おはよう。(FF7/R18)

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二人だけで初めて迎えた朝、先に目を覚ましたのはティファだった。
(朝…なの?)
温かくて、ひどく安らいだ気持ち。
火にかけたスープの表面にぷくぷくと小さな泡が立つようなそんな気分だ。
ティファは胸元をシーツで隠し、自分をしっかりと抱きしめているクラウドの身体の中からそっと抜けだした。
まだ眠るクラウドの寝顔が愛おしい。
ふとその唇に目が留まる。
昨夜、ティファの唇だけでなく身体中にキスをした唇だ。
明るい陽の光の下だと、それもなんだか夢のようだ。
(夢…じゃないよね。)
ティファはそっとクラウドの唇を指でなぞってみた。
(ふふ、柔らかい…)
柔らかくて、温かい。
ティファはそっと身体を屈め、その唇に触れてみた。
ちゅっ…と小さく唇と唇が触れる音がした。
その時、クラウドがもぞもぞと身動いだ。
そして、みるみるうちに顔がどんどん赤くなる。
「…クラウド?」
クラウドは暫く眉をひそめ、口をもぞもぞさせていたが、
「……おは…よう…」
つっかえながらも朝のあいさつをし、顔は赤いまんまで目を開け、ティファを見つめる。
ティファはなんだか感動してしまった。
クラウドは挨拶らしい挨拶をしない。
いつも、「起きたのか?」「ゆっくり休んでくれ。」とかそんな風に声は掛けてくれるのだが。
旅の仲間たちには労りの言葉こそ掛けていたが、少なくとも「おはよう。」などと挨拶はしていなかったような。
それは知らないうちに他人との距離を取ろうとする癖なのか、それとも、ものすごい照れ屋なのか。
(じゃあ、この”おはよう”は特別なのかな?)
聞きたいけど、聞いたらクラウドの顔がますます赤くなりそうで。
クスクスと笑うティファにクラウドは慌ててしまう。
こういった事に疎い自分でも、この朝のこの時間が二人にとって、特別だということくらい分かる。そんな時に自分は何か失態でもしでかしたのだろうか?
もぞもぞと不安げに起き上がるクラウドに、ティファは、
「おはよう、クラウド。」
と、微笑みかける。
その笑顔を見て、こんな普通の朝を迎えられたのが夢のようで。
「…なあ、ティファ。」
「なあに?」
クラウドは照れくさそうに膝を抱え、
「こうやって、朝に挨拶をするのって…なんか…いいな…」
ティファはクラウドに寄り添い、その肩に顎をちょん、と乗せる。
「私も同じこと、考えてたよ。」
クラウドはすぐ目の前にあるティファの鼻の頭をそっとついばんだ。
ティファはそれに応えてクラウドの頬にキスを返す。
お互いを愛おしいと思う気持ちが溢れてきて、その気持ちのまま何度も何度も口付けた。
(こんな朝がずっと続けばいいな…)
どちらともなくそんな事を考えてしまう。
幸せ過ぎて、少しだけ臆病になってしまう二人だった。
おわり。
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