ヴェイン✕ヴェーネス(擬人化)(2)(FF12/R18)

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  • ヴェイン✕ヴェーネスの続きです。
  • ねつ造激しく注意
  • FF12ネタバレ激しく注意

めいさんが描かれたヴェインとヴェネ子(擬人化して女性化したヴェーネス)が素敵だったので、そこに至るシーンをねつ造して書いてみました。


唇を合わせてみたはいいが、ヴェーネスは目をしっかりと開いたまま自分の顔を凝視ししている。これには参ってしまってい、ヴェインは思わず顔を離し、眉をひそめてヴェーネスを見下ろした。
「どうした?」
どうしたもこうしたもない。キスの間に目を開き、眉ひとつ動かさずに見つめられては、さしものヴェインもどうしていいのが困ってしまう。まさかキスの時は目を閉じる、ということから教えなくてはならないのだろうか。
「ヴェーネス。」
「なんだ?」
「くちづけのときは、目を閉じるものだ。」
「それはなぜだ?」
なぜと言われても…
毅然と断を下し、軍事政治の熟手と呼ばれるこの自分がなぜキスの時に目を閉じるのかまで説明せねばならないのか。
面白がっていたヴェインだが、いちどきになにもかも面倒に思えてきた。なにも知らない初めての女の方がまだマシだと思う。恥じらうなり、嫌がるなりしてくれればまだリードのしようがあるのだが。
ヴェーネスは人間を尊敬し、憧れの気持ちすら持っているようだが、人間の情操を持ち合わせない超越者の一人だ。
(同衾など、無理な話だ……)
ヴェインは身体を起こし、ヴェーネスの隣に乱暴に仰向けになった。ヴェーネスはしばらくそのまま大人しく横たわっていたが、何もしてこないヴェインを訝しんだのか、ゆっくりと身体を起こし、隣で目を閉じているヴェインを見下ろした。
「まだくちづけしかしていない。」
「君は私を慰めにきたと言ったが…くちづけの時になぜ目を閉じるのかから教えなくてはならないようでは、どちらが慰めるのかわからないのではないか?」
ヴェーネスは黙ったままだ。気持ちは確かにうれしいのだが、できればそっとしておいて欲しかった。誰にも、それがたとえ親友だとしても、そこに触れて欲しくなかったのだ。ベッドからさっさと追い出さなかったのは失敗だったと思う。お陰で、絶対的な理性で封じ込めていた、父を亡くし、いや、死に追いやったという自分の悲しみに向き合わなくてはならなくてはなったではないか。
「君のことだ。人間の男女の交接については学習済みのはずだ。だったら、私を慰めればいい。どうすればいいか、知っているはずだ。」
ヴェーネスの顔を見るのも億劫になり、ヴェインは目を閉じたまま続ける。ヴェーネスが体を移動させたのが、気配と、ベッドが沈んだことでわかった。だが、そのままヴェーネスはほんの少しも動かなくなった。さすがに焦れて目を開いたヴェインが見たのは泣いているヴェーネスの顔だった。
さっきの無表情さとはうって変わって眉をハの字にし、はらはらと涙を流している。涙のしずくが細いあごを伝い、滑り落ちている。声を上げることもなく、涙を拭くこともなく、ただただ涙を流している。思ってもいなかったことにヴェインは戸惑った。
試しに手を伸ばし、ヴェーネスの目元の涙をぬぐい、指を濡らしたそれを舌先で舐めてみると、ほんの少しの塩気を帯びた液体で、確かにそれは人間のもので。
(本当に……泣いているのか……?)
だとしたらその理由は?まさか自分の言葉で泣いているのか?
「人間の男は……閨では女に優しくするのではないのか?」
涙を流しているだけでなく、声のトーンも沈んだものになっている。
「私は、君に優しくされたい。」
何をふざけたことを、と思うのだが、泣いている顔を見ると、何故か言葉に詰まった。
「さっきは身体が浮かんだあと、落下したような不思議な感覚だった。ゲルン王と決別し、人間の世界に来て、君たちと出会い目的を1つにした時のような高揚感だった。」
たったあれだけで?と、ヴェインは素直に驚く。
「……今は、どうなのだ?」
「だが今は……息が詰まる。苦しい。心拍数は上がっている。だが、さっきとは違う。理由を考えてみた。人間は悲しくても心拍数が上がる。だから、高揚感と相反する感情、悲しいと判断した。」
「……なるほど。」
「なぜ悲しいかも考えた。」
「私が、優しくないからか。」
ヴェーネスは黙ってしまう。思考にふけっているようだ。自分に起こった身体の変化を自分が知っている人間の知識と紐付けしようとしているようだ。
その表情を見ていて、相応しい言葉かはわからないが、ヴェインの脳裏に“無垢”という言葉が浮かんだ。身体を起こし、正面からヴェーネスを抱きしめた。
「これでどうだ…?」
「……少し待ってくれ……」
ヴェーネスは目を閉じる。自分の身体の反応をトレースしているようだ。やがてぱっちりと目を開いた。
「心拍数が下がった。」
「では、君の分析は正しいようだ。私が君を悲しませた。」
「ヴェイン。」
「なんだ?」
「目を閉じなかったのは、君の顔を見ていたいと思ったからだ。」
「そうか。すまなかった。」
ヴェインはヴェーネスの涙を指で掬う。
「だから、もう泣かないでくれ。」
「わかった。だが、涙が止まらない。」
「困ったな。」
「さっきから考えていた。」
「涙の、か?」
ヴェーネスは頷く。
「君に抱きしめられてうれしい。くちづけをしても顔を見ていたい。冷たくされると悲しい。今は涙が止まらない。ヴェイン、教えてくれ。これは恋なのか?」
「それを恋と決めるのは私ではない。」
ヴェインはヴェーネスの頬の涙のあとにキスをした。ヴェーネスはヴェインを見つめ返した。いつの間にか涙は止まっている。
「だが、優しくしよう、ヴェーネス。」
そう言うと、ヴェーネスは目を閉じた。どうやら1つ学習したようだ。ヴェインは約束通り、優しくヴェーネスの唇にキスをした。
たぶん続きます。