって…」
「穏やかではないな。」
リュックは慌てて顔の前で手を振る。
「違う違う!なんか、すっごく励ましてもらったみたいでさ。“私、やっぱりジタンが……彼を信じます。”みたいなこと言っててさー」
さっぱりわからない、とティファとライトニングは思わず顔をしかめてしまう。
今、フランに話を聞いているのはパンネロだ。一言二言、言葉を交わし、不意にフランがパネルを優しく抱きしめた。その後、パンネロが礼を言って、興奮した様子でティファ達が話しているところに駆けてくる。
「どうだった?」
リュックが手を上げると、パンネロはそこにハイタッチをする。
「本当にすごかったの!」
「あ〜やっぱり?」
2人は手を取って、今にも踊り出しそうなテンションだ。
「ずっと一緒に旅をしている時も、とても頼りになるお姉さんだったけれども、やっぱり恥ずかしくてなかなか聞けなかったんだ!」
「聞けなかったって何のことだ?」
ライトニングがたずねる。
「ヴァンのことですよ。」
興奮した口調のまま、パンネロが答えた。
「私たち、幼馴染だから…なかなか恋人とか、そんな感じになれないの。ほら、ヴァンがあんな感じでしょ?だから、どうすればいいの?て聞いてみたの。」
これはなかなかの難問である。果たしてフランがどういうふうに答えたのか、ティファもライトニングもものスゴく興味があった。
「それで、フランは何て教えてくれたの?」
ティファが優しく尋ねる。
「何も言わないでじっと私を見ていたの。でもね、突然、ぎゅっ!てしてくれて!私それですごく元気が出たの!きっと、心配しなくても大丈夫ってことだと思うの!」
「それはフランも無理だと言っているんじゃないか?」
言ってはいけないことを、ライトニングが思わず言ってしまう。ティファはライトニングを肘で軽く小突いて、
「でも、とにかくパンネロは元気になったのね?」
「うん!私も、早くリノアにおまじないをしてもらわないと!」
「おまじない…?」
恋の悩み相談とか、占いとか、そういう女の子女の子した雰囲気が苦手なライトニングが眉をひそめた。
「おまじないって、リノアがするの?」
「そうだよ。」
変わってリュックが答える。
「リノアってさ、あの子がいた世界ですっごい魔女だったんだって!」
「その力を生かして、みんなの恋がうまくいくおまじないをしてくれるの!」
ライトニングは、とうとう大きなため息をつき、ティファは、まぁまぁとライトニングの肩を叩く。
「ティファもライトニングもさ、行って話を聞いてもらいなよ!」
「わ、私はいいわよ別に……」
「遠慮する。」
ティファは照れながら断り、ライトニングはそっけない。
「あ!ひょっとして、疑ってるんでしょ!」
「べ、別にそういうわけじゃ……」
「ああ、その通りだ。」
ティファもライトニングも、だいたいのからくりが分かってきたのだ。神秘的な雰囲気をもつヴィエラであるフランが、落ち着いた口調で少女たちの話に耳を傾け、ほんの少しアドバイスをするだけで、年頃の女の子たちはそれだけで心酔しきってしまうのだろう。
「ライト!」
別に悪いことではない。戦士でありながら、物静かで博識な彼女に、みんな甘えて背中を押してもらっている、それだけのことなのだ。年若い少女たちが傾倒してしまうのもわかる。だから、ティファは言葉を選んでいたのだ。封印された記憶を取り戻す戦いの合間に、それくらいの息抜きがあっても構わないではないか。
だが、ライトニングは自分にも他人にも厳しい。誰よりも仲間を心配するが故に、厳しいことを言ってしまうのだ。ティファはそれをよく知っている。なので、ティファはたしなめようとしたのだ。
「じゃさ、実際に試してみたいいじゃん!」
「はぁ?」
「本当はさ、ライトも興味あったりして!」
ライトニングは思わず口ごもってしまう。リュックはニッコリ笑ってライトニングを見上げる。
「自分で体験してみなきゃ、わかんないよ。アタシさ、みんなが元気になるの、見るの好きだな。だから、フランもリノアもすごいって思うんだ。」
そう言われて、ティファは笑う。
「リュックらしいわね。」
リュックはパチン、と片目をつぶって見せる。
「ねぇ、ライト。私が話しを聞いてもらうわ。あなたは横でそれを見てればいいでしょ?」
ティファも少しばかり興味を持ったようだ。
「なんだ、私はティファとチョコボ頭の色恋沙汰に興味はないぞ。」
ぷい、とそっぽを向いてしまったライトニングは、ティファが耳元で、
「ちょっと興味あるの。でも、ああ言っちゃった手前、ちょっと恥ずかしいでしょ?だから、一緒に来て欲しいの。」
リュックとパンネロが顔を見合わせてふふっと笑う。ティファはライトニングを誘導するのが本当にうまい。リュックはティファの背中を押し、フランのほうに押しやる。ここまでお膳立てされてしまうとライトニングも断りにくい。そして、全く興味がないわけではないので、とにかくフランの話を聞いてみることにしたのだった。
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「大盛況ね、フラン。」
「お帰りなさい。」
フランは、戦いから帰ってきたばかりの2人をいたわる言葉をかけた。
「どうして占いなんかしているんだ?」
単刀直入にライトニングが尋ねると、フランはさらりと、
「そんなつもりはないわ。」
ライトニングが目を丸くするのを、フランは面白そうに眺めている。
「ちょっとした小さな不安は誰にでもあるでしょう?私はそれに答えただけ。当たり前のこと言っているだけで、特別な事は何もしていないの。」
やはり、女の子たちはミステリアスで、大人の女性のフランに、カリスマ占い師のように勝手に熱中しているようだ。
「何も言わなくていいの。黙って、耳を傾けるだけ。」
「あ、それ、わかるな。」
ティファはクラウドのことを思い出す。口少ないクラウドの代わりに、2人の時は自分がたくさん話している気がする。
「まったく、女ってやつは……」
「誰でも、答えは自分の中に持っているわ。あなたたちもね。」
低く穏やかな声でそう言われると、2人とも心の水面に小さなさざなみが起こったような気がした。ティファはそれをごまかすかのように、
「私は別に……」
フランは何も言わず、赤い瞳でじっとティファの顔を見つめる。じっとだ。途端にティファは落ち着きをなくしてしまった。
「た、確かにクラウドは時々、何かに迷ったり、すぐ考え過ぎちゃったりするけども…それは、前に進むために彼なりに一生懸命考えていて、それで、私は、ちゃんとそれはわかってあげている……つもりだし……」
ライトニングは呆気にとられてティファを見つめる。ついさっき、種明かしをされたばかりだと言うのにだ。聞かれてもいないのに、自分から不安や悩みを打ち明けているのだ。
「本当に、本当に辛い目にあったからクラウドは……だから、私は彼が支えになりたいの。それにね、私もいっぱいクラウドに支えてもらっていて……」
「でも、あなたは不安なのね。」
そう言うと、ティファはぐっと言葉に詰まった。まるで胸が塞がれて息ができなくなったかのように、ライトニングには映った。目元にはうっすらと涙すら浮かんでいるではないか。
「私たち、とても辛い戦いを一緒に乗り越えたの。」
「あなた達の絆を疑ってるんじゃないわ。それでも不安になってしまう、それを誰にも言えない、あなたが心配なのよ。」
「フラン……」
「彼なら大丈夫。」
“フランは男を見る目はあるぜ”と、キザったらしい相棒がそう言っていたのを、ライトニングは思い出した。
「信じるの。」
「フラン……」
「不安に思ってもいいの。でも、信じる心を忘れないで。」
堰を切ったかのように、ティファの瞳から後から後から涙が溢れてきた。ライトニングはひたすら驚いてティファを見つめる。
(一体……何が起こったのだ?)
まだ幼さの残るパンネロや他の少女たち、世間を知らないお姫さまたちならまだ分かる。だが、自分と同年代で、同志として頼りにていたティファまでが、
(こうも……あっけなく……)
「ライト……」
ティファは涙を拭い、そして晴れ晴れとした笑顔をライトニングに向けた。
「驚かせてごめんね!不安に思ってること、全部話したら、なんだかスッキリしちゃって!」
ライトニングはティファを見て、そしてフランを見た。フランはほんの少し、首を傾げるだけで何も言わない。私は何もしていないわ、そう言うのがライトニングはよくわかっていた。
「……わかってる。」
でも!である。しかし!である。
「ライト、あなた、ミンウとパーティを組んだことは?」
「……ある。」
フランが言わんとすることはすぐにわかった。フリオニールと同じ世界から来た白魔道士。強行突破を唱えるライトニングを説き伏せたあの男だ。エキゾチックな民族衣装風な導師服、褐色の肌、口元を覆うマスク。自分の主張を曲げない主義のライトニングだが、彼だけは別格だった。
(そう言えば、あいつも口数が少なかったな……)
「つまり、雰囲気とか、イメージとか……」
そう呟いて、ライトニングは視線を感じて顔を上げた。フランがじっと自分を見つめているのだ。表情はほとんど変わらない。だが、口元にほんの少しだけ笑みを浮かべている。まるで胸元を広げられ、心をむき出しにされ、さらには虫眼鏡で細部まで見通されたような居心地の悪さを感じた。
「わ、私は何も話さないぞ。」
フランは、ええ、わかってるわ、という風に頷く。別に、食い入るようにライトニングを見ているわけではない。端然と、目の前に立っているライトニングを、ただ見ているだけだ。それ以上でもそれ以下でもない。
「そうね。」
フランはそう言って、左手の平で自分の右肘を支え、右手を頬に添え、じっとライトニングを見る。ライトニングは思わず後ずさりする。見るな、思わずそう叫びたくなる。
「ライト?」
そわそわしだしたライトニングに、ティファが訝しげに声をかける。
「わ、忘れていた。私は…デシに、召喚の礼を言わなければならない。」
「そう?」
ぎこちなくそう言って、慌ただしくその場を離れたライトニングの後ろ姿を、ティファは不思議そうに見送った。
「ライト、どうしちゃったの?」
ライトニングの様子がおかしくて、リュックも怪訝な顔をしてやって来る。
「なんでもないわ。」
フランは事も無げにさらりと言う。
「リュック、私は占い師でも、クリアボヤンスでもないのよ。」
「ごめんごめん。でも、みんなを元気にしてるでしょ?」
フランは相変わらず表情を変えず、少し考えこむ。
「フラン?」
「そうね、でも、一つ予言をしましょうか。」
「なになに?」
リュックとティファが興味津々で身を乗り出す。
「ライトニングはね、きっとまた、私のところに来るわ。」
そんな謎めいた言葉を残し、フランは占い稼業はここまでだ、と2人に背を向けた。が、言い残したことをあったことを思い出し、
「でもね、リノアのおまじないは本物よ。」
「そうなの?」
「ええ、あなたも、おまじないをかけてもらえばわかるわ。」
そう言い残し、フランはその場を立ち去ってしまった。残されたリュックとティファは、呆然とその後姿を見送ったのだった。
つづきます。

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