お喋りしないで。(FF12/R18)

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ぼんやりとしていた意識が少しずつはっきりとしてくる。バルフレアが自分をしっかりと抱きしめていてくれるのに、パンネロはうれしくて、たくましい胸に頬ずりをした。
「……最近、あまり、話さないね……」
突然の言葉にバルフレアはパンネロの髪を撫でていた手を一瞬止めたが、すぐにセックスをしてる時のことだと思い当たったらしく、「ああ。」と1人納得したように呟いた。
「そう…だな……」
「あのね、そういうのがダメとか、嫌じゃないの。」
「そうなのか?」
「うん…だって…恥ずかしいこと言ったりとか…恥ずかしいカッコとか……しないから……」
バルフレアは手を止めず、パンネロの顔を覗き込んだ。表情が優しく、目を細めてパンネロを見つめているのに安心して、パンネロは言葉を続けた。普段饒舌なバルフレアが無口になると落ち着かない。パンネロは自分が何を言いたいのかがわからなくなってくる。
「うん?」
「どっちが好き、とかじゃなくってどっちも大好きなの…でも…」
「もう試さなくていいってわかったからさ。」
混乱気味のパンネロの意図を汲んで、バルフレアが端的に答えた。
「……試す?何を?」
「お前がどこまで…俺を許してくれるとか、受け入れてくれるとか、我慢してくれるとか、かな。」
パンネロはよくわからない、と瞳をぱちぱちと瞬かせた。
「お前は俺のもので、俺はお前のものだって、やっとわかったってことさ。だから余計なことをくっちゃべる必要はもうないって気付いたんだ。」
「安心したの?」
「そんなところだ。」
ずっと前から自分はバルフレアのもので、その逆も然り、そんな風に思っていたのだが、
(バルフレアは……違ったのかな……)
「いつもは自信たっぷりだからわからないよ。」
「そうかな?」
「なのに、突然子供みたいに甘えて。」
額と額をくっつけて、くすくすと笑う。
「パンネロも、そうだろ?」
「試すってこと?甘えるってこと?」
「そうじゃない。あまり、声を出さなくなった。」
「だってそれは……」
顔と顔が近いので、今はバルフレアがニヤニヤと笑っているのがはっきりとわかる。
「もう、知ってるくせに……」
知らず、頬がぷぅと膨れていたのか、バルフレアが指先で頬をくすぐる。
「それより、いいことを聞いたな。」
「なぁに?」
「“恥ずかしいこと言われたり、恥ずかしいカッコさせられたり”ってな。好きだったとは知らなかったな。」
パンネロはそんなこと言ったかな、と首を傾げ、そして“どっちも好き”と言ってしまったことを思い出した。
「あ、違うの!それは……」
「大好きなんだろ?」
言い終わる前に、あっという間にバルフレアの体に組み敷かれていた。
「だめ…もう、バルフレア……!」
「奇遇だな、俺も両方好きなんだ。」
首筋を舌が這い、パンネロは「きゃっ」と小さく悲鳴を上げた。
「かわいい声だ。下半身にくる。」
細い両手首を押さえ、ベッドに押し付けられた。舌が首筋を這い、耳たぶをかじられた。
「やっ!もう…バルフレア…!」
必死で体の下から逃れようともがいていると、バルフレアが喉を鳴らして笑っているのが聞こえてきた。からかわれたのだ、そう思うと、カーッと頭に血が上り、頬が赤くなった。
「…もうっ!また!からかって!!」
怒るパンネロに構わず、バルフレアはまたパンネロの胸に顔を埋め、しがみついた。
「そうやって甘えてもダメ!」
「頭を撫でてくれ。」
「知らない!」
パンネロはそう言うとバルフレアの耳たぶを引っ張った。「怒っているの!」というアピールだ。
「ひょっとして、続きをした方が良かったかな?」
パンネロは今度は両方の耳たぶを引っ張る。
「痛い。」
「本当は大して痛くないんでしょ?」
パンネロは両耳から手を離し、言われるまま胸に抱えているバルフレアの頭を撫でてやる。
「お前が変わらないと、安心する。」
パンネロは答えない。何を言っているのだろうと呆れたように小さくため息をつくだけだ。どうでもいいことには饒舌なのに、大切なことはこうやって分かりにくくして、煙に巻くような言い方をして。
「バルフレアだってそうでしょ?言葉数が減ったと思ったら、また私をからかって喜んで。」
「俺がいつお前をからかったりした?」
パンネロは今度は小さな拳でバルフレアの頭をぽかぽかと叩く。バルフレアはパンネロの手を止めるため、胸に顔をぐりぐりと押し付ける。
「バルフレア!」
大きな子供みたいな甘えん坊な夫にごまかされるものか、とパンネロは強い口調でその名前を呼ぶ。と、バルフレアは漸く顔を上げた。
「ごめん。」
「うん。」
「俺がからかって、お前が“ダメ”って怒ると安心するんだ。」
「……いつものパターンでしょ?」
「だからいいんだ。」
なんとなくではあるが、パンネロにもバルフレアが言わんとすることがわかってきた。
「バルフレア、変わったよ。」
「前より甘えん坊になったって言いたいんだろ?」
言い当てられて、パンネロが驚く。
「当たり前だ。言っただろ?お前は俺のもので、俺はお前のものだ。少々甘えたところで、どうってことないさ。」
なんて勝手な言い草だろう、どう反論しようかパンネロが考えたほんの少しの時間でバルフレアは眠りに落ちたようだ。すぅすぅと穏やかな寝息が聞こえてくる。
「……もう。」
好き放題して、先に眠ってしまったバルフレアにパンネロは少し物足りなさを感じてしまう。「ひょっとして、続きをした方が良かったかな?」というバルフレアの言葉を思い出し、慌てて頭を横に振った。
ここは薄暗くて暖かい場所だとパンネロは思う。安心して、くつろげる。怖いことも不安もない。バルフレアが子供みたいになるのもわかる気がする。
改めて胸の中のバルフレアを見る。どこか満足気に口元を緩め、静かに肩が上下しているのを見ると、愛おしさが胸に染み渡るようだ。いつも上げている前髪が額を覆っていて、ほんの少しだけウェーブがかかっている。閉じた瞳の縁の長いまつ毛、すっと通った鼻筋。寝顔はずるいとパンネロは思う。あどけない。
「だから、許しちゃうのかな。」
バルフレアを起こさないようにそっと体を離し、少し下へと移動すると、パンネロはたくましい胸の中に飛び込んだ。バルフレアは一瞬だけ薄目を開け、うれしそうに笑う。パンネロをしっかりと自分の胸に抱え、そうしてバルフレアはまた目を閉じた。
おわり。


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