恋人の呼び方(FFRK/FF7/DdFF)

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

〈目次〉

物語の導入のあと、フリオニール×ライトニングのパートをスキップするリンクがあります。スキップしてもストーリーの進行に支障はないのでクラウド×ティファのパートだけ読みたい人はスキップしてください。


「ねぇ、いつもフリオニールのこと、なんて呼んでるの?」
ティファがその話を切り出したのは軽い世間話のつもりだった。堅物のライトニングだが、恋人の話をするときは柔らかい表情になっているので、軽い気持ちで聞いてみたのが発端だ。
「なんだ、急に?」
「ライトは…みんなにライトって呼ばれてるでしょう?ちょっと長い名前を短くして呼ぶってよくある話だけど、恋人同士だと2人だけの愛称で呼んだりするから、そういうの、あるのかな?って。」
「わっ…私たちは……そんな別に……」
そんな風に話を振ってみると、わかりやすくライトニングが動揺した。しかも頬が赤くなったりしてかわいかったものだから、ティファはちょっとからかってみたくなる。
「う〜ん……フリオニールだと……短くしてフリオかな。私たち、誰もそんな風に呼ばないけど、ライトだけそんな風に呼んだら特別じゃない?」
ライトニングはフイ、と横を向いてしまった。それだけでもう、2人だけの時は「フリオ」と呼んでいるのがバレバレだ。しかもライトニングときたら眉ひとつ動かさないくせに、唇はギュッと結んでいるのだ。必死に動揺を抑えようとしているが、彼女がまとっている空気が振動していて伝わってくる感じだ。その必死さが微笑ましい。でも、それを言ってしまうと、この頼りになる友人はきっとヘソを曲げてしまうだろう。そこでティファは、
「そういうのっていいよね。」
といった風に軽く話を流し、話題を逸らすために別の話を振ることにした。どこで聞いたかは思い出せないのだが、たとえば、友人に「私の◯◯(恋人の名前)が〜」というとき、「うちのダァが〜」という言い方をする人たちが居るとかなんとか。
「なんだ、それは?」
「だから……自分が付き合ってる人の話をするときに、“うちのダァが…”みたいな言い方をするって話。」
「誰が?」
「…さぁ?そこまでは……」
「じゃあティファは“私のクラウドが”という場合、うちの……なんだ、ダァ、か?と言うのか?」
「やめてライト、それとっても恥ずかしい。」
今度はティファが赤くなる。「私のクラウドが…」なんて、とてもではないが人前では言えないのに、ライトニングが真面目な顔をして言うものだから、余計に恥ずかしい。
「私、みんなの前でもライトの前でも……“私のクラウド”なんて言わないわよ。」
言った先からティファがますます顔を赤くするのを見て、ライトニングは、ふむ、と頷き、
「要は……惚気けてる…ということか。」
「惚気けてるわけじゃないけど……」
もごもごと口の中で何か言い訳めいたことを呟くティファを横目に、漸く納得がいったライトニング。だが、すぐにしかめっ面になる。
「だが、私はあまり、そう言い方は好きではないな。」
「ライト、眉間にしわ。」
ライトニングは慌てて自分の眉間を見ようとして瞳を寄せ、そんなことができるわけがないとすぐに気付いて、気まずそうに額にかかる前髪を直してごまかした。
「まぁ…私もあまりそういう言い方は……ね、でも、そういう人も居るってお話!」
「……ティファは、どうなんだ?」
「だから私たちはそんな呼び方……」
「そうではなくて、2人だけで呼ぶ、呼び方だ。」
「私たちはないわ。」
ティファはあっさりと言い切る。
「だって、私たちの名前、途中で切ったりできないでしょ。」
「言われてみればそうか……」
そう言ったきり、ライトニングは何やら考えこんでしまっている。
「ライトったら、そんなに深刻に悩まないで。」
「……私は別に……」
「じゃあ、何を真面目な顔をして考えてるの?」
念のために確認したのは、ライトニングが時おり軽い話題を真正面から受け取りすぎて、話がおかしな方向に進んでしまうことがあるからだ。
(そうならないためにも、ここで方向修正をしておかないと……)
ティファの追求にライトニングも堪忍したのか、
「いや……私は“ダァ”とか、そういう風に呼ぶつもりもないから安心しろ。」
「別に呼んでもいいけど。」
「呼ばない!!」
「はいはい。それで?」
「その……呼びはしないが…私は、きっと今、ティファが感じてるように…堅苦しい…ところがあるから……」
歯切れの悪い話し方だが、ここからが肝心、とティファは心して耳を傾ける。
「冗談も得意ではない……フリオニールは私を笑わせてくれたり……雰囲気を和ませたりしてくれるから……息苦しく思ってないかとか、私も……その…何か……」
「いいわね。好きって気持ちにあぐらをかくんじゃなくって、自分でも努力するのって。」
「かと言って、“ダァ”は困るが……」
尚も難しい顔で取るに足らないことを一生懸命考えるライトニング。ティファは思わず口元がゆるんでしまう。
「思いつかないなら、“ダァ”でもいいんじゃない?さ、そろそろフリオニール達がダンジョンから帰ってくるわ。」
ティファは話を切り上げ、まだ何か言いたげなライトニングの背中を押した。

1 2 3