媚薬に苦しむバルフレアと乙女パンネロ。(FF12/R18)

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突然きつく抱きしめられ、パンネロは驚いた。バルフレアの身体は熱でもあるかのように熱く、息も荒い。はーはーと苦しげに肩で息をし、自分の身体をパンネロにぐりぐりと押し付けるようだ。
いつもお前に欲情してる、そんな風に言うくせに、涼しい顔をしてパンネロを鳴かせるバルフレアの表情を変えることはパンネロにはとても難しい。
それが今はどうしたのいうのだろう?ぎゅっと眉を寄せ、時おり息を大きく吐き出す。頬は赤く、潤んだ瞳で自分を見つめるバルフレアにパンネロは泣きたくなるほどうれしくなる。
いったい、何が効果があったのだろう?今日は黒地に白い小花がドットのように見えるカジュアルなワンピースだ。袖は肘のやや下、スカート丈もひざ下だ。でも、それだけだと大人しすぎるので、靴は思い切って素足に赤のフラットシューズにした。髪も下ろしただけ。華美にならないように引き算して工夫したコーディネートだ。胸元のボタンを4つまで開けたのがよかったのだろうか?それとも、赤いエナメルのフラットシューズ?
「ど、どうしたの?バルフレア……?」
こんなにあからさまに自分を欲してくれるのがうれしい。高い背を折るようにして、甘えるように頭を首筋に埋めてくる頭を優しく撫でてやる。ちょっぴり自分がお姉さんになった気分だ。くすぐったい気分になるのは、首筋に当たる吐息のせいだけではない。
バルフレアが苦しげなまま理由を説明し始めた。
「……え?それって、毒…なの?」
ウキウキした気持ちがいっきに冷える。バルフレアが言うには、何やら薬を盛られたらしい。となると、一大事だ。
「急いで手当しないと……」
「毒じゃ、ない……」
パンネロは、そこで漸く自分の腹の辺りにあたる、固くなったバルフレア自身に気がついた。バルフレアの説明によると、突然襲ってきたモンスターを倒すと、性欲を高める薬を霧状にまき散らし、バルフレアはそれを吸ってしまったらしい。
「え、えと……じゃあ、どうやったら、治る……の?」
バルフレアの身が心配でないはずがない。だが、心のどこかがすぅっと冷えるような感じがした。バルフレアが大変なのに、何をガッカリしているのだろうと、パンネロは自分を叱咤する。
「……頼む、お前しか、いない……」
相当苦しいのだろう、こんな風にパンネロに情けない姿を見せ、縋るなんて、普段からは想像もつかない。
「俺を、鎮めてくれ……お前しか……無理だ……」
そんな風に言われてうれしくないはずがない。頼りにされて誇らしい。それは確かなのだが、なぜだか胸がキューっとなる。それは喜びではなく、
「…………やだ………。」
声はもう震えていて、驚いたバルフレアが顔をのぞき込むと、もう涙がほろり、と頬をつたっていた。こみ上げてくる気持ちを抑えようとして、パンネロはしゃくりをあげる。
「わ、私……やだ……そんな、薬のせいで、私を、欲しいって……言って欲しくないの……」
パンネロは人差し指を軽く折り、涙を拭う。
「いつもみたいに、言ってくれなきゃ、やだ……」
「パンネロ……」
バルフレアはパンネロを強く抱きしめた。
「ごめんな……」
「謝ったら、もっと、やだ……」
そんなことを言っておいて、やはり自分はワガママなのだろうかと不安になのだ。謝られると、余計に苦しい。
「泣くな。」
余裕がないのだろう、いつもの饒舌さはない。だが、耳元に吐息とともに囁かれた言葉は、尊大なのに、パンネロの涙にどうしていいのかわからないバルフレアの葛藤も伝わってきて。ごめんね、わがままだね、そう言いかけたパンネロの言葉をバルフレアが遮った。
「いつだって、お前が欲しいさ。」
「え?」
「いつもだ。」
珍しく照れているのだろう、まともに顔を見られないのか、その小さな頭を胸を強く抱く。
「こんな得体のしれない毒なんか吸わなくったってな、一緒にいるときも、いないときも、いつもだ。服なんか全部ひんむいて、ベッドの上にくくりつけてやりたいさ。泣こうがわめこうが、そうしてやりたい。お前の柔らかい身体を一晩中の抱きしめていたい。お前の声を聞いて、触れて、ああ、そうだ。ずっとヤってたいさ。」
最後の方はかなり乱暴な言い方だ。なのに、胸が詰まって息苦しい。でもそれはさっきのように苦しいものではなく、じんわりと温かい気持ちがこみ上げて、それで胸がいっぱいになったからだ。
「本当に、いつも?」
「いつもだ。」
当然だ、ときっぱりと言い切られると、さっきとは別の涙が溢れてきそうだ。そんな風に見せようとしないくせに、こんな時だけそんなことを言うのはズルい、と思うのに、さっきとは真逆に、心が喜びで震えた。
「うん。いいよ。」
少しだけ唇をゆるめ、パンネロを見る瞳は熱情にあふれていて、それでいて罠にかかった獣のようにギラギラとした光を放っていた。すぐに噛み付くように唇を塞がれ、貪られた。自分も一緒にその罠に落ちたのだ。逃げ場もなく、きっと骨まで喰らいつくされるほどに愛されるのだろうと思うと、喜びで身体が熱くなる。
キスをされながらそっと瞳を開いてみると、色香を漂わせたあの不思議な色の瞳で見つめ返された。魔法のようにパンネロの自由を奪い、言葉以上に愛していると伝えてくる。パンネロは自ら求めるようにバルフレアの舌に自らのをからみつかせた。

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