FF7 AC後 (FF7)

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早く切り上げたいけど、でも、久しぶりだから念入りにしなきゃ…
ジレンマの結果は「出来るだけ急いで念入りに」で、いつも通りの時間になってしまった。
髪を乾かすのがもどかしい。
こんな時は長い髪が少しうっとおしくなる。
今日は久しぶりにクラウドが早く帰って来たのだ。
それでも、時間はとっくに深夜を回っていたのだが。
軽めの夕食を済ませ席を立つと、クラウドは明日の予定を手短かに伝えた。
「だから、朝は少しのんびり出来るんだ。」
「そうなの?」
少しはしゃいだティファに、クラウドは顔を少し赤くして、消え入りそうな声で呟いた。
「…あぁ。だから今日…」
「うん?」
「待ってていいか。」
「…え?…あ、うん…」
するとクラウドはティファの顔も見ずにさっさとシャワールームに消えてしまった。
取り残されたティファは短か過ぎる言葉と、彼の態度を見て、漸く言わんとする事を察する。
「…もう!」
誘っているのなら、もう少し言い様があるのではないかといつも思う。
(あれじゃあ、明日の朝、早起きしなくていいから誘ってるみたいね。)
でも、あの言い方が彼には精一杯なのだ。
食事の間、少し落ち着きがなかった理由も今なら分かる。
(こういう時のクラウドって、本当に…)
ティファはくすりと笑うと、急いで後片付けを始めた。
洗い物をしていると、シャワールームの扉が開いて、クラウドが2階の自室に引き揚げる音が聞こえた。
(やだ…)
なんだか、急に胸がドキドキしてきた。
クラウドが部屋で自分を待ってるんだと思うと、うれしさと恥ずかしさで顔が赤くなる。
ティファは水仕事で冷えた手を火照った頬に当てた。
(クラウドのこと、言えないか…)
残りの片付け物を終えると、着替えとタオルを持ってシャワールームに入る。
そうすると、ますます「今からします」感がこみ上げて来て、冷静でいられない自分がいた。
漸く髪を乾かし終えた所で、秘蔵のコロンを足下にシュッと一吹きだけスプレーする。
さっぱりした柑橘系の匂いがかすかに立ちこめる。
普段は口紅一本つけないのだが、買い物に行った時にマリンが執拗にすすめてくれた物だ。
「クラウドもこんなさっぱりした香りなら好きだと思うな。」
の、一言にさんざん悩んだ挙げ句、一番小さなアトマイザー入りの物を買ってしまったのだ。
(これ、使ってるの、クラウドと二人きりの時なんだけど、彼は気が付いているのかしら?)
暫くコロンのアトマイザーを眺めていたティファだが、我ながら不毛な問いかけだと気付き、それを戸棚にしまう。
明かりを消す前にもう一度鏡に映る自分をチェックしてから彼の待つ部屋へと上って行った。
おわり。