ローゼンバーグハンバーグ(FF12)

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タイトルはこの話を発表するきっかけになったキーワードです。意味はありません。バッシュとガブラスが16歳のときの蒼い性を書こうとして挫折しました。本当に触りだけです。


毎年、夏の間は湿地が美しい山岳地帯にあるこじんまりとした山小屋で過ごしていた。
だが16歳の夏、自分のことは自分でできるようになるため、と両親から2人だけで過ごすように言われた。
小屋にやって来て1週間が過ぎようとした日の夜、2人は両親の寝室のダブルベッドに潜り込んでいた。
「だからさ、まずは食料だ。」
「近くの村まで…何時間だろう?」
「しかたないだろ?ノアが食べ過ぎるからだ。」
「兄さんこそ。」
お互いに心あたりがあり過ぎて同時に口ごもる。
頭では理解していたのだ。滞在は1ヶ月、貯蔵庫に用意されていた食料は10日も保たない。ギルはもらっているので買いにいけばよい話なのだが、いちばん近い村まで歩いて2時間はかかるのだ。
「できるだけ節約しよう。」
そう決めたのだが、大人の目がなくなると、騎士の家に育ったたとはいえ、16歳はまだまだ子供だった。毎日湖で泳ぎ、木陰で昼寝をし、剣の稽古をし、夜は眠りに落ちるまで冒険物語を読んだり、いつか戦場に立つ日のことを語り合ったり、毎日があっという間に過ぎたのだ。しかも食べ盛りだ。気がつけば貯蔵庫はほとんど空になっていた。
食料が尽きかけたことに冷静になると、理由は部屋は散らかり放題でシーツは一度も洗っていない。双子が両親のベッドに潜り込んだのはそういう理由からだった。バッシュが「まずは食料」と言ったのは、食料以外の問題も多発しており、それについて話し合っていたからだ。
「…腹が減ったな〜…」
夕食はほんの少しの野菜が入ったスープと、2人があまり好きではない甘い菓子を食べただけなのだ。
「村に着いたら居酒屋で何か食べよう。」
その前に2時間歩かなくてはならないけど、そう言おうとしてバッシュは隣で横たわるノアを見た。途端に脱力してしまう。ほんの何分か遅れて生まれたというだけで、自分と同い年なのに弟になったノアは、もう寝息を立てていた。
「大事な話し合いだっていうのに…」
不満に思いつつも起こす気にはなれなかった。ノアの寝息は深く長いもので、気持ちく眠っているのが見てとれたからだ。
バッシュは見るともなしに弟の寝顔を見つめていた。同じベッドで眠るのは小さな子供の頃以来で、バッシュは久しぶりにノアの寝顔を間近で見るのは本当に久しぶりだった。
自分と同じ顔。でもやはりどこか違う。
どこが違うのだろう?バッシュはゆっくりと指先でノアの輪郭をたどり始めた。自分よりも顔付きに柔らかさが残っているような気がする。とりわけ、頬は滑らかで弾力があり、指先に心地よい。なんどか頬に指先を滑らせたあとで今度は鼻筋から眉をたどり、ふっくらとした耳たぶをそっと指で挟んで見た。
「………ん…」
バッシュは驚いて手を引いた。
(……起きるかな?)
面白くなって、耳たぶ全体をさわさわと撫でてみる。と、くすぐったいのかノアは眉を寄せ肩をすくめた。
(どこまですれば起きるだろう?)
最初はそんな好奇心からだった。
つづきません…