黒のランジェリー。(FF7/R18)

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2016年1月31日 投稿
FF7発売19周年で、何かクラティで書きたかった。R18ではありませんが、それっぽい雰囲気です。ティファもテンパると暴走するタイプかな、と思ってこんなお話になりました。


寝室に入ると、ティファが待っていてくれた。
今日の夜は特に約束していないし、でも、2人のことに関しては内気になってしまうティファが自分からクラウドの部屋を訪れてくれるのは珍しい。
ティファ自身も恥ずかしいのか、クラウドのベッドに腰掛け、頬を赤くして俯いている。なんとなくクラウドも照れてしまって、うれしいのだけど、どう声をかけてよいのかわからず、つい、下を向いてしまう。と、ティファが着ているバスローブの裾から、とんでもないものが顔を出していた。
かわいらしいひざ小僧と、形の良いふくらはぎを、ネットの大きな網タイツで覆われていたのだ。恥じらっているティファの様子と、普段着ているパイル地のバスローブからそれは大いに異彩を放っていて、クラウドはうれしくなってしまうのと、いったい何が起こったのかと、わけが分からずその場に立ちすくんでしまう。
「あ、あのね、クラウド……」
ティファもどうしていいのかわからないようだ。声をかけたものの、言葉が続かない。が、お互いにモジモジしているだけではどうしようもないと、思い切って立ち上がった。まるで若木のようにすらりとした足の、そのすべてが露わになった。クラウドの見間違いではなく、それは間違いなく網タイツで覆われている。しかも、ネットが大きいので、無機質な黒いナイロンの糸が、のびやかな足の自由にさせるものかと縛り付けているように見えて。
足にばかり見とれていたら、ティファがゆっくりとバスローブをはだけた。しっかりとした骨格と、しなやかな筋肉で作られた丸みのあるなだらかな曲線の肩があらわになり、そこには黒いレースの肩ストラップが見えた。そのストラップの源である胸元を見ると、ハーフカップの黒いレースのブラから、こぼれ落ちそうなゆたかな胸とその谷間が見えた。
さすがのクラウドも、ティファがこれほど思い切って自分を誘ってくるからには何かがあったのではないかとわかる。まずは、その理由を聞かなくては、と思うのだが、気がつけばティファを抱きしめていた。
「く、クラウド……」
ティファの鼓動も速い。抱きしめたはいいが、次はどうすればいいのだとクラウドは迷うが、考えがまとまらない。そうだ、理由を聞かなくてはと思うのに、それよりも未だバスローブの中に覆われている、ティファのランジェリー姿が気になって。
「ティファ……!」
「な、なに……?」
「そ、その……」
どうした、何があった?そう聞きたいのに、
「これ…脱がせてもいいか?」
(どうしてそうなる……!!)
クラウドは思わず心の中でそう叫んでしまった。
「でも……」
頭が沸騰したみたいで、心臓がばくばくと音を立てている。そして、心臓のその激しい鼓動で押し出された血液はことごとく下半身に集まっていくようで。ティファは口を開き、何かを言いかけて、また口を噤んでしまう。それを何度か繰り返したと、ようやくポツリと、
「恥ずかしい……な……」
とだけ言った。その言い方がまたかわいらしかった。どぉん、と音を立てて、下半身に血が集まり、ずしりと重くなったのをクラウドは感じた。
「でも、俺に見せるために着てくれたんだろう?」
我ながら、こういう言葉がスラスラと出てくるのに驚きだった。頬にちゅっと音を立ててキスをすると、ティファは恥じらいながらもぞもぞと身体をよじり、バスローブから袖を抜き、脱いだそれを床に落とした。
「違うの……そうなんだけど、その前に……」
何か言いかけているティファの言葉は耳には届かなかった。クラウドは半歩下がってそれを上から下まで眺める。黒いハーフカップのブラは、ブラジャーの部分が花がらのラッセルレースで覆われただけのシンプルなものだ。黒のレースのパンティは黒いサテン地の正面に、ブラと同じレースがあしらわれている。そして、かわいらしくくぼんだへその下にある、ウエストの中央には小さなリボンがついている。
網タイツはガーターベルトで釣られていて、留め金がタイツを釣っている部分が少し引きつっているのがまたたまらないのだ。なんと言うか、クラウドの好み過ぎて、今すぐにでも、ガーターとレースのパンティが作る魅惑的な三角形の奥に手を伸ばしたくなる。が、クラウドは漸くここである符合に気がついた。
何から何まで好み過ぎるチョイス、とりわけ、ネットの大きな網タイツにガーターだ。これはまさか…
「ティファ。」
一気に血の気が引き、声が震えた。さっきからのティファの様子も、いつものように恥ずかしがっていたと思い込んでいたが、そうではない。あれは、クラウドに何かをうったえようとしていたのだ。
「まさか……」
「ごっ!ごめんなさい…!!」
ティファがいきなり謝ってきた。
「昨日、お掃除してたらクラウドのベッドの下に……!」
クラウドは、一気に身体が冷えるような感覚を味わった。最近、ティファが忙しくて、なんとなく寂しさを感じていたら、得意先の工務店の連中に冷やかし半分でもらった本。さっさと捨てるつもりだったが、黒いランジェリーにガーターベルト、ネットの大きな網タイツが、なんといおうか、クラウドの好みにぴったりだったのと、モデルがティファに少し似ていたのだ。それで、捨てるに捨てれず、眠る前になんとなく眺めていたりして、
「ティファ!違うんだ!」
「最近…私が忙しかったから……」
「そうじゃない、あれは……」
「ごめんね、気が付かなくって、それで私……」
申し訳ないと思って、精一杯気を遣った結果が、モデルが着ているものと同じようなランジェリー姿に行き着いたというわけらしい。
「ティファ……」
普通なら私というものがありながら、と、ここは怒るところだろう。なのに、そうやって自分を責めてしまうのがティファらしい。一度は焦り、まごついてしまったクラウドだが、ティファの決意が逆に冷静な気持ちを呼び戻してくれた。クラウドは優しくティファの額にキスをした。
「俺こそ…ごめん。」
そして、足元のバスローブを拾うと、ティファにかけてやる。
「あれ、もらったんだ。モデルがティファに…いや、ティファの方がきれいだ…でも、似てると思って、捨てられなかった。」
ティファは、驚いて、少し放心したようにクラウドを見つめている。
「見つかったら、さすがに気まずいと思って…」
「私に?」
「うん。それに…」
クラウドはティファをベッドに座らせ、瞳を真っ直ぐに見つめる。
「ティファの悪い癖だ。すぐに自分を責める。」
「そう…かな?」
「亭主がこんな本を隠していたら、カミさんは怒るもんじゃないのか?」
クラウドらしくもない、時代がかかった言い回しがおかしくて、ティファが漸く微笑んだ。
「……使ってない?」
「使ってない。」
「本当?」
ティファが念を押す。なんだか斜め前な心配だが、ちゃんとヤキモチを妬いてくれたこともクラウドにはうれしい。
「うん。疑ってるのか?」
「まだ少し。」
どうすれば疑いが晴れるのか、クラウドにはちゃんとわかっていた。ゆっくりと顔を近づけ、お互いの鼻と鼻がぶつからないよう少しだけ傾げ、ティファの唇に己の唇を押し付けた。背中に腕を回し、身体を引き寄せると、ティファも同じようにクラウドの背に手を回した。何度か角度を変えて合わせると、そこがすこしずつ熱をもってくるようで。
自然と口唇が離れ、目と目が合った。どちらともなく笑い合うと、そのままベッドに倒れこんだ。

今回はここまで。