俺だけの。(バルフレア×パンネロ)

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バルフレアパンネロの死にネタです。お嫌いな方はご注意を!しりおさまが描かれた「ライフストリームに還るパンネロ」が美しすぎて書きました。短いお話です。
※2016/1/14 少し加筆しました。


まだ生きてるみたいじゃないか、と思う。
さくらんぼのような愛らしい唇はその色を失っていない。小さく動いて「バルフレア。」と甘えた声で呼びかけそうだ。
ここに来てパンネロをライフストリームに還すまで、自分は何日間部屋で冷たくなったパンネロを抱いていたのだろう。
髪をとかし、乾いてしまった唇を口移しで水をふくませてやった。冷たい頬に頬ずりをし、乳香を首筋に塗りこんだ。そんなことをしたって、いつも目を細めて微笑んでいたあの笑顔が戻ることなどないのに。
ここに来たのは仲間に説き伏せられたからだ。説き伏せられて、納得したわけではない。だた、星に還って命が巡れば、また会えるかもしれないという相棒の言葉にすがっただけだ。
俺の命も、魂もお前のもんだ、バルフレアは心の中でそう語りかける。俺を生かし、俺であらしめた物をお前にやる。守るべきお前が、愛すべきお前が居ないのなら、せめてお前が寂しくさせないように一緒に死後の世界に行き、お前を守らせてほしい。それが最後のわがままだ。
「だから、何も怖がらなくてもいい。」
この世界に残された俺は心が死んだ人形だ、声に出さずに呟けば、幼い恋人は「何を言ってるの?」と笑いかけてくれそうだ。だが、その瞳が開き、唇が自分の名前を呼ぶときは、永久にやってこないのだ。
「愛しているよ、可愛いパンネロ。」
気管がぎゅっとしめつけられ、息がまともに出来ない。それなのに、どうしてだか涙は出なかった。
「俺だけの。」
その言葉だけを絞り出し、バルフレアはゆっくりと手を離したのだった。