男にはわからない。(DDFF/R18)

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とにかく、やり遂げたのだ。半分意識が飛んでしまった状態のライトニングだったが、その自覚だけははっきりと残っていた。フリオニールを受け入れた所はズキズキと痛み、おそらく出血もしているのだろう。だが、ぐったりとしたライトニングをフリオニールが湯に浸してくれた。膝に乗せられ、優しく抱きしめてくれる。浸かっている湯泉は治癒作用があるものらしく、痛みはゆっくりではあるが和らいでいく。最大の難関を乗り越え、ライトニングは満ち足りた思いでうっとりとフリオニールの胸に頬を寄せた。フリオニールがそれに応えるよう、つむじの辺りに唇を寄せた。
「…大丈夫か…?」
ライトニングはゆっくりと顔を上げ、フリオニールを見上げる。
「すごく…辛そうだったから…」
ライトニングはゆっくりと頭を振った。
「お前と一つになれた…今は…そのことがうれしい。」
よっぽどうれしかったのだろう、ライトニングはいつものようにはにかみもせず、柔らかく微笑み、穏やかに気持ちを告げた。しかし、肝心のフリオニールの方はと言うと、喜びと困惑が混ぜあわされたような顔をしている。ライトニングはフリオニールが自分をいたわり、心配しているせいなのだろうと思い、
「心配するな。…この湯は傷を癒やし、体力を回復させることも出来るようだ…だから、大丈夫だ。」
そう言って聞かせ、手を伸ばしてフリオニールの頬を撫でてやる。が、フリオニールは相変わらず笑っているような、戸惑っているような複雑な表情のままだ。目線はライトニングの顔に向いているのに、言葉が届いてないようだ。さすがにライトニングもフリオニールの様子がおかしいと気が付いた。
(やり遂げたと思っているのは…私だけか…?)
フリオニールを満足させることが出来なかったのだろうか?痛みを堪えるのに必死でよく覚えてはいないが、何か他に不手際でもあったのだろうか?途端に不安で胸が破裂しそうになって、ライトニングは身体を起こし、フリオニールの顔を正面から見入る。
「フリオニール…?」
ぼんやりとしていたフリオニールだが、心配そうに自分の名を呼ぶライトニングに漸く我に返ったようで、
「あ…、すまない。ライト…」
「どうした?私に何か…その、私は、また…上手く出来なかったのか?お前を…満足させることは出来なかったのか?」
不安で、つい矢継ぎ早に質問を浴びせてしまう。
「ご…ごめん!ライト…そうじゃない!そんなことはない!」
必死で否定するフリオニールだが、そんな風に言われると、余計に不安になってしまう。
「じゃあ…お前は…どうだったのだ…?…私は……その……やっとお前と…と思っていたのに…」
「そ…、そんなことはない!あるわけない!」
不安な思いで胸がいっぱいになり、顔を曇らせてしまったライトニングにフリオニールはオロオロと弁解をする。
「俺、は!すごく!良かったんだ!」
まるで小さな子供のように塞ぎこみ、俯いていたライトニングがおずおずと顔を上げた。
「すごく!柔らかくて暖かくて…それが包み込むようで…っ!すごくっ!本当に!直に触れているって感じで!ぴったり絡みついてくるようで!」
フリオニールがあからさまな表現を力いっぱいに述べてくるのに、ライトニングは安堵よりも先にいたたまれなくなってしまう。目を見開き力説するのに少々引きつつも、どうやらフリオニールが満足したことだけは理解できた。
「…じゃあ、どうして…」
そう聞き返すと、フリオニールは途端に言葉を詰まらせ、顔を赤らめてライトニングから目を反らせてしまった。
「フリオニール!」
煮え切らない態度に不安が苛立ちに転位して、ライトニングの声が大きくなる。言葉を平手代わりにぶつけられ、フリオニールの背が思わずぴん、と伸びた。
「違うんだ!すごく!良かったけど!ライトが辛そうだったし、俺も必死で…それで…っ!」
「…それで?」
「気がつけば!終わっていて…それで…!俺の方こそちゃんと出来なかったのじゃないかって…!」
ライトニングはフッと笑みを浮かべた。
(なんだ、同じようなことを考えていたのか…)
フリオニールの告白に心がすっと軽くなり、むしろうれしくなってライトニングは腕を伸ばし、いつも自分の心に暖めてくれる恋人を引き寄せようとした、ところで、その恋人がとんでもない事を言い出した。
「だから、もう一回したいなって。」
フリオニールの言葉が耳から外耳中耳内耳を通りぬけ小さな骨を伝い、神経を伝って大脳に届くまでの時間が、ライトニングはものすごく長く感じられ、さらにその言葉の意味を理解するまでも時間がかかったように思えた。もっともそれはライトニングの感覚であって、目の前のフリオニールにはどうだったのかまではわからないが。
「……………………は?」
思わず聞き返した時にはフリオニールはもううっとりと顔を寄せ、今にもライトニングの口唇を塞ごうとしていた。ライトニングは慌ててフルフルと頭を振って、フリオニールの肩を押さえ、それを押しとどめた。確かに回復を助けてくれる湯泉のお陰で痛みも疲労も徐々に治癒はされている。だが、これは天然の回復薬だ。ポーションのように精製されたものではない。すっかり元通り、というわけではないのだ。やっと本当に男女の仲になれた、その余韻に浸る暇もないし。なによりも、
(あれをもう一度最初からだと…!?)
言うなれば敵の親玉カオスと対戦し、死闘の果てに倒したものの、その後同じ敵ともう一戦しろと言われるのと同じくらいキツい。体力とか、痛みとかよりも、精神的にキツい。
「だめか?」
「だから、ダメだとか…そういう問題じゃ…」
いつも疲れていないか、ちゃんと食べているのか、などと気を遣ってくれるフリオニールがどうしてこうも無茶を言ってくるのだ?ライトニングはひたすら慌てて正常な判断ができない。説き伏せようにも理由を順序立てて述べることもできない。だが、あの力説ぶりから鑑みるに、フリオニールは満足をしていて、
(つまりは、もっとしたい…と思っているのか…)
初めてで不安だったのが満足してくれたとわかると安心したし、自分が求められると分かればうれしくないはずがない。それに、いつもライトニングのことを一番に考えて行動するフリオニールがめったに言わない、いや初めてかもしれないワガママだ。
(今まで…私のせいで…なかなかうまく出来なかった…し…)
フリオニールが好きだ。なんでもしてやりたい。試行錯誤を繰り返し、時間をかけてやっと本当の恋人になれたのだ。ライトニングはそう自分に言い聞かせた。ライトニングの返事を今か今かとそわそわしながら待っているフリオニールを見ても、もう笑みしか浮かばない。
「一回だけ、な。」
「うん、あと一回だけ。」
フリオニールはライトニングの細い肩に顔を埋め、
「ライト、大好きだ。」
「もう一回させてもらえるからか?」
「あと一回だけなのか?」
フリオニールがふざけてちゅ、と音を立てて首筋を吸い上げた。ライトニングは喉を鳴らして笑い、
「お前がしたいなら、何度でも。お前が…」
ライトニングは真っ直ぐにフリオニールの瞳を、ありったけの想いをこめて見つめた。
「私を欲しい、と思う限りは、な。」
フリオニールはその言葉にうれしそうに目を細めた。そのままゆっくりと顔が近づいてきて、口唇が塞がれた。意外なことに、それはごく軽い、触れるだけのキスだった。腰に回された腕がライトニングを引き寄せ、ぱしゃん、と湯が少しだけ跳ねた。そこからはフリオニールはその熱情のまま唇を舐め、啄み、飽きることなくライトニングの柔らかな口唇を味わう。
「はぁ……あ……っ」
肩が震え、すぐに甘い吐息が漏れた。舌を絡められ、息苦しさにうっすらと目を開けると、フリオニールの端正な顔が無心にライトニングの口唇を貪っている真剣な表情が飛び込んできて、胸の奥の辺りがきゅっと甘く疼いた。様々な武器を使うため皮膚が硬くなったフリオニールの手のひらがライトニングの胸を揉み、同時に中指と人差し指で、つん、と尖った乳首を挟み、擦り上げる。
「……んっ……、ふ…っ…」
ライトニングが感じ入る声をもっと聞きたいと口唇は解放され、今度は首筋を舌が這う。
「あ……っ!ぁっ、…ん…」
もう一度したいと言われた時は絶対に無理だと思っていたのに、ライトニングの胸の膨らみはもう淫らに疼き、小さな紅い突起を指が擦り上げる度に肩がびくびくと跳ねる。フリオニールはライトニングの腰を抱いていた方の手を背後から下腹部に移動させ、その手はするすると下へ下へと降りてくる。少し性急な気もしたが、フルコースに付き合うほどの時間も体力も残っていないのでライトニングはそれを拒まずに受け入れた。
フリオニールの指先は湯の中でまるで水草の様にゆらゆらと漂っている柔らかい毛に届き、しばらくそれを指に巻いたりして感触を楽しんだ。その後で、長い指で柔らかい肉がぴったりと重なりあっている間に指を挿し入れ、左右にゆっくりと押し開いた。
「……っ!……」
湯水がライトニングの胎内に入り込んできた。それは破瓜の傷をピリ、としみさせ、ライトニングは小さく悲鳴を上げた。が、湯水はじわじわと胎内に行き渡るにつれて、傷の痛みがだんだんと引いていくのを感じる。
「……はぁ、……っ……」
ライトニングが大きく息を漏らし、身体から強張りが解けていくのを感じると、フリオニールはくちゅり、と音を立てて指を挿し入れた。そして、ライトニングの膣内をもっと湯が行き渡るようにと優しくかき回す。ライトニングが湯泉に治癒の力があると言ったのを覚えていたのか、湯泉を奥まで届かせようと意図的な愛撫のようだ。
「は、く……っ……」
湯泉に浸かっているのは腰から下で、身体はそんなに火照ってはいないはずだ。なのに、そこをくちゅくちゅとかき混ぜられるとどんどん体温が上がっていって。快感よりも、優しく愛情に満ちた動きは恐怖心を取り除き、ライトニングは全身をフリオニールに預け、うっとりと声を漏らす。
「あ、あぁ……フリオニール!」
フリオニールも指先にライトニングの熱くうねる内壁を感じ、陶然となって囁きかける。
「ライト…すごく…柔らかくて、熱くて…」
さっきの挿入した時の感覚を思い出し、無意識に指を引き抜き、またライトニングの蜜壺にぐっと差し込む。
「あぁ、ああ、あ!」
指が差し入れられる度に胎内の奥まで湯が入り込み、引き抜かれると湯と愛液が混ざった物が指と共に排出される。湯のお陰で痛みはない。痛みがないどころか無意識に内壁から強張りがゆるみ、自由にうねうねと蠢き、フリオニールの指に絡みつく。
「ライト…傷まないか…?」
優しい言葉に胸が詰まる。こめかみの辺りがツンとなって、ライトニングの澄んだ瞳が瞬く間に涙で覆われた。やはり辛いのかと慌てて手を引こうとするフリオニールの手に自分の手をそっと重ねた。身じろいだせいで瞳に溜まっていた涙は、すっと通った鼻筋の横を滴り落ちた。
「違う…そうじゃなくて…」
どうしてだか、涙が後から後から溢れてきた。
「フリオニール、お前が…お前を失いたくない…お前は私の…命よりも…私には……今でも、お前にしがみついて、大声で泣き出したいくらい…お前が好きだ…」
声を詰まらせながら想いを伝えるライトニングを、フリオニールはその細い身体が折れんばかりにきつく抱きしめた。
「ライト…俺だって……」
あとは言葉にならなかった。相手をを抱きしめ、抱きしめられることがこの恋人たちの全てだった。長い戦いの輪廻の中で、それは本当に瞬きする程の短い時間かもしれない。が、過酷な戦いの運命の中でも、誰よりも幸せだと言える、言い切れるこの瞬間。フリオニールは口唇をライトニングの目元に落とし、涙をそっと舌先で掬い取った。目尻から頬の涙の跡に口唇を押し付け、その涙をすべて吸い上げた。そうすることで、ライトニングの悲しみも自分の身に全て吸い付くすことができれば良いのに、と心から思う。
口唇が下顎に届いたところで、ライトニングの方からキスを仕掛けてきた。フリオニールはそれを受け止め、すぐにお互いの舌が絡みあった。まるでどちらが多く自分の気持ちを伝えられるかと競い合うようにそれは激しくて、2人の背筋にゾクゾクとした痺れが駆け上がった。
フリオニールの逞しい腕がライトニングの背中をしっかりと支え、ライトニングは両腕をフリオニールの首に巻きつけ、右手を柔らかい銀色の髪の中にさし入れ、撫でた。
「ライト、…もう――」
長い長い口づけのあと、フリオニールは耳たぶに口唇を押し付け、苦しげにうったえる。2人に挟まれた熱塊は、先程の射精などまるでなかったかのように硬く張り詰めていて。
フリオニールは天然の浴槽の縁に腰掛けた。とても暑くて湯にはこれ以上浸かってはいられないからだ。ライトニングは一度立ち上がると、上体を屈め、フリオニールの両肩の上に手を置いた。フリオニールはライトニングの足を軽く持ち上げ、自分を跨ぐような体勢にしてやる。一度体験済みとはいえ、それでも先程の激痛を思い出した。緊張をほぐそうと大きく深呼吸をし、じっとこちらを見ているフリオニールに微笑んだ。それから、まるで腹につきそうな勢いで勃ち上がったフリオニール自身に手を添え、その上にゆっくりと腰を落としていった。

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